変わらない価値観が世界を変える

少し前に、あるミュージシャンが書いたブログを読んだ。我々若者が持つ新しい価値観で世の中を変えていこう、という趣旨の内容で、例として上司より効率的に仕事をして早く帰ることなどが挙げられたりしていた。書いてあることは間違っていないと思ったし、正に僕自身が日々の具体的な行動として実践していることだったりもしたのが、読み終わった後に何となくスッキリしなかった。何というか“納得”はしたものの、“感動”はしなかったのだ。その理由を考えた時に、きっと「価値観」という言葉に対する認識のズレなのだろうと思った。僕にとっての「価値観」は、もっと狭い意味での、日々の生活の中ですぐに役に立つ訳ではないけれど、確実に自分の人生の方向性を決定付ける大きな何か。僕が「価値観」をテーマにした時に対話したいのは、そういうことなのだろうと思った。

僕の住んでいる場所からは日本一高い某タワーが見える。そのタワーはここ最近、特別なライティングとして青く点灯されている。そのライトアップはとても綺麗なのだが、ライトアップとともにタワー上層部にある展望台の部分に流れている次のメッセージを見つけた時、色々と考えさせられてしまった。

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僕はこのメッセージを見て、“ALL”と一括りにすることの気持ち悪さ、“WIN”という言葉に対する違和感を覚えた。勝ち負けの話なのだろうか?などと考え込んでしまった。こうした感覚や思考は時に生き辛さをもたらすが、それでもこのマインドの根底にあるものが自分にとっては重要であり、大事にしなければならないものだと感じる。これこそが自分にとっての「価値観」であり、それは「信念」や「美学」と言い換えられるかもしれない。そして、その価値観に間違いなく影響を与えているのが、僕が尊敬しているミュージシャンである大森靖子さんだ。

僕はこの自粛期間中にTwitterで「#30DaySongChallenge」というハッシュタグを付けたツイートを30日間続けた。誰が考案した企画なのかは知らないのだが、内容としては以下の画像のとおりDay 1からDay 30まで30日分の“お題”が書かれており、その“お題”に合った曲を考えて毎日ツイートするというものだ。

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僕はTwitterでこのハッシュタグを見つけた時に、大森さんの曲縛りでこれをやってみようと思い立った。さらにいくつか自分の中でのルールを設けたのだが、そのうちの一つが原則としてYouTubeに公式で動画がアップされている曲に限定するというものだった。これはハッシュタグを辿って見てくれた人をYouTubeに誘導しようというオタ活として考えたことでもあるが、とにかくそれから約1ヶ月の間、ツイートする曲を選びがてらYouTubeに上がっている大森さんの動画をほぼ全て見た。日本全国が外出自粛の状況でYouTubeを見る機会が増えた人も多かったと思うが、それでもこの期間に自分が一番数多くの大森さんの動画を見たと自信を持って言えるほど、何かに取り憑かれたように過去の動画から最新の動画まで漁って見る日々を過ごした。ここまで短期間に、かつ大量の動画を見ることは、この外出自粛が無かったら交通事故にあって入院生活でもしない限り、あり得なかったのではないだろうかと思う。

そうして大森さんの動画を見続けるうちに、「大森さんには昔も今も変わらず通底する何かがある」と感じるようになった。それは7年前の映像であろうが数ヶ月前の映像であろうが、MVであろうがライブ映像であろうが、弾語りであろうがバンド編成であろうが関係なく、歌う大森さんの眼差しの奥に感じる、体の中心を真っ直ぐに貫く一本の太い芯のようなものだ。

今回動画を見た中で特に印象的だったのは、2017年9月の夏の魔物のライブ映像だった。

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このライブは僕も現地で見ていたのだが、前日に同じ場所で開催されたBAYCAMPでの騒動があったばかりだったのと、この夏の魔物で大森さんはヘッドライナーでの出演だったこともあり、ライブが始まる前からステージであるプロレスリングを囲む観客の期待や好奇心、心配、不安などが綯い交ぜになったような、異様な熱気に包まれていたのを覚えている。このライブ映像にはその現場の張り詰めた空気や、大森さんがいつも以上に感情を爆発させたライブを展開する様子が生々しく収められている。弾語りの“PINK”の途中では、大森さん自身の現状に対する苛立ちをぶちまけた上で、「それでも私はこのフェスに来てしまうようなあなたたちの生活を、呪いを、私の生活と呪いを、大切に、大切に、一つも余すことなく歌いたい」「歌うことが止められない」「売れなくてもいいから私は私の音楽をやりたい」といった赤裸々な感情を、時に涙で声を詰まらせながら吐露している。僕は部屋で一人そのシーンを見ながら泣いてしまった。この映像はライブの翌日すぐにYouTubeにアップされたのだが、当時の僕は大森さんのこの痛々しいほど剥き出しの姿を世に出して果たして良かったのだろうかと少し複雑な気持ちだった記憶がある。それが3年経って改めて見ると、これは大森さんの紛れもない本質を捉えた映像だったのだと、ようやく大森さん達がこれを公開した意図や想いを理解できたような気がした。

そうした様々な気付きを得ながら毎日続けていた「#30DaySongChallenge」も終わりに近づいた頃、大森さんがコラムを連載している月刊エンタメが届いた。

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最新号のコラムでは今現在の大森さんが考えていることが率直に綴られていて、大森さんが今Twitterで毎日アップしている“おやすみ弾語り”は“淡々と日常をつくること”を表現したいと考えてやっていることなど、その真剣さをひしひしと感じて身の引き締まる思いがする文章だった。特に“ハンドメイドホーム”をこの状況では絶対に歌わないと決めているという部分を読んだ時には、僕自身が知らず知らずのうちに世の中の生温さに慣れてきてしまっていたことにはっと気付かされるとともに、大森さんの軸にある価値観はYouTubeで見た7年前の小さなライブハウスで歌っている時から、3年前の夏の魔物でヘッドライナーとしてリングに立った時から、今この時に至るまで、変わらず美しいままなのだと思った。

コロナ後の世界を展望する時に、僕が普段から見ていて醒めた目を持っていると思う人ほど、本質的なことは何も変わらないと考えているようだ。それでも僕は、大森さんの今も昔も変わらない価値観が、これからの世界を変える可能性を秘めているのではないかと期待している。その理由の一つはZOCの存在だ。

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ZOCのメンバーは一見バラバラな個性が集まっているように見えて、各メンバーなりにしっかりと大森靖子イズムを受け継いでいると感じる。つまり、これまで大森さん一人では手が届かなかった所まで、各メンバーがそれぞれの形で大森さんの価値観を伝播していく伝道師の役目を果たしてくれるのではないかと思っている。そして大森さん自身も、未だに時たま危なっかしいところはあるが、以前よりはうまく立ち回れるようになっているので、そういった意味でも機は熟しつつあるのではないだろうか。

かくいう僕が4年前にラジオで“TOKYO BLACK HOLE”を聴いて衝撃を受け、「この人は本気で何かを成そうとしている」と感じたあの日以来ずっと大森さんを追いかけ続けているのは、その本質、価値観が何なのかを知りたいからなのだと思う。それは僕自身の価値観を、自分が美しいと思う人の価値観によってアップデートしていきたいと思っているからでもある。そしてこのコロナ禍においても、また大森さんは淡々と日常をつくることがいかに尊いかを教えてくれた。

さらに今、慌てて新しい価値観を模索し始めて不安定に揺れ動いている世界も、大森さんの変わらない価値観によって良い方向に導いていけるのではないかと思っている。3年前も今も、そしてきっと僕が大森さんのことを知るずっと前からも、変わらずに涙を流しながら歌う強さと優しさを、これからの世界は必要としているはずだから。

 大森さんは“劇的JOY! ビフォーアフター”でこう言っている。「私は変わらず世界を変える」と。

2019年の僕を構成する10人

様々な音楽サイトや個人が2019年のベスト〇〇を続々と発表している中、僕にとって今年がどんな年だったかを振り返ると、“人”に惹かれて音楽を聴き、その“人”に会うために現場へ足を運んできた一年だったように思う。サブスクが音楽の聴取方法として主流になりつつあり、誰でも新旧問わず膨大な数の楽曲へ手軽にアクセスできるようになった今だからこそ、僕自身はより“人”としての体温や生き様を感じる音楽を求めるようになっていると感じる。そこで僕なりの2019年の振り返りとして、10枚のアルバムや10個の楽曲ではなく10人の“人”を取り上げてみたいと思う。

 

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1. KID FRESINO

昨年11月にリリースされたアルバム「ai qing」が各所の2018年のベストアルバムに選出されていたのがきっかけで知ったラッパー・トラックメイカー・DJ。このアルバムは僕も今年繰り返し聴いたお気に入りの一枚だ。

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初ライブを観たのは今年のフジロック1日目の深夜のレッドマーキーで、飄々とステージを右往左往しながら高速でラップを繰り出す立ち居振る舞いと時々見せる屈託のない笑顔が印象的だった。この時のライブはバンドセットかつ半分近くの曲でゲストラッパーが登場するという気合いの入ったセットリストで、アーティストにとってもやはりフジロックは特別な舞台なのだと思った。

その後も10月のボロフェスタ、11月のLIQUIDROOMワンマン、12月のSWEET LOVE SHOWERと、今年終盤に立て続けにライブを観る機会があり、特にワンマンはKID FRESINOの本領を遺憾なく発揮していたライブだった。中でもドラムの石若駿やトランペットの佐瀬悠輔が演奏に加わって披露された“RUN feat. KID FRESINO”は、音源の疾走感や緊張感が生み出す濃縮された高揚感をそのまま再現してみせた素晴らしいパフォーマンスだった。

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そのワンマンライブのアンコールではカネコアヤノが登場してコラボ曲を初披露したり、最近では三菱地所のCMに起用されたりとコラボや活動の幅を広げており、今後も楽しみだ。

 

2.荘子it(Dos Monos)

今年最も聴いたアルバムの一つが3人組ヒップホップユニットDos Monosが3月にリリースしたデビューアルバム「Dos City」だ。その「Dos City」のほとんどの楽曲を手掛けているのがトラックメイカー・MCの荘子it で、彫りの深い端正な顔立ちに長身という目を引くビジュアルや一度聴いたら忘れられない魅力的な声にはスター性を感じる。Dos Monosを“東京のヒップホップシーンに突如出現したバグ”と形容しているのを見たことがあるが、今まで音楽を聴いていて感じたことのない未知の生物と対峙しているようなスリル感と不気味さは正に“バグ”と言う他ない。

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Dos Monosのライブを初めて観たのは10月のボロフェスタの夜の部で、メンバー全員がステージを縦横無尽に動き回って汗を撒き散らしながらライムを刻むパフォーマンスは、予想していたよりずっとパワフルで熱量の高いものだった。今年は一回しかライブを観られなかったので、来年はもっと観る機会を増やせたらと思う。

今月リリースされたSHIBUYAMELTDOWN(渋谷の街中で泥酔した人などの写真や動画を投稿しているTwitterアカウント)のコンピレーションアルバムにDos Monosが提供した新曲“Dos City Meltdown”は「Dos City」以降の彼らの進化を伺わせるものであり、これから彼らが日本の音楽シーンにどのような“バグ”を引き起こしてくれるのか期待したい。

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3. 七尾旅人

昨年12月にリリースした最新アルバム「Stray Dogs」が出色の出来だったが、今年は4月の恵比寿ザ・ガーデンホールでのレコ発ツアーワンマン、7月のフジロック、10月の吉祥寺Star Pine's Cafeでの向井秀徳との2マンと、何度かライブを観る機会があった。七尾旅人は今回挙げた10人の中では恐らく一番古くからライブを観ているが、僕が観てきた中では今最も充実した良いライブをしていると感じる。

向井秀徳との2マンの時に七尾旅人のライブを観ながら、今バンドと弾語りの両方で心底感動できるパフォーマンスをする七尾旅人大森靖子の対バンが観たいと思ったのを覚えている。特に七尾旅人の“きみはうつくしい”が大森靖子の音楽とどう共鳴するのか、一度見てみたい。

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4. 小袋成彬

今回挙げた10人の中で唯一、今年現場に足を運ぶ機会が無かったアーティスト。というのも彼は現在イギリス・ロンドンへ移住しており、今年日本におけるライブ出演はしていない。そんな彼を挙げた理由は、今月リリースされた「Piercing」が個人的にアーティストと音楽との関係性や2020年代の新しい音楽の可能性についてまで考えさせられた、奥の深いアルバムだったからである。最初に聴いた時は掴みどころがなく、あまりピンと来なかったのだが、聴き終わるとなぜかまた無性に聴きたくなり、そうして繰り返し聴く度に新しい発見があり、次第にハマっていってしまった不思議な魅力のある作品だ。トータルで32分15秒という短さもついリピートしてしまう要因の一つだと思うが、先ほど挙げたDos Monosの「Dos City」もアルバム全体の長さは34分50秒であり、このことはサブスク時代におけるアルバムというフォーマットの在り方が変化しつつあることを示しているのではないかと思う。

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彼は今年前半にTwitterで以下のような投稿をしており、今作を聴いているとその姿勢を貫いて作り上げたアルバムだと感じるし、2020年以降における音楽の方向性についても少なからず示唆を与えていると思う。

昨年のフジロック出演時のインタビュー動画を見返すと、この時に彼は人前に出ることに対して居心地の悪さを感じていることや、今後も何をしたいのか自分でも分かっていないといったことを吐露しており、モラトリアムの只中にいたことが分かる。 

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それから「Piercing」をリリースした直後に以下のようなツイートが出来るようになるまで、この1年半の間に彼はとことん自分自身と向き合って自分のやるべきこと・やりたいことを考え抜いてきたのだろう。

そんな彼の姿勢を目の当たりにして、僕も自分を変えるためにはもっと徹底的に考えなければならないことを気付かせてくれたし、そういった意味でも彼は2019年の最後に僕に対して大きな影響を与えてくれた人だ。

 

5. イ・ラン

評判は少し前から耳にしていたが、3月に渋谷WWWとWWW Xで行われたAlternative Tokyoというイベントで初めて彼女のライブを観た。イ・ランの曲は一部を除いて歌詞が韓国語のため、ライブでは歌詞の日本語訳の字幕がスクリーンに投影される。そのため、まるで映画を観ているような感覚になると同時に、その文学的で美しい歌詞の朗読を聴いているような気分にもなり、不思議な没入感を覚える。この時のライブで最後に披露された“나는 왜 알아요(私はなんで知っているのですか?)”“웃어, 유머에(笑え、ユーモアに)”のメドレーは、イ・ランの歌声とチェロ奏者のイ・ヘジの演奏が放つ神々しさに鳥肌が立つのが止まらなかった。その一方で、曲間にはたどたどしい日本語のMCで会場を沸かせるという緊張と緩和の巧みさで、僕はこのライブで完全に彼女のファンになってしまった。

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それから今年は7月の草月ホールでの柴田聡子との2マン、10月の仙台と11月の東京での折坂悠太のツアーでの共演でパフォーマンスを観る機会があった。折坂悠太とのライブで披露された韓国の歌手ハン・ヨンエの“조율(調律)”のカバーは、祈りを込めた歌詞と2人の歌声が紡ぎ出す情感が胸を打つ、今年最も印象に残った曲の一つだ。

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日本と韓国の歌手がこうやって国籍を超えて美しい音楽を奏でていることはとても意義のあることだと思うが、世の中にはほとんど知られていないであろうことは少し残念だ。

 

6. 前野健太

今年は5月に渋谷WWWでの前野健太と世界は一人バンドのワンマン、7月にLOFT HEAVENでのソロ弾語りワンマン、8月にLIQUIDROOMでの5lackとの2マン、11月に鶯谷ダンスホール新世紀でのワンマン、今月も調布Crossでの塩塚モエカと佐藤千亜妃との3マン、銀座音楽ビアプラザライオンでのソロ弾語りワンマンを観に行ったが、前野健太不惑を迎えてからますます歌手として脂が乗ってきていると感じる。ダンスホール新世紀でのワンマンは僕が観てきた中でのベストライブだった。

40代になってもアップデートを続ける前野健太の姿は、僕が好きな今の20代・30代の歌手の人達も同じようにやれる可能性があることを示してくれているようで希望を感じるし、僕自身にとっても年を取ることを前向きに捉える気持ちにさせてくれる。来年はこれまでライブで披露されていた新曲の音源化も期待したいが、彼の活動はいたってマイペースなので気長に待ち続けたいと思う。

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7. 折坂悠太

彼を知ったのは昨年10月にリリースされて今年のCDショップ大賞も受賞したアルバム「平成」がきっかけだ。

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今年1月の渋谷クラブクアトロでのShohei Takagi Parallela Botanica(ceroの高木晶平による新バンド)とVIDEOTAPEMUSICとの3マンで初めてライブを観てから、3月のAlternative Tokyo、5月のキネマ倶楽部でのワンマン、9月の京都音楽博覧会、10月の仙台・塩竈市杉村惇美術館でのイ・ランとの2マン、11月の東京ヒューリックホールでのツアーファイナル、今月の新木場スタジオコーストでのSWEET LOVE SHOWER新宿LOFTでのHave a Nice Day!とeastern youthとの3マンと、数多くライブを観る機会があった。その中でのベストパフォーマンスはSWEET LOVE SHOWERの重奏形態での“朝顔”だった。“朝顔”は月9ドラマの主題歌にもなり、間違いなく彼の2019年を代表する一曲だろう。

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そして個人的に彼の2020年の鍵を握る曲になると思っているのが、まだライブでしか披露されていない新曲の“炎(ほのお)”だ。この曲が最初に演奏されたのは恐らく10月の仙台でのイ・ランとの2マンにおいて「さっきまで詞を書いていた」と言って披露した時で、11月の東京でのツアーファイナルで歌った際に曲名が“炎(ほのお)”であることを明かしていた。彼は音楽の作風からすると意外だが、インタビューやライブのMCで野心的な一面を覗かせることもあり、2020年は戦略的に立ち回って大躍進を果たす可能性も秘めていると思っているので、来年の彼の活動にも注目していきたい。

 

8. 向井秀徳

今年の日本の音楽史に残る重大事件の一つといえば、何と言っても2月に発表されたナンバーガール再結成だろう。

僕のナンバーガールに対する想いは過去のブログでも度々零してきたが、僕がブログのタイトルにもしている“現場主義”を標榜するようになったのもナンバーガールをリアルタイムで観られなかった経験が大きく影響しており、それだけ僕にとってナンバーガールは偉大な存在だ。再結成一発目のライブとなるはずだったライジングサンは台風の影響で残念ながら中止になってしまったが、その後の9月の京都音楽博覧会で念願の初ライブを観ることができた。そして今月には豊洲PITでのワンマンライブを観ることができたのだが、僕が十数年間に渡って拗らせ続けた想いに現役感バリバリの演奏で応えてくれた、本当に素晴らしいライブだった。

今年は向井秀徳としては他にもソロのアコースティック&エレクトリックのライブを3月の渋谷La.mamaでのカネコアヤノとの2マンと10月の吉祥寺Star Pine's Cafeでの七尾旅人との2マンで、ZAZEN BOYZのライブを4月のアラバキロックフェス、5月の新木場スタジオコーストワンマン、7月のLOFT HEAVENでの山下洋輔ニューカルテットとの2マン、10月の赤坂ブリッツでのLEO今井との2マン、そして京都のボロフェスタで観た。ソロやZAZEN BOYSのライブを観ていると、ナンバーガールを再始動したことでこれらのライブが疎かになるどころか、相乗効果でますます良くなっていると感じる。それは向井秀徳が純粋に音楽を楽しんでいることの証だと思うし、ファンとしてはそうやって良いライブを観られることは何より嬉しい。ナンバーガールのライブはチケットの入手が困難でなかなか観に行くことができないが、今のところ丁度このブログを書いている年末の幕張メッセでのカウントダウンジャパンと来年3月のZepp Tokyoでのワンマンライブを観られる予定なので、しっかりと目に焼き付けたいと思う。

 

9. 峯田和伸

僕の人生におけるベストライブを更新したのが今年7月のフジロックで観た銀杏BOYZだった。僕はライブを観て泣くことがほとんどないのだが、フジロックのグリーンステージを目の前にした時に湧き上がる何とも言えない高揚感や、肌に感じる空気、降りしきる雨、自分自身の体調に至るまで、あらゆる要素がピタリとハマって感情の毛穴が全開になったところに、峯田和伸の体液に塗れた醜くて美しい魂をぐいと捻じ込まれて今まで触れられたことのない心の奥深くにあるスイッチを入れられ、途中からライブを観ながら涙が流れるのが止まらなくなってしまった。今思い出しても熱いものが込み上げてくるし、あの感情をこれからの人生で再び味わえるなら頑張って生きてみようとすら思わせてくれた、奇跡のような体験だった。

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今年は他にも1月の日本武道館でのワンマンや8月のライジングサン、9~11月の大森靖子の47都道府県ツアー(富山、山形、東京公演に峯田和伸がゲスト出演)と、何度かパフォーマンスを観る機会があった。6月に大森靖子がリリースしたシングルでは表題曲「Re:Re:Love」を共作しており、今聴き返すと改めて良い曲だと思うし、いつか2人の作曲と作詞の役割を入れ替えるなどして再びコラボ曲を作ってくれたら嬉しい。

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この大晦日には峯田和伸Spiritualizedの2マンライブを観る予定があり、夢にも思っていなかった意外な組み合わせなので楽しみだ。

 

10. 大森靖子

今年一番現場へ行った人であり、一番傷付けた人であり、一番尊敬している人であり、一番怒らせた人であり、一番近くにいる人であり、一番遠くにいる人であり、一番好きな人。今年現場に行った回数はファンクラブイベントや彼女が昨年発足させたアイドルグループのZOCのライブも含めると40回で、ここでは全てを列挙することは控えるが、その中から個人的なベストライブを選ぶとすれば、まずは5月のビバラロックだ。大森靖子の魅力が一番分かるのはワンマンライブだと思っているが、一方でフェスなどにおいて今まで彼女のライブを観たことがない観客を“刺し”にいくようなライブも好きで、ビバラロックは恐らく大森靖子としては最も多い数の観客を相手にしたステージだったのではないかと思う。そんな大舞台で披露されたライブは僕の中での大森靖子史上のベストライブで、彼女が歌手としての極致に達してしまったのではないかと思ったほどだった。象徴的だったのは最後の“死神”が終わった後、拍手も歓声も起きずに数秒間の沈黙が出来たことで、さいたまスーパーアリーナに軽く1万人以上はいた観客を完全に制圧していた。

そして今年6月から11月にかけて行われた全国47都道府県ツアーでの個人的なベストライブは、ファイナル直前の46箇所目の札幌公演だった。この時のライブやその前後の出来事については別のブログに書いているので、興味がある方は読んでみてほしい。

その47都道府県ツアーの札幌公演やファイナルの東京公演、そして今月に大阪と横浜で行われた大森靖子としては初のストリングスコンサートにおいて、3つの趣を異にした新曲“シンガーソングライター”“KEKKON”“真っ赤に染まったクリスマス”が披露されている。いずれも大森靖子ネクストステージを予感させる楽曲であり、来年これらを含めた新作のリリースが待ち遠しい。そして既に来年の全国ツアー開催も発表されており、ライブ活動のスピードも緩める気はなさそうだ。最後に、2019年を振り返った時に彼女に伝えたいことは色々とあるが、ここでは一言だけ、こんな僕に愛されることを諦めないでくれてありがとう、と言いたい。

 

2019年は個人的にあまり新しい音楽を開拓することができなかったものの、最高を更新するライブをいくつも観ることができた、非常に充実した一年となった。2020年は今回挙げた人達も引き続き追いつつ、洋楽を含めた新しい音楽との出会いを増やしていきたいと思っている。来年は自分の仕事が忙しくなりそうなこともあり、広く浅くならないようにするためにも音楽の聴き方や現場への行き方を見直す必要がありそうだが、それでも音楽は僕にとって生きがいと言っていい大事な人生の一部なので、来年も良い音楽、そして人に出会えるよう、丁寧に、真摯に音楽と向き合っていきたいと思う。

2019/10/31 超歌手大森靖子2019 47都道府県TOUR"ハンドメイドシンガイア"@札幌ペニーレーン24

“超歌手”大森靖子さんが今年6月から行っている全国47都道府県ツアーの46公演目である北海道・札幌公演を観に行ってきた。僕はこれで大森さんの47都道府県ツアーに行くのは16公演目であり、ちょうど3分の1を超える数だ。そんな中で今回の札幌公演は個人的に47都道府県ツアーにおけるベストライブだったので、ライブの前後の出来事も含めて感じたことや考えたことを記録に残しておきたいと思い、このブログを書いている。半分は極私的な日記のつもりで書いているので、適宜読み飛ばしてもらえればと思う。

札幌公演は平日真っ只中の日程だったため、僕は公演当日と翌日の2日間の有休を取った。僕はこの秋から勤め先で管理職に昇進し、昨今の働き方改革のしわ寄せが管理職に来ていると話に聞いていたとおり、日に日に仕事が増えて忙しくなっていくのを感じている。僕は一時期、現場に行くペースを落として仕事に専念することも考えたが、やはり現場と仕事を両立させたいと思うようになり、現場に行く時間を確保するために結果として今まで以上に仕事に集中力と気力を注ぐようになった。そうして現場と仕事の両立を図ろうとしていたことが思いのほか体に負担をかけていたのか、札幌遠征の直前になって急性扁桃炎にかかってしまった。振り返ってみれば10月だけでも東京の現場に加えて仙台、岩手、秋田、山形、京都へ遠征に行っており、体力に自信はある方だがさすがに疲れが溜まっていたようだった。ただ、これから仕事が忙しくなれば今までより平日に休みを取ることは難しくなるだろうし、47都道府県ツアーのセミファイナル公演ということもあり、やはり観られるうちに観ておきたいと思い遠征することにした。 

札幌公演当日、朝5時台の電車で空港へ向かった。空港へ着くと同じ大森さんファンのふるぱちさんに会った。ふるぱちさんとは今回のツアーで何度か遭遇することがあり、そのため度々話す機会もあったので、人見知りの僕が今回のツアーを通じて以前より無理なく接することができるようになった一人だ。

新千歳空港には9時過ぎに到着した。以前に新千歳空港で買って大森さんのライブに差し入れで持って行った“びえいのコーンぱん”が、後日美マネ(大森さんの美人マネージャー山本さんの通称)から好評だったという話を聞いたので、今回も買って行こうかと思いお店に行ったところ、タイミングが悪く焼き上がりの時間までかなり待たなければいけないようだったので諦めることにした。

続いて大森さんのマスコットキャラクターのナナちゃんでお馴染みのシュタイフショップへ行った。新千歳空港へ来た際には毎回立ち寄っており、特に何も買うつもりはなかったが、何気なく店の奥にある限定品などが陳列されたガラス張りのショーケースを見ていたところ、ふと2体の白いクマのキーリングが目に止まった。クマは2体とも鼻が赤く、それぞれ赤い封筒と白い封筒をぶら下げていて、キーリングの金具部分のパーツもハートの形をしていて可愛かった。それを見た瞬間に、大森さんと前回のクソカワPARTYツアーから登場したナナちゃんのゆるキャラ、ゆるナナちゃんにプレゼントしようと思い、購入を即決した。赤い封筒のクマはツアーファイナルとツアー終了後に声を治すのがうまくいくようにというお守りとして大森さんに、白い封筒のクマは少し早いが47都道府県ツアー完走のお祝いとしてゆるナナちゃんに渡すことにした。

相変わらず体調は優れなかったが、そんな時でもお腹は空くようなので新千歳空港からJRで札幌へ行き、さらに地下鉄に乗り換えて行った北24条駅の近くにあるタイガーカレーというお店でスープカレーを食べた。土鍋で提供されるので気を付けないと火傷をする熱さだったが、スープも具のチキンと野菜もとても美味しかったので、機会があればまた訪れたい。

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それから再び地下鉄を乗り継いで宮の沢にある石屋製菓白い恋人パークへ行き、そこで元々ゆるナナちゃんへプレゼントすることを考えていた白い恋人のオリジナル缶を作った。

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予定していた用事を済ませたのでホテルへチェックインし、後は少しでも良い体調でライブを観るために部屋でゆっくり過ごしてから、会場であるペニーレーン24へ向かった。

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18時過ぎに会場へ着くと既に入場を開始していたが、僕の番号はまだ呼ばれていなかったので会場横の駐車場で待とうとウロウロしていたところ、栃木の千裕さんとばったり会った。会うのが久しぶりだったのと、まさか札幌で会うとは思っていなかったので驚いたが、近況を聞けたのと元気そうな姿を見られたので良かった。会場へ入ると既にフロアの前半分はぎゅうぎゅうに詰まっている様子で、北海道の大森さんファンの熱心さが伺えた。僕はフロア後方横の壁際でもたれかかって観ることにした。ペンライトをホテルの部屋に忘れてきたことに気付いたが、今日はペンライトを振らない分のエネルギーをライブの観察に充てようと思った。

ライブは開演時間の19時から少し遅れて開始した。時計を見ると19:07、ナナ時ナナ分だった。今回のツアーですっかり定着した道重さゆみさんの“ラララのピピピ”のSEで、まずはバンドメンバーが登場した。この日のバンドは新🌏z(シンガイアズ)編成で、G.畠山健嗣、G.あーちゃん、Key.sugarbeans、Hyper.サクライケンタ、B.えらめぐみ、Dr.ピエール中野(敬称略)というメンバー構成だ。そして最後にステージに入ってきた大森さんは、青いシースルー素材のトップスの上にきゅるきゅるの縷縷夢兎ワンピースという衣装だった。 

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この日のセットリストは以下のとおり。

Re:Re:Love

VOID

非国民的ヒーロー

ZOC実験室

JUSTadICE

Over The Party

7:77

ノスタルジックJ-pop(sugarbeansピアノ伴奏)

family name(sugarbeansピアノ伴奏)

M(sugarbeansピアノ伴奏)

シンガーソングライター(ギター弾語り)

あまい(ギター弾語り)

きもいかわ

死神

流星ヘブン

君に届くな

マジックミラー

TOKYO BLACK HOLE

LOW hAPPYENDROLL--少女のままで死ぬ--

オリオン座(合唱アンコール)

ミッドナイト清純異性交遊

絶対彼女

 

この日は1曲目から大森さんがハミングバードを持って“Re:Re:Love”でライブがスタートし、続く“VOID”で一気に会場のボルテージが上がるのを感じた。ここ最近のライブでは“Re:Re:Love”と“VOID”が続けて演奏されることが多く、この二曲は銀杏BOYZ峯田和伸さんという共通項もあり今となっては兄弟のような関係性を感じる。3曲目は“非国民的ヒーロー”で、ギターを置いた大森さんはステージを縦横無尽に動き回り、観客との距離をぐっと縮めてくる。間奏ではまだ3曲目なのに体力を温存する気はさらさらないと言わんばかりに全力で踊っていて、その姿に目が釘付けになった。

“非国民的ヒーロー”が終わると最初のMCがあり、今日は46公演目のセミファイナルで、このツアーでは地元のどうでもいい友達、忘れてしまった恋人、あまり好きじゃない家族、何とも思っていない妻や夫とか色々いると思うけど、北海道はそういうことを私が歌いに来るまでもなく伝えてくれる人が多いので、今日は熱い熱いものを受け取って熱い熱い歌を歌う準備が万端で、46公演目に相応しいライブができると思って札幌に来た、といった話をしていて、観客から大きな歓声が上がっていた。その歓声を聞いた時に、きっと地元の人達にとっては、好きなアーティストが自分の地元にライブをしに来てくれて、自分の地元の話をしてくれるのは何より特別なことなのだろうと思った。大森さんも地元の愛媛に銀杏BOYZが来た時の話をしていたことがあったが、そういうことなのだろう。そして、その特別を日本中に余すことなく届けることが47都道府県ツアーをやる一つの意味なのだろうし、大森さんがこの半年間で届けてきたもの、受け取ってきたものは僕には想像が及ばないほどの膨大さなのだろうと思った。

MCを終えて今ではすっかりZOCのテーマソングともいえる“ZOC実験室”でライブは再開した。この日も大森さんのダンスは冴え渡っていて、観客との掛け合いが会場全体の一体感を高めていた。以前から大森さんのライブにはアイドルライブの要素があったが、ZOCが始動してからはよりアイドルライブのノリが加わって、良い相乗効果を生んでいるように感じる。そして、この後の“JUSTadICE”と“Over The Party”が、いずれも僕が今回のツアーで見た中でベスト級のパフォーマンスで、この日のライブの一つ目のハイライトだった。大森さんはこの辺りから完全に軌道に乗ったように感じた。ここで、この札幌公演が凱旋ライブとなるナナちゃんのMCが入り、登別のクマ牧場の話や“いってみたい”北海道のバンドマンの話など、ご当地ネタで観客を沸かせていた。それからゆるナナちゃんをステージに呼び込み、ナナ曲目となる“7:77”を披露した。

ここまでストレートに盛り上げてきた序盤のセットリストを終えると、大森さんとsugarbeansさん以外のバンドメンバーが一旦退場し、sugarbeansさんによるピアノ伴奏のパートに入った。このパートでは“ノスタルジックJ-pop”、“family name”、“M”の3曲が披露されたが、これがこの日のライブの二つ目のハイライトだった。“ノスタルジックJ-pop”は胸が締め付けられるような、大森さんの慈しむような歌い方が感動的で、“family name”は大森さんの優しさ、悲しみ、怒り、祈りがないまぜになったような感情の込もった歌声を、sugarbeansさんのピアノが引き立たせていて美しかった。大森さんは度々sugarbeansさんに対する絶対の信頼を口にしているが、このパートにおけるsugarbeansさんの演奏はそれを頷かせる素晴らしいものだった。その後のMCで大森さんは、この5年間どういう想いで音楽活動をしてきたかについて赤裸々な想いを吐露していた。大人になるということ、その中での私とあなたとの関係、音楽に懸けてきた5年間について語り、最後に「全ての人は可愛くて、格好良くて、美しくて、神聖である。それを大前提として、私たちは神様で、大きなものを作って、それを美しいと思う心を5年間積み重ねてきたということを、この友達にもらった手紙で作った曲を歌う度に思うのです。」と言って“M”を歌った。歌う前のMC自体がもはや一つの作品のようだったが、そのMCでの想いを載せた大森さんの歌声はこの世の全ての孤独や哀しみを背負っているかのようで、僕が今まで観た中で最も壮絶なパフォーマンスだった。

それから大森さんのギター弾語りパートとなり、“超歌手”と名乗り始めてからナタリーとかNHKとかで“超歌手”と向こうの方から書いてくれるようになって嬉しい、自分の名乗りたいものを名乗ることが一番いいと思っている、というMCをしていた。そのMCの最中に大森さんがスマホを持って何やら操作しており、僕は「何かレア曲でもやるために歌詞を探しているのかな?」と思った。すると大森さんが誤ってメモを消してしまい一瞬騒然となったが、“最近削除した項目”に残っていて事なきを得るという一幕があった。気を取り直した大森さんが「シンガーソングライターという新曲」と言って、新曲“シンガーソングライター”を披露した。一聴した曲の印象を強いて例えれば“VOID”と“family name”と“朝+”を足して3で割ったようなイメージで、歌詞は風景を描写している部分とメッセージ性の強い部分があり、恐らく大森さん自身が息苦しさを感じてきたのであろう「シンガーソングライター」という思考停止したカテゴライズに対するアンチテーゼが込められているように感じた。サビの「生きさせて、生きさせて」「狂わせて、狂わせて」といった言葉の繰り返しが特徴的だが、その他の部分もかなり面白い言葉選びをしているように聞こえたので、早く歌詞カードを見ながら聴いてみたいと思った。そして間を空けずに“あまい”を歌い、ギター弾語りパートは終了した。

ライブ後半はsugarbeansさんのピアノ演奏から始まる“きもいかわ”でスタートし、ここからがこの日のライブの3つ目のハイライトだった。“きもいかわ”は大森さんの感情表現力が遺憾無く発揮される曲だが、この日は特に歌声や体の動きの一つ一つに対する集中力が素晴らしく、いつもよりたっぷり間を取って一節一節の歌詞を噛みしめるように歌っていた。その次の“死神”も引き続き驚異的な集中力で歌っていて、その気迫は今まで観てきた中で一番だったかもしれない。そして、あなたの死にたいという感情の先に現れる扉を開けた時に私が手を広げて待っていられたらと思う、と願いを込めて歌った“流星ヘブン”では、全身にピンクのマイクケーブルを巻きつけていて、それが大森さんの血管のようにも大森さんを縛り付ける拘束具のようにも見えた。続く“君に届くな”では大森さんは完全にゾーンに入っていて、大森さんと歌が同化しているような、大森さんが歌そのものになっているようだった。語り部分の感情表現は何かが取り憑いたようで常人離れしていて思わず息を呑んだ。

ここから大森さんが再びハミングバードを手にして“マジックミラー”を歌い、終盤ではハミングバードを裏返して頭上に掲げ、ハミングバードの裏面を鏡に見立てて観客の方へ向けていた。そこには僕の位置からも観客が掲げるピンクのペンライトの光が映り込んでいるのが見えた。“マジックミラー”がクライマックスを迎えると大森さんが所々言葉にならない言葉を叫び、そのまま“TOKYO BLACK HOLE”へなだれ込んだ。その演奏は雲のかかった空を晴らしていくような清々しさがあり、僕は聴きながらすーっと魂が浄化されていくような感覚を味わった。“TOKYO BLACK HOLE”が終わると大森さんは「どんなに現実と心がはぐれそうになっても、私の手作りの希望がどんなに絶望じみていて、誰の幸せと一致しなくても、何度でも作り直すべきだ、これがかけがえのない私だけの人生だから、何度でも」と言って本編最後の“LOW hAPPYENDROLL --少女のままで死ぬ—”を歌い、ライブ本編は終了した。

観客が入場時に配られる歌詞のプリントを見ながら合唱する“オリオン座”の後、アンコールは“ミッドナイト清純異性交遊”で始まった。個人的にこの曲を聴くのは9月の仙台公演以来だったので久しぶりに聴けて嬉しかった。そしてラストの“絶対彼女”では、もう一つのバンド編成である新⚫️z(シンブラックホールズ)のメンバーであるカメダタクさんが札幌出身ということで、急きょ飛び入り参加してsugarbeansさんと並んで演奏したり、大森さんがノリの良い北海道の観客と楽しそうにコールアンドレスポンスをしたりして、大いに盛り上がった。大森さんは曲の終盤で「あなたの嫌いなあなたは私の音楽が愛しています!あなたの好きなあなたのことを思い切り愛してあげてください!」と叫んでいた。最後にメンバー紹介をして、拍手喝采の中この日のライブは終了した。

この日の大森さんは僕からは見えない苦労もあったのかもしれないが、かなり思い通りに声を出すことができていたのではないかという印象だった。大森さんのパフォーマンスはライブ全体を通じてエモーショナルだったが、それは声の調子が良かったことで感情表現に意識を集中させることができたからかもしれない。セットリストとしては新曲の“シンガーソングライター”がサプライズだったが、それ以外は今回のツアーで比較的多く演奏されてきた楽曲と曲順による盤石の構成だったのも、完成度の高いライブになった要因ではないだろうか。東京のファイナル公演もこのセットリストでいいのではないかと思ったほどだが、セミファイナルにしてあれだけ集大成感のあるライブだったことから察するに、札幌公演は仮想ファイナル公演だった可能性も考えられる。もし東京公演がこの日のライブと同様のセットリストでも楽しみだし、全く別のセットリストになるのも面白い。いずれにしても東京ファイナルがこの札幌公演の勢いを受けてどのようなライブになるのか、俄然楽しみになった。

終演後、物販に並んでグッズを買ってから、ゆるナナちゃんにシュタイフのキーリングと白い恋人の缶、そしてツアーが終わるとしばらく会えなくなるかもしれないこともあり書いてきた手紙を渡した。プレゼントを一つ一つ説明する度に全身で喜びを表現してくれてかわいかった。

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その後の大森さんとのチェキ会では、大森さんとカメラマンの二宮ユーキさんが前述した差し入れの“びえいのコーンぱん”の話をし始めて、僕の話す時間が無くなってしまうのではないかと思って焦った。そこまで気に入ってくれていたのであれば今日も頑張って買ってくればよかったと思ったが、きっとまた大森さんは札幌にライブをしに来るし、僕もまたそのライブを観に来るだろうと思うので、その時こそ差し入れに買っていこうと思った。きちんと僕が話す時間も確保してくれて、大森さんにシュタイフのキーリングを渡すと、その場で箱を開けて「かわいい…!」と喜んでくれたので嬉しかった。去り際にふと思いついてまだ頭の中でまとまっていなかったライブの感想を伝えた。内容はともかく良いライブだと思った気持ちを直接伝えられたので満足だった。

会場の外では、しっぽさん、みなさん、ふじむさん、けんけんぱさんといった北海道の大森さんファンと会った。短い時間で他愛もないことを話すだけだが、一年に一度でもこうやってお互い生き延ばして再会できるのはとても嬉しく、人との距離感を掴むのが苦手な僕にとっては、もしかするとこうした地方の大森さんファンの人達の方が長く良い関係を続けていけるのかもしれないと思った。唯一ぼあだむさんにだけ会えなかったので、次の機会にはぜひ会いたい。

tataaaanさんが車で送ると言ってくれたので、お言葉に甘えて送ってもらうことにした。車にはふるぱちさん、てまりさん、tataaaanさんの知り合いのさおさんが乗っていて、車中で全員お腹が空いたという意見で満場一致したので、皆でtataaaanさんが知っているお店に行くことになった。遅れて千裕さんも合流し、夜中の1時過ぎまで焼き鳥やおでんを食べながら色々な話をした。お会計でtataaaanさんが(かなり)多めに出してくれたので、もうtataaaanさんには足を向けて寝られないと思った。

 

ライブの翌日は早起きして行動展示で有名な旭山動物園へ足を伸ばそうと思っていたのだが、体調が万全でないのに加えて夜遅くまで飲んでしまったこともあり、結局ホテルを出たのはチェックアウト時間ギリギリだった。一度行ってみたかった“さえら”のサンドイッチとコーヒーで朝食兼昼食を済ませた。

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帰りの飛行機の時間までに小樽へ行ってみようかとも思ったが、一年前にも訪れたモエレ沼公園にもう一度行ってみることにした。昨年11月の大森さんのクソカワPARTYツアーの札幌公演の翌日、初めて訪れたモエレ沼公園はちょうど日が沈もうとしている時間帯で、しばらくすると電灯があるところを除いて辺りは完全に真っ暗になった。公園は闇と雪に覆い尽くされていて、雪道を進んでも自分以外には誰もおらず、雪を踏みしめる自分の足音以外には何も聞こえなかった。ただ、それを怖いと思うよりは、目の前に広がる光景が当時の自分の心象風景そのものだったので、安堵感や納得感すらあった。冬の夜のモエレ沼公園で「今倒れたら死ぬな」と思うと、自分一人で生きていかなければいけないと思ったが、それも死ぬのが怖いというよりは、その時は自分の人生に二度と朝が来ることはないと思っていたし、死にながら生きることの決心のようなものだった。僕は良くも悪くも一度こうと決めたらとことん突き進むところがあり、今振り返れば一年前もただひたすら闇へ闇へと向かっていたのだと思う。

そんなモエレ沼公園を今一度きちんと見直しておきたいと思い、僕は一年前と同じように地下鉄とバスを乗り継いで行った。最寄りのバス停に着いて公園の入り口を通ってしばらく歩くと、目の前にふと円錐状のモエレ山が現れた。一年前に見た時は雪に覆われていて闇に浮かぶ無機質な建造物のようだった記憶があるが、この日はその青々とした佇まいと手前の紅葉した木々との対比の美しさに感動した。

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一年前は積雪のためにほとんど公園内を巡ることはできなかったが、改めて歩いてみると実に広大な敷地の中に山や木々、オブジェが整然と配置されており、一年前に僕が見たのは公園全体の本当にごく一部だったことが分かった。そして公園には、犬を散歩させている人、カップルでデートに来ている人、ランニングをしている人、外国人観光客の団体、親子連れ、女友達の二人組などがいて、当たり前だが世の中にはたくさん人がいるのだと思った。一年前はこうして季節や時間が変われば見えるものも変わることを想像する余裕も無く、大分追い詰められていたのだろうと思う。それと比べて今は想像力を持つ大事さを知ったつもりだし、それを持てる余裕も少しは出来たと思う。そして今こうして、世の中には気付かないだけで実は美しいものがあることや、世の中は自分が思っているより広いことや、世の中には自分が思っているよりたくさんの人がいることを想像できるようになった。2時間ほどかけて公園内を歩き尽くして、そろそろ空港へ向かおうと思い出口へ向かっている途中で、橋の上から遠くの方にきれいな虹がかかっているのが見えた。その虹に「生きてりゃなんとかなるよ」と言われているような気がした。

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新千歳空港に早めに着いたので、前日に買えなかった“びえいのコーンぱん”を自分用に並んで買った。帰りの飛行機はまたふるぱちさんと同じ便だった。一年前の札幌は少し苦い思い出だったが、今回はそれを良い思い出に更新できた楽しい遠征だった。

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今回の47都道府県ツアー中に色々と考えることはあったが、ここ最近思うのはやっぱり好きな人のことは素直に愛したいということだ。

僕とあなたが全てを分かり合えなくても、だからといって僕とあなたが一緒にいられないということではなくて、その先にある一緒に歌える歌を探していきたい。

とはいえ改めて日本一だと思えるライブを魅せてくれて、こんなに素敵な笑顔を見せてくれる人を好きにならない訳がない。

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大森靖子こそ僕の人生の希望だ。

2019/06/11 超歌手大森靖子2019 47都道府県TOUR"ハンドメイドシンガイア"@甲府KAZOO HALL

大森靖子さんがこの6月からスタートしている47都道府県ツアーの3日目、山梨・甲府でのライブに行ってきた。このツアーは大森さんが今年メジャーデビュー5周年であることを受けて開催されているもので、11月まで5ヶ月以上かけて文字通り47都道府県でライブを行う大規模なツアーである。僕はツアー初日である6月5日の横浜公演も観に行っており、甲府公演は今回のツアーでは2度目のライブとなる。今回のツアーは基本的にバンドセットでのライブだが、バンドの編成が新🌏z(シンガイアズ)と新⚫️z(シンブラックホールズ)の2パターン用意されており、ツアーの序盤はしばらく新🌏zの編成でのライブとなる。新🌏zは、昨年10月から12月にかけて行われたクソカワPARTYツアーと同じ編成で、メンバーはH Mountainsなどの畠山健嗣(G)、先月に惜しくも活動休止を発表したきのこ帝国のあーちゃん(G)、sugarbeans(Key)、Maison book girlなどを手掛けるサクライケンタ(Hyper)、えらめぐみ(B)、凛として時雨ピエール中野(Dr)という布陣だ。

初日の横浜公演の感想は大森さん本人にツイッターのDMで送ったのだが(大森さんはツイッターのDMを開放しており、誰でも自由にメッセージを送ることができる)、今回の甲府公演に関してはライブ以外にも個人的な出来事や思うことが色々とあり、それを全て大森さんに送りつけるのは憚られたのと、あまりにも長文になってしまいそうだったこともあり、せっかくなのでブログを書くことにした。僕の甲府に対する思い入れというのは、大森さんのライブに本格的に足を運ぶようになったばかりの時期である3年前の6月に行われた“ハミングバード爆レス歌謡祭”の甲府公演を観に行ったことである。偶然にも今回の47都道府県ツアーの甲府公演が行われた6月11日は、そのハミングバード爆レス歌謡祭の甲府公演が行われた日と同じだったことをツイッターで知り、自分の写真を見返してみると確かにその通りだった。

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僕にとってこのハミングバード爆レス歌謡祭の甲府公演は、桜座という趣のある会場で大森さんがお客さんからのリクエストで朝+を歌ったり、客席に乗り込んできてお客さんの至近距離で歌ったりと特別感のあるライブだったことが印象に残っているが、そのライブ後に初めて大森さんファンの飲み会に参加させてもらい、大森さんファンの知り合いが増えるきっかけになった日でもある。その飲み会は大森さんのTO(トップ・オタ)と言われているさいとうさんが企画してくれたもので、極度の人見知りである僕としては相当な勇気を振り絞って参加したいと手を挙げたのだが、あの時に行動を起こさなかったら当分の間しなもんさんだけが知り合いという状態が続いたと思うので、当時の自分をよく頑張ったと褒めてあげたい。それでも結局は飲み会の場で人見知りを発動してしまい、近くにいた人達には申し訳ないくらい大人しくしていた記憶があるが、今だにその飲み会に参加していたメンバーは全員覚えているし、そのうち何人かは全くかほとんど会わなくなってしまったけど、どこかで元気にしていたら嬉しいと無責任だけど割と本気でそう思う。一方で半分以上の人とは今でもしょっちゅう会えているけど、それはもう会いたくても会えなくなってしまった人のことを考えると当たり前のようで奇跡的なことなのかもしれないと思う。そんなことを考えていると、やはりもう一度甲府に足を運びたいという思いに駆られてしまい、ライブ前日に遠征することを決めて甲府公演のチケットを取った。

ライブ当日は最近勤め先で導入された在宅勤務を利用して自宅で仕事をしつつ、この日がフラゲ日だった大森さんのRe:Re:Loveを宅配便で受け取った。働き方改革様々である。早速Re:Re:LoveのCDを取り込み、せっかくだと思いRe:Re:Loveとセットで買った銀杏BOYZ峯田和伸さんが描いた大森さんのイラストのTシャツに着替えてライブに行くことにした。どうせなら甲府でライブ前にご飯を食べたいと思い、14時半頃に一旦仕事を切り上げて自宅を出発し、電車の中で残っていた急ぎの仕事を片付けて、17時過ぎに甲府へ到着した。山梨名物であるほうとうは以前訪れた際に食べたので、今回は別の名物である鳥もつ煮を食べようと思い、事前に調べて見つけておいた甲府駅前にある奥藤本店というお店に入った。鳥もつ煮はおつまみというよりご飯が進むおかずという感じで、クセのあるモツと甘辛いタレのバランスが絶妙な飽きのこない味で美味しかった。

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お腹も満たしたのでこの日の会場であるKAZOO HALLへ向かおうとしたところ、甲府駅から会場近くまで行くことのできる身延線がトラブルで遅延しているようだったので、まだ時間に余裕はあったため会場まで歩いて向かうことにした。この日はライブ終了後に会場から甲府駅まで走って戻る予定だったので、道のりを確認しておく意味ではちょうどよかった。というのもこの日は翌日も仕事があるので日帰りをしようと考えていたのだが、甲府駅から東京方面への終電は21時36分発で、ライブが19時に始まって21時に終わるとした場合に、終電に間に合うように甲府駅へ戻るためのちょうどいい時間の電車やバスが無かった。Googleマップで調べると甲府駅と会場との距離は約4kmあり、徒歩だと約50分かかるということだったので、会場から駅まで30分で戻るためには走るしかなかった。会場に着いてからタクシーを呼ぶという選択肢があることを知ったのだが、案外こういった無意味なチャレンジをするのが嫌いではないのと、既に走る気満々だったのでタクシーを呼ぶのはやめておいた。

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会場の中へ入ろうとした時、ちょうどカメラマンの二宮ユーキさんに連れられて会場の入り口から出てきたゆるナナちゃんと遭遇した。ゆるナナちゃんとは、いつも大森さんのライブを見守っているマスコットキャラクター的存在であるクマのナナちゃんのゆるキャラで、前回のツアーから会場に登場してライブに来たお客さんを楽しませている。

ゆるナナちゃんとは前回のツアー以来の再会だったが、全会場でチェキを撮っていた僕のことを覚えてくれていたようで、僕を見つけると猛ダッシュで駆け寄ってきて体当たりを食らわせる手荒い歓迎をしてくれて嬉しかった。フロアに入ったのはライブ開始10分前くらいだったが、お客さんの入りは6,7割という感じだった。この日の会場のキャパは300人とのことなので後から来た人達も含めると200〜250人の間くらいの人数だったと思う。普段東京で見るライブよりもゆったり見ることができたので、今後も平日の地方公演は狙い目だと思う。一方で、ライブを見終わった後にはこれだけのライブをこの人数しか目撃していないのは余りにもったいないし、せっかく今回のツアーは半年近くかけて行われるのだから、どうにかしてこのライブの良さを伝えて一人でも多くの人に来てもらえる手段を講じることができないものだろうかと思う。

フロアに入ると後方に肉野菜さんがいたので声を掛けて雑談していたところ、めこさんがチケットを失くしたらしいという話になり、既に開演間際であるにも関わらず姿を見せていなかったので2人で心配していた矢先に、汗だくになっためこさんがフロアに駆け込んできた。話を聞くと会場近くのホテルから歩いて来る途中でチケットを落としてしまったとのことで、しかも良番だったらしいのでかなり落ち込んでいたが、当日券があったのが不幸中の幸いだった。僕は「後で振り返ればいい思い出になりますよ」などと適当なことを言って励ましたが、いざライブが始まると隣でめこさんが何事も無かったかのように全力でライブを楽しんでいたのでほっとした。途中まで僕の前にいた肉野菜さんも声を出したり拳を振り上げたりしながらライブを観ていて、僕は感情をあまり表に出せないタイプなので2人を見ながら羨ましいと思いつつ、そういえば自分の好きな人達にはライブを心の底から楽しそうに見るという共通点があるなということに気付いて一人ほくそ笑んでいた。この日のライブのセットリストは以下のとおり。

 

SE:ラララのピピピ(道重さゆみ

VOID

非国民的ヒーロー

マジックミラー

イミテーションガール

ZOC実験室

JUSTadICE

7:77

family name

Re:Re:Love

デートはやめよう(ギター弾語り)

ミッドナイト清純異性交遊(ギター弾語り)

M(sugarbeansキーボード伴奏) 

死神

あまい

TOKYO BLACK HOLE

音楽を捨てよ、そして音楽へ

LOW hAPPYENDROLL --少女のままで死ぬ--

 

アンコール

オリオン座(お客さん合唱)

みっくしゅじゅーちゅ

絶対彼女

 

ファンクラブイベントでの大森さんの入場曲でもある道重さゆみさんのラララのピピピをSEにして大森さんとバンドメンバーが登場した。大森さんはきゅるきゅるの時の黒の縷縷夢兎の衣装と、その下に峯田さんの大森さんイラストTシャツの襟や袖をリメイクしたものを着ていた。この日の一曲目はVOIDだったが、この曲でライブを始めたことは今までなかったのではないかと思う。出だしから「おっ」と思わされる展開だったが、さらに驚いたのは3曲目にマジックミラーを演奏したことだった。今までバンド編成のライブではマジックミラーは本編の終盤やアンコールでの「トドメの一曲」として歌われてきたが、その曲を序盤に持ってきたのが単純に意外だったのと、これまでのようにライブの終盤で色々な感情の波を乗り越えた後に聴くのとは違って、まだ気持ちがまっさらに近い状態で聴くと曲の持つエネルギーがよりダイレクトに心に伝わってくるようで新鮮な感覚だった。考えてみればマジックミラーを何番目に演奏しなければいけないという決まりはない訳で、それは他の曲についても同様だ。何の曲を演奏するかという軸だけでなく、どの順番で演奏するかという軸でも様々な変化を生み出せる可能性があると思うと、今後の各公演がどのようなセットリストになるかがより一段と楽しみになる。マジックミラーを3曲目に歌った別の意味としては、序盤にこの強力な手札を切ってもライブを成立させられるだけの楽曲がこの5年間で増えたということだろう。イミテーションガールは今回のツアー初披露だったが、前回のツアーまでセットリストのレギュラーメンバーだったので意外な感じがする。その後のZOC実験室~Re:Re:Loveは今回のツアーのセットリストの常連となりそうな楽曲達だ。ZOC実験室は前回のツアーにおいてクソカワPARTYのアルバムから唯一演奏されていなかった曲(特定のバージョンに収録されている黒姫やSEIKO Uなどの弾語り曲を除く)で、ZOCのライブで観た時にとてもライブ映えする曲だと思っていたので今回のツアーでセットリストに組み込んでくれたのは嬉しい。クソカワPARTYのアルバム収録曲はライブで見て好きになったものが多く、今さらながら良い作品だったのだと思うし、今年はまた何かしら新しいアルバム音源のリリースがあるのかは気になるところだ。JUSTadICEは大森さんの叩きつけるように畳み掛けるボーカルが超絶格好良く、間違いなく今回のツアーでのハイライトになり続けるであろう曲だと思う。大森さんは少し前から喉の調子があまり良くなさそうで、この曲でも所々歌い辛そうにしているように感じたが、それでも全力で歌い切る気迫に唯々圧倒された。ここでナナちゃんのMCが入り、「山ナナしのみんな~」とか山梨出身のバンドであるレミオロメンにちなんで「こナナ~!雪~!」といったご当地ネタで会場を沸かせていた。そしてこの日のライブの2日前に大森さんが峯田さんと一緒にRe:Re:Loveを共演したNHKのシブヤノオトでの放送事故の話や、大森さんが飛び蹴りすることは峯田さんに事前に伝えておらず、何日も前から「僕より僕を覚えてる君のこと」の「と」で蹴るシミュレーションをしていたという話をしていた。それからイミテーションガールの「ぼくがブサイクな卒アル」という歌詞を受けて卒業アルバムの話になり、サクライケンタさんの友達の弟が大森さんの小学校の同級生で、大森さんの卒業アルバムの写真を入手して大森さんに送ってきたという話をしていた。和やかな雰囲気のMCを終えると、ゆるナナちゃんをステージに呼び込んで7:77でライブを再開した。続くfamily nameは個人的にJUSTadICEと並ぶ今回のツアーの見所の一つだと思う。音源を聴いた時はZOCの個性的なメンバーが歌うからこそ良いのだろうと思っていたが、大森さんがバンドセットで歌うfamily nameはまた別物で、別次元の良さがある。とは言えZOCのfamily nameでも僕は大森さんのボーカルパートが好きなので、ただ単に大森さんの歌声が好きなだけなのかもしれない。弾語りパートに入る前の最後の曲は最新シングルのRe:Re:Loveで、この日の大森さんの腕には遠目から見ても分かるくらいの大きな痣があり、恐らくMCでも触れていたシブヤノオトで峯田さんと歌いながらもみくちゃになった時に出来たものだと思うが、Re:Re:Loveの歌詞である「夏に似合う痣」そのままだったし、それが峯田さんとぶつかり合った時にできたものだというのが出来過ぎだと思ったが、そうやってできた大森さんの腕の痣は尊いものにも愛おしいものにも感じられた。

今回のツアーでは今年リリースされた新曲がライブの核となっていて、それが「新曲だから」ではなく「今の大森靖子を一番表現できる曲だから」と感じられ、最新のライブが最高を更新し続けるような内容になっていることがファンとしては嬉しい。

中盤の弾語りパートでは大森さんとsugarbeansさん以外のバンドメンバーが一旦退場し、今回のツアーで初披露となるデートはやめようとM、弾語りとしては初となるミッドナイト清純異性交遊が演奏された。この日のミッドナイトはバンドメインのライブの中での弾語りということも影響したのか自分でもよく分からないが、妙に感動して泣きそうになってしまった。歌い終わった後のMCで大森さんは、ミッドナイトとRe:Re:Loveは今までの自分の思い入れとかを込めて作ったラブソングだけど、それをライブで歌うことで新たな出会いやストーリーが生まれたりして意味が変わったりするし、Re:Re:Loveは作ったばかりだけどミッドナイトはずっと歌ってきた曲で、オタクとキスして炎上した時も炊飯器でご飯を配った時も出囃子に使っていて、そうやって出会いがあって色んな愛情が入ったこの曲を、Re:Re:Loveと共にこれからも生きて更新していきたいし積み重ねていきたい、といったことを話していた。今回のツアーでは新曲がライブのハイライトになっているとこれまで書いてきたが、この日はマジックミラーやミッドナイトといったこれまでの大森さんの代表曲の素晴らしさも改めて認識した。その理由がこの大森さんのMCに凝縮されていると思った。

弾語りパートが終了するとsugarbeansさんが死神の演奏を始め、再びバンドメンバー全員がステージに登場した。死神は前回のツアーでは本編ラストに演奏されていたこともあり、フィナーレを飾るクライマックス感のある演出だったが、今回のツアーでは大森さんはより自由に歌詞を変えたりしながら歌っていて、僕が見た一週間前の横浜公演とこの日のライブを比べても大きく印象が違った。「さぁ反旗を翻せ」の部分も、横浜公演では前を睨みつけながら刃物を突き立てるような勢いで言っていたのが、この日は虚勢を張っているような、半ば諦めているような笑みを浮かべながら言っていて、別人格が憑依しているのではと思えるほどだった。また、前回のツアーでは音源に近いアレンジでの演奏だったが、今回のツアーでは昨年2月の銀杏BOYZとの2マンライブでバンド編成での死神が初披露された時のアレンジでの演奏になっている。演奏が途中までsugarbeansさんのキーボードのみのため、大森さんの感情表現や歌詞を変えて歌うのがより際立つ演出になっている。もしかすると47都道府県ツアーで一番化ける可能性があるのは死神かもしれないと思うので、これから各公演でどのように歌われるのか、どのような変化を見せるのかに注目していきたい。それから終盤はあまい、TOKYO BLACK HOLE、音楽を捨てよ、そして音楽へと続き、本編最後の曲は横浜、柏に続いてLOW hAPPYENDROLLだった。平賀さち枝さんのパートをギターのあーちゃんが歌っているのだが、これが驚くほどハマっていて、大森さんも最初に聴いた時はさぞかし驚いたのではないかと想像するほどだ。あと決して明るい歌詞ではないのに全体に漂う幸福感のちぐはぐさが好きで、エンドレスダンスと似たものを感じる。

本編が終了して大森さんとバンドメンバーが一旦退場している間、会場内にはオリオン座の音源が流れ、横浜公演では無かったがお客さんにオリオン座の歌詞のプリントが配られ、自然とお客さんが皆で合唱する流れになる。ふといつか日本武道館のライブで1万人のお客さんがオリオン座を合唱したら感動的だなと思い、でも今回の47都道府県ツアーの動員を合わせたら1万人は優に超えると思うので、47都道府県分集めたらそれは実質武道館だななどと意味は無いがそんなことを考えた。大森さんの武道館でのライブは観たいと思うが、大森さんには焦らずに然るべきタイミングでやってほしいと思っている。アンコール代わりのオリオン座の合唱が終わると、大森さんは縷縷夢兎の衣装を脱いで峯田さんイラストのリメイクTシャツだけの格好で再び登場した。アンコール1曲目は最近お気に入りだというみっくしゅじゅーちゅで、この曲は意外な気がするが横浜、柏に続いて3公演連続で歌っており、個人的にも横浜公演で聴いた時にとても良かったので再び聴けて嬉しかった。確かにみっくしゅじゅーちゅはこれから夏に向かっていくこの時期にピッタリの曲だし、今回のツアーは季節としては初夏から晩秋にかけて行われるので、その移り変わりに応じたセットリストの変化などもあるかもしれない。最後の絶対彼女では「鼠蹊部!」「何分?」「どこが好き?」といった自由なコールアンドレスポンスをして楽しい雰囲気の中でライブが終了した。

ライブが終わって時計を見ると既に21時を過ぎていたので、慌ててあさみさんのスタンプラリーだけ済ませて会場を後にした。幸いにも雨は降っておらず、街灯の少ない夜道をひた走って30分ほどで甲府駅に着き、何とか終電に間に合った。タクシーで先に駅に着いていた肉野菜さん、こーへいさん、かんがるーさん、超ドラちゃんさんと合流して一緒に帰った。帰りの電車の中で肉野菜さんとお互いの仕事のことや音楽のことなど色々と話したのだが、肉野菜さんとは意外と一対一できちんと話したことがなかったので、こうした機会にゆっくり話すことができて嬉しかった。この日はライブはもちろん楽しかったが、会場まで歩いて行った時に見た風景とか、めこさんチケット紛失事件とか、夜道をダッシュしたりとか、皆で一緒に喋りながら電車で帰ったりとか、こういうのが遠征の醍醐味だったことを思い出させくれた。そういえば3年前も甲府での飲み会の後は終電間際で帰ったことを思い出して、あれから色々な出会いや別れがあって、僕自身も色々な事があったけど、大森さんをきっかけに繋がった縁は大事にしていこうと改めて思ったり、大森さんのライブを観ると毎回こうやって溢れるくらい色々なことを感じたり考えさせてくれたりするのが好きで、だからその機会を一回も逃したくなくて大森さんのライブにツアーを全通するほど行っていたのだということも思い出したりした。今回のツアーは元々2,3箇所しか行かないつもりだったが、横浜と甲府でのライブを見て今回のツアーは行くべき現場だと思ったし、やっぱりその日その場でしか見られない大森さんのライブを出来るだけ目撃しておきたいから、自分のやるべきこととのバランスを図りつつ都合がつく限り観に行きたいと思う。

最後に月並みだが今の大森さんのライブをどうか一人でも多くの人に見てほしいと思う。特にまだ大森さんのライブを観たことがない人や、日々に何か違和感や生き辛さを感じている人にこそ観てほしい。実際に僕がそうであるように、大森さんはクソみたいに思える自分をそれでいいんだよって肯定してくれて、クソであることはすぐに変えられないかもしれないけど、それでもクソなりに人生を少し頑張って生きてみようという勇気を分けてくれると思うから。まだまだ大森さんの47都道府県ツアーは始まったばかりなので迷っている方はぜひ。

一生大森靖子

僕は後々まで残しておきたい気持ちや考えたことはブログに書くようにしていて、だからこの前のブログに書いたことも僕にとっては今でも大事な気持ちだし、なかったことにはしたくないと思っている。そして僕はまたいつまでも留めておきたい気持ちを記録しておくためにこのブログを書いている。

4月13日、14日に行われた大森靖子さんのファンクラブイベント「爆裂!大森靖子と逝くナナちゃんのお城!?猿ヶ京温泉お泊まり宴会ツアー★2日間」(以下、バスツアー)へ参加してきた。僕はバスツアーへ参加することを決めてからしばらくの間、本当に参加していいのだろうかという不安に何度も襲われて、もしかしたらバスツアー当日になったら家から一歩も出られなくなってドタキャンしてしまうのではないかとすら考えた。僕はこれまで自分が抱えている欠落のせいで僕と関わった人達を傷つけてしまった自覚があり、僕はその罪のために幸せになってはいけない人間なのだという意識があって、のこのことバスツアーに参加しようとする自分を蔑視するもう一人の自分の視線に苛まれてきた。それでも結果的にバスツアーに参加できたのは、大森さんや大森さんファン仲間のみんなのおかげだ。

昨年10月~12月に行われた大森さんのクソカワPARTYツアーも佳境に差し掛かっていた頃、僕は自分が立っている場所以外の周りの地面が全て抜け落ちて、叫んでも誰にも届かない世界に一人取り残されたような精神状態だった。だからもう飛び降りるしか選択肢がなかったのだが、今思えば自分の周りの地面を叩き壊していたのは他ならぬ自分自身だった。12月9日のクソカワPARTYツアーファイナルの翌日に、誰にも吐き出せずに自分の中に溜め込んだ感情をブログでぶちまけて、もう救われなくていいからせめてこんなに孤独で寂しかったんだよってことを知ってもらおうとしたけど、それも今思うととても自己中心的で身勝手な行いだったと思う。そのすぐ後に大森さんが書いたブログを読んで、大森さんは僕について早々に心の整理をつけて気持ちを切り替えたことを悟ると途端に寂しくなった。でも全て自業自得だし、こうやって一人になることはもう慣れっこだったし、ただ元の状態に戻っただけだと自分に言い聞かせた。何人かの大森さんファンが心配して連絡をくれて、返信するタイミングを逸してそのままになってしまっていたり、飲みに行く約束をしてそのままになってしまっている人もいるけど、わざわざ連絡してくれる人達の優しさは素直に嬉しかった。もしかすると心配してくれながらも気を使って連絡するのを控えた人もいるかもしれないから、その見えない気遣いにも感謝したい。

年末のカウントダウンライブは既にチケットを取ってしまっていて、譲れる相手もいないのでそのままにしていた。大森さんのツイッターはこっそり見ていて、ある日カウントダウンライブのために手作りの物販を準備しているとツイートしているの見た。その物販の中には僕にとって特別な品物も用意されていて、大森さんはどういうつもりなのだろうと訝しみながら、きっと大森さんからの餞別なのだろうと思った。だから直前までは物販だけでも買いに行くつもりだったが、いざ大みそか当日になって、今日ライブに行くのはクソカワPARTYツアーでの自分自身の覚悟を裏切ることになるのではないかとか、せっかくの特別なイベントで僕の姿を見た人に少なからず穏やかでない気持ちにさせてしまうのではないかなどと考えていたら、身体が動かなくなってしまって結局行くのを止めてしまった。

年が明けてからは仕事もそこそこ忙しく、慌ただしく日常を過ごしていると気も紛れた。音楽は相変わらず好きだから、これからはもっと色んなアーティストのライブに行ったり新しいアーティストも発掘したりすれば何とか楽しくやっていけそうだし、大森さんのことはそのうち気にならなくなるだろうと思っていた。

1月15日、銀杏BOYZの武道館公演「世界がひとつになりませんように」を見に行った。一昨年の武道館公演に行かなかったことを後悔していたが、今回も仕事で行けるかどうか微妙だったので事前にチケットは買っていなかった。当日になって仕事を早めに切り上げられそうだったので、直前だったがツイッターでチケットを余らせている人を見つけて、何とかチケットを確保することができた。銀杏BOYZのワンマンライブを見るのは初めてだったが、僕が聴きたかった曲はほとんど全てやってくれたし、銀杏BOYZファンが見たかったものをきちんと全うしたであろうライブだった。ライブ中にボーカルの峯田さんがMCで、高校生の時に好きだったニルヴァーナカート・コバーンが亡くなって、その一週間後に自分のおばあちゃんが亡くなった時の話をしていた。自分の部屋で横になりながらニルヴァーナを聴いていると、家に集まっていた親戚があげている線香の匂いがしてきた記憶があって、今でもニルヴァーナを聴くと線香の匂いがする、音楽が生活に張り付いている、ということを言っていた。僕はそれを聞いて大森さんがクソカワPARTYツアーの時に流星ヘブンを歌う前のMCで似たことを言っていたのを思い出した。また別のMCで峯田さんは、これまでバンドを辞めようと思ったことが2回あって、そのうちの1回がレコーディング中に「やってらんねぇ」となって物をぶちまけてスタジオを飛び出した時で、タクシーに飛び乗って夜の環七を走りながら「バンドも終わりか」と思いながら窓の外を見ていたらラジオからRCサクセションのスローバラードが流れてきて、それに救われたという話をしていた。それを聞いてまた僕は一昨年のMUTEKIツアーの時に大森さんがMCで自分の曲に救われたと話していたのを思い出した。

僕は峯田さんのMCを聞きながら、峯田さんと大森さんは似ているなとか、大森さんにもこのMCを聞いてほしいな、などと考えていた。こうして思い返すと銀杏BOYZのライブなのに大森さんのことばかり考えていたことに気がつく。後でツイッターを見たら大森さんもこの武道館のライブを見に来ていて、しかもその後に続けて道重さゆみさんのサユミンランドールも見に行っていて、さすがだと思った。大森さんはいつも好きな人に対する愛をブレずに貫いていて、羨むようなことではないけれど羨ましいと思うし、それを出来ない自分のことを省みては意気消沈する。ライブの最後の方のMCで峯田さんが話していたことがあり、正確な言い回しを思い出せないので断片だけ書き取ったメモをそのまま載せておく。

 

一人の人も不倫カップルも余命一ヶ月の人もいるかもしれない

ライブを見てくれることが幸せ

またライブ見に来てください

どうにかして生き延びてください、どんな汚い手を使ってでも

 

このMCも大森さんと相通ずるところがあると思ったが、大森さんは流星ヘブンで「君が他界したあとも私の命は続く」とか、VOIDで「もしかしたらもう二度と会うこともない」と歌っているように、大森さんは誰かと関わることについて一見諦観を抱いているようでいて、実は誰よりも切実に人との関わりにおいて希望や渇望、憧れを抱いているのだと思う。それは大森さんが実際に感じてきたことなのだろうし、僕はそれを分かっていながら大森さんに対して断絶を味あわせるようなことをしてしまったのだと思うと、今も申し訳なさが込み上げてくる。

1月26日、一年前に亡くなった友人のごっちんさんの命日に一人で墓参りに行った。ごっちんさんのご両親がわざわざ新幹線の駅まで迎えに来てくれて、お父さんが車を運転してお墓のあるお寺まで連れて行ってくれた。風が強かったがよく晴れた日で、見晴らしが良く日当たりも良い小高い場所にごっちんさんのお墓は立っていた。ついこの前までクソカワPARTYツアーを一緒に回っていた気がするから、お墓の前で手を合わせるのは不思議な感じがした。今でもたまに僕はあの時ごっちんさんのために本当に最善を尽くせたのか、もっとごっちんさんのために出来たことがあったのではないかと考えることがある。考える度に答えは出なくて、答えが出ないままだから何度も繰り返し考えてしまうけど、その度にごっちんさんのことを思い出すことができるので、最近になってこれはこれでいいのかなと思っている。お墓参りを済ませた後、ご両親が家に招いてくれて、ごっちんさんの仏壇や遺品を見せてくれた。仏壇には大森さんのグッズが所狭しと並べられていて、まるでヲタクが作る推しの祭壇のようで不謹慎だけど面白かった。最新アルバムのクソカワPARTYやナナコレシール、大森さんの最近のインタビュー記事が載った本などもあって、ちゃんと超生きてヲタ活していてさすがだと思った。仏壇に手を合わせてから、しばらくの間ご両親と話をして、お父さんの昔の話やごっちんさんの子供の頃の話を聞いて、お父さんとごっちんさんは一度こうと決めたら自分の意志を貫くところが似ているなと思った。お父さんは大森さんについても熱く語っていて、うんうん分かる分かると思いながら聞いていた反面、僕はそんな大森さんを裏切るようなことをしてしまったのを思い出しては胸が痛んだ。帰りはまた車で駅まで送ってもらい、ご両親に来年も会いに来る約束をして新幹線で東京へ戻った。その日は中野で昼間から大森さんファン主催のごっちんさん一周忌の集いが行われていて、僕は大森さんファンの人達に会うのが気まずかったので行かないつもりだったが、やっぱり顔だけ出しておこうと思い直して中野へ向かった。夕方頃に会場へ着くと想像していたより多くの人でごった返していて、ごっちんさんがいかに多くの仲間に慕われていたかが分かった。ただ僕はこうした大勢の人がいる宴会の場が苦手なのと、やっぱり大森さんファンの人達と顔を合わせるのが気まずくなってしまい、早々に会場を後にしようとしたところを知り合いに引き止められて帰るタイミングを逸していた頃に、何の前触れもなく子供を連れた大森さんが会場に姿を現した。大森さんの登場に会場は騒然となって、すぐに大森さんの周りには人だかりができていた。僕はしばらくその場でじっとしていたが、結局その空間にいるのがいたたまれずに間も無くして会場を飛び出した。一人で電車に乗って帰りながら自分は何をやっているのだろうと惨めな気持ちになりながらも、大森さんが一年前にごっちんさんのお見舞いやお通夜に来てくれたように、今日もああやって一周忌の集いに足を運んでくれたことの意味をずっと考えていた。

1月31日、新宿LOFTで大森さんと来来来チームとの2マンライブがあり、僕はごっちんさんの一周忌での出来事もあり勇気を振り絞って見に行くことにした。僕はなるべく目立たないように入り口付近からライブを眺めていた。クソカワPARTYツアーファイナル以来の大森さんのライブは貴重な来来来チームとの共演も観れてとても楽しかったが、そのライブ中に大森さんがステージからほとんど見えないであろう奥の方にいた僕を見つけて笑いかけてくれたような気がした。その時は嬉しい気持ちよりも素直に喜べない、喜んではいけないという気持ちが勝ってしまい、ライブが終わるやいなや足早に会場を立ち去ってしまったが、大森さんが投げかけてくれた一縷の光は確実に僕の心の中にある何かを響かせていて、勇気を出して見に行ってよかったと思った。

それから間も無くして今年もバスツアーが開催されることが発表され、僕はほとんど衝動的に参加することを決めた。恐る恐る昨年のバスツアーで一緒の部屋に泊まったメンバーへ声を掛けたところ、しゅんくんとおおたけおさんが快く応じてくれて、今回は参加できない人もいたので新たなメンバーとしてどうしたってさんを誘った。僕が気にし過ぎていただけなのかもしれないが、みんな僕がバスツアーに参加することを当たり前のように受け入れてくれて、変に気を使うこともなく以前と変わらずにやりとりしてくれたのが嬉しかった。

でもそれからバスツアー当日に至るまでは良いことばかりではなく、僕はバスツアー当日にいきなり大森さんと対面するのが恐かった気持ちもあって、3月12~14日にお笑い芸人のやさしいズ日本エレキテル連合、ダンサーのrikoさんとの3日連続の2マンライブ「大森靖子伝承3DAYS 2卍LIVE“自由字架”」の初日の公演を見に行った。僕はその日も目立たないように後ろの方で見ようと思っていたのだが、会場だった伝承ホールはどの席もステージからよく見える作りになっていて、居心地の悪さを感じながら後ろの方の席に座った。その日はやさしいズとの2マンライブで、先攻のやさしいズの漫才とコントはとても面白く、生で見るお笑いの魅力を知れた良い機会だった。そして後攻の大森さんのライブが始まってから、やはりステージの大森さんから自分のことがよく見えることが無性に気になってしまい、今すぐ消えてしまいたいような気持ちになっていた。ライブの途中で大森さんが客席に降りて観客一人一人と目を合わせながら歌っている場面があって、観客の中には涙を流している人もいた。その光景があまりに美しく、後ろの席から見ていた僕はそれをあの世から眺めているような感覚だった。僕は大森さんが作るこの美しい世界に触れてはいけない、僕はここにいてはいけない人間なのだという気持ちに囚われてしまい、ライブの終盤には一刻も早くライブが終わってほしいという気持ちにまでなっていた。ライブ前は1日目が良かったら2日目と3日目も見に行こうと思っていたが、わざわざライブを見てこんな気持ちになるならやめておこうと思い行くのを止めた。やっぱり僕はもう元通りになることはできなくて、いっそのこと大森さんが僕の顔も名前もすっかり忘れてしまえば、何も気にせずにまた大森さんのライブを見に行けるのだろうかなどと考えた。

バスツアーに参加することを決めてからのおよそ2ヶ月間、すっかり怯えて縮こまってしまったが何とか大森さんを信じようとする自分と、もはや自分を否定することでしか自分を保てない自分とが刻々と入れ替わりながら、バスツアーの日が永遠にやって来ないのではないかと思うほど長く苦しい日々を過ごした。

3月24日の女川復幸祭に行こうと決めたのも直前のことで、ちょうど気持ちが前向きになれていた頃だったのと、女川はアイドルグループのBiSが好きだった2013年に初めて訪れてから思い入れがある場所で、女川復幸祭が今回で最後になるということも知って、せっかくの機会だと思い遠征することにした。女川を訪れるのは1年半振りで、初めて訪れた6年前は町のいたるところにまだ東日本大震災の爪痕が生々しく残っていたが、今は見違えるほど立派な町に生まれ変わっている。前回訪れた時に見て感動した新しい女川駅の駅舎もすっかり町の顔として馴染んでいた。復幸祭には町外からも多くの人が来ている様子で、震災を知らないであろう小さな子供達もたくさん見かけて、もうそれだけの時が進んだのだと思った。僕には想像が及ばない経験をしたであろう女川の人達が今こうして笑顔で暮らしているのを見て、その逞しさに改めて尊敬の念を抱くとともに生きる気力を分けてもらうことができた。大森さんはライブ前にファンの人達と触れ合っていたようだったが、僕はまだ大森さんと対面する勇気が無かったのでステージで行われるライブを見るだけにした。大森さんはライブ中のMCで、過去は記憶を捏造して変えられるけど、未来は今を一個一個積み重ねるしかないから、未来の方が変えるのは難しい、頑張って一個一個積み重ねて未来を作っていきたいものですね、という話をしていて、震災を経験した人達へも向けた大森さんらしいMCだと思った。過去の記憶を変えることもなかなか難しいことだと思うし、僕なんかは良いことも悪いことも忘れられずに引きずってしまうタイプだけど、あえてそう言い切る大森さんの言葉に励まされた人もいたかもしれない。また、未来を変えるのは難しいというのは言い換えれば未来は変えられる可能性があるということであり、女川の人達は過去における未来である今を復興という確かな形で積み重ねてきたはずだから、大森さんの言葉に共感した人も多かったのではないかと思う。

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ライブが終わってからは容赦なく体温を奪う寒風に耐え切れず、すぐにちゃんあつさんとおおたけおさんと宮城の大森さんファンの人と一緒に女川を離れて仙台まで電車で戻った。宮城の大森さんファンの人におすすめの牛タンのお店を教えてもらい、ちゃんあつさんとおおたけおさんと一緒に晩御飯がてら食べに行った。牛タンを食べながらおおたけおさんとバスツアーの話をしている中で、おおたけおさんが大森さんから僕にバスツアーへ来てほしいというDMを受け取っていたことをこっそり教えてくれた。

バスツアーまで一週間を切った頃、夜遅くに仕事から帰ってくるとポストに大森さんのファンクラブから封筒が届いていた。早速封筒を開けてみるとバスツアーのしおりなどの書類一式が入っていた。しおりの表紙は大森さんの手描きのイラストで、内側のページにもいたるところに大森さんの直筆のコメントが書き込んであった。相変わらず大森さんはこういうしおり一つにも手を抜かない人なのだと再認識して、きっとバスツアーの内容も時間と手間を惜しまずに考えてくれているのだろうと思った。何より大森さん自身がとてもバスツアーを楽しみにしているのがしおりを読んで伝わってきて、僕もそれまでずっともやもやしていた気持ちが少し晴れて次第にバスツアーが楽しみになっていった。封筒にはバス車内でのトーク企画用のアンケートも入っていて、その中に「せいこちゃんに伝えたいこと」という項目があった。僕はその項目の回答欄に「ごめんなさい。そしてありがとうございます。」とだけ書いて、あとはバスツアー当日に伝えようと思った。

そしていよいよバスツアー当日、事前準備で必要だったプリクラをまだ撮れていなかったので、それを済ませてから集合場所へ向かったため到着がギリギリになってしまった。しゅんくんとどうしたってさんにお願いして買っておいてもらったパンを食べながら慌ただしくバスツアーがスタートした。バスツアーの1日目の夜に大森さんがホテルの各部屋を訪問するという企画があり、僕はその時に直接謝罪しようと思っていて、少なくともそれまでは大人しくしているつもりだった。バスがホテルへ向けて出発する前に、大森さんによるバスツアー開始の挨拶とオリジナルのティッシュとお菓子の配布が行われた。大森さんが前の席から順番にお菓子を配り始めて、僕は大森さんの目を見れないまま手を差し出してお菓子を受け取った時に、大森さんが急に「冷遇したの分かりますか?」と一部の人にしか分からないネタで僕をイジってきて、僕は「気付いてました」と答えたら大森さんは声を出して笑ってくれた。大森さんが大森さんなりのやり方で僕に気を遣ってくれたことが分かって、僕はまだ恐る恐るだが大森さんを信じてこのバスツアーを楽しもうと思った。行きのバスの車内では大森さんのカメラマンである二宮ユーキさん編集の秘蔵映像を流していて、僕が密かにリクエストしていた2つの映像を両方とも採用してくれていて嬉しかった。ホテル到着後は宴会の前に物販が行われ、大森さんから買ったものを直接手渡してもらうことができた。僕はこの時も大森さんを前にするとやはり萎縮してしまい、うまく話すことができなかった。バスツアーのメインイベントの一つである宴会ではプリクラ交換会や大森さんのカラオケライブなどが行われた。大森さんはカラオケライブで宴会会場を縦横無尽に動き回りながら歌っていて、ここ最近どんどん体のキレが増しているのと同時に激しい動きをしながら歌を歌うこともできるようになっているので、歌手として成熟しながら若返っているような感じだ。ライブも後半に差し掛かった頃、急にとある曲のイントロが流れて僕は戦慄を覚えた。僕はこの日ずっと借りてきた猫のような精神状態だったので、うまく切り替えることができずに席に座ったまま固まっていたところ、ふと目をやると近くに大森さんのマネージャーの山本さんと二宮さんが並んで立っていて、優しく微笑みながら僕を見てステージへ行くよう促してくれた。二人もきっと僕がしたことに対して良い気持ちはしなかったはずなのに、こうやって受け入れてくれる二人の懐の深さと思いやりにも背中を押されて、何とか席を立ってステージへ行くことができた。ただ案の定萎縮しっ放しで全く本領を発揮できず、せっかく貴重な時間を割いてくれたのに良いところを見せられなかったので、いつか必ずリベンジしたいと思う。

宴会が終わった後はバスツアー1日目の最後のイベントであるお部屋訪問に向けて、用意してきたネタの最後の準備に取り掛かった。僕たちの部屋では替え歌を披露するというネタを企画していて、バスツアー参加を決めた当初は僕が考えた構成と内容でそのまま本番に臨むつもりだったが、しゅんくんがダンスを踊れるということでわざわざ練習用の動画を撮って送ってくれたり、どうしたってさんも演出のアイデアを出してくれたり熱心に練習してきてくれたりして、おおたけおさんに至っては2曲分の映像を2か月も掛けて制作してくれた。みんなが積極的に関わろうとしてくれる気持ちだけでも嬉しかったのに、実際にはそれが自分たちとしても思いもよらないレベルの濃い内容のネタに仕上がったので、このメンバーに声を掛けてよかったと思った。特におおたけおさんにはこのネタに関してだけでなく色々と恩義があるので、言葉では言い表せないくらい感謝している。直前まで何度も繰り返し練習に励んだおかげで本番は無事にやり切ることができ、狙いどおり大森さんに「あと3回くらい見ないと把握できない」と言わしめることができた。ネタの替え歌の歌詞にはきちんとした思いを込めた部分もあるので、それも大森さんに伝わっていたら嬉しい。お部屋訪問については事前の告知で、面白かった部屋には翌日の朝に大森さんからモーニングコールをしてもらえることになっていて、結果として僕たちの部屋はモーニングコールをしてもらえる4部屋のうちの1部屋に選んでもらうことができた。

翌日の朝、予告どおり大森さんからモーニングコールが掛かってきて、一人ずつ順番に大森さんと話をした。僕がこの時に大森さんに伝えようと考えていたことは一つだけで、というより僕が今回のバスツアーに参加しようと思ったのも、お部屋訪問のネタを一生懸命考えたのも、全てその一つの想いを伝えるためだった。おおたけおさんから電話を替わってもらった僕に対して大森さんは「おはよ」と言ってくれて、僕は「何割かは温情で賞を頂いたような気がしますが」とわざと卑下するようなことを言って気を紛らせてから「僕がいかに大森さんのことを好きかが伝わったら何よりです」と一番言いたかったことを伝えた。僕は「ありがとうございました」と言ってしゅんくんに電話を替わろうとしたところで、大森さんが電話の向こうで泣いているのに気が付いた。僕は戸惑いつつも、その瞬間に大森さんがこの数ヶ月間どういう気持ちをしていたのか、僕のことをどう思ってくれていたのかを悟った。最後に電話を替わったしゅんくんは上手にフォローしてくれていて、どうしたってさんとおおたけおさんはなぜかもう一度電話を替わって大森さんと長々と話していて、とても面白かったし本当に最高のメンバーだと思った。その後みんなで朝食のバイキングを食べに行って、ふとスマホツイッターを見るとDMが来ていたので開くと大森さんからだった。そこには一言「私も大好きだよ」と書いてあった。僕はしばらく呆然としてしまい、返信しようかとも考えたが何も言葉が見つからなかった。

バスツアー2日目は大森さんと話す機会が何度かあったが、今朝起こった出来事の大きさをずっと飲み込めずにいて終始うまく会話することができなかった。昼食後のチェキの時にも何も言えない僕に対して大森さんは「じゃあ送って?送らなくてもいいよ笑」と気を遣ってくれた。結局その日はバスツアーが終わった後もDMを返すことができず、大森さんがコメント欄を開放したブログにコメントを送ることもできなかった。それからこの一週間、仕事の合間を縫ってこの4か月間のことを振り返って、ようやく今このブログを書いている。僕はクソカワPARTYツアーのファイナル以降、僕が大森さんを好きだという気持ちが伝わっていないであろうことが心残りで、ずっと地縛霊のようにこの世をさまよっている気分だった。だからこのバスツアーで僕が大森さんを好きだという気持ちを伝えることができたら、大森さんが「ちょうどいいところでやめられる人がハッピーエンドよ」と歌っていたように、それで終止符を打つことも考えていた。大森さんはブログで「いつか」と書いていたけど、僕は大森さんにそれが何年も先になるような時間軸で生きてほしくなかったから、僕のことはさっさとケリをつけて先に行ってほしいという思いもあった。あとはこのバスツアーに参加しただけで4か月前のことをチャラにできるとは思えなかったし、雨降って地固まるみたいなことにもしたくなかったし、そうしたら4か月前の自分に大森さんの気持ちを試すようなことをさせたことになるような気がするからでもあった。でも大森さんは僕の気持ちを涙を流して受け止めてくれて、さらにそれを大きな愛で返してくれて、僕があれこれ気にしていた体裁なんてどうでもいいよって言って抱きしめてくれた気がした。大森さんがきちんと僕の言葉に傷ついていたことも、それでも僕のことを笑わないでいてくれたことも分かって、そんな大森さんのことをもう裏切ったり傷つけたりしたくないと思ってしまったし、他界なんてできるはずないと思ってしまった。大森さんには僕のことを簡単に許さないでほしいという気持ちもあったけど、それも大森さんが決めることだし、何もかも独りよがりな考えだと気付いた。こうやって振り返ると僕は自分自身の妄想で作り上げた地獄に勝手に迷い込んで苦しみもがいていただけで、その間もずっと大森さんはすぐ近くで待っていてくれていたのだろう。僕が自分の目を自分の手で潰して彷徨っていた暗闇の中でも、大森さんが光となって僕を導いてくれたから、途中で何度も転んだりぶつかったりしてしまっても何とか元の場所に戻ってくることができた。おかげですっかり傷だらけになってしまって、回復するには少し時間がかかるかもしれないし一生消えない傷跡も残るかもしれないけど、この光を信じてついていこうと思えたのはこれまでも大森さんが僕にとっての光だったからだ。人間すぐには変われないから、まだ自分の中に自分のことを許せなかったり自分のことを嫌いだったりするもう一人の自分がいるし、またいつか拗れたり病んだりして大森さんを傷つけてしまう不安もあるけど、ここ数ヶ月かけて考えたのは僕はまず僕のやるべきことをやって人から必要とされる存在になろうということで、そうやって変わろうとする努力はしているから、前よりはもう少しだけうまくやれるはずだと思っている。1週間で書いたこのブログだけでは大森さんに対する気持ちは伝えきれないし、1年、10年、もしかすると一生かかるかもしれないけど、もしかするとこれが一生大森靖子ということなのかもしれない。

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あれから何歩も進んだけど何歩も戻って、3年間かけてやっと一歩前進した感じだ。でも今の僕はこれまでで一番大森さんのことを好きだと思う。だけど大森さんにはこれからもっと最高を更新してほしいし、この先も僕の光であり続けてほしいから、大森さんがまた美しい音楽を生み出す原動力に少しでもなれるように、これからも応援し続けていきたいと思う。

 

 

 

あーバスツアー行ってよかった!

 

親愛なる大森靖子さんへ

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3ヶ月に渡るクソカワPARTYツアーお疲れ様でした。今回のツアーでのライブは、僕が今まで見てきた大森さんのバンド形態のライブの中で間違いなく最高到達点だったと思います。ツアーが始まる前にリキッドルームで行われた生誕祭でのライブも昨年の生誕祭に負けず劣らず多幸感に溢れた素晴らしいもので、間もなく始まるクソカワPARTYツアーが俄然楽しみになったのですが、ツアー初日の高松公演で見たライブはそんな期待をも上回り衝撃的ですらありました。ライブ後にたまたま大森さんと会って感想を聞かれた時に開口一番「すごかった」としか言えないほどでした。新曲が多く盛り込まれたことによる新鮮さもあったと思いますが、この前の生誕祭から僅かの間に何があったのだろうと思うくらい見違えるほど進化したライブになっていたからです。ツアーを通じてセットリストは多少曲順の変更や曲の追加があったものの基本的に共通で、あとは大森さんがその日のノリや思いつきでセットリストに無い曲をやることもあり、それに巡り会えるのはツアーを追いかける醍醐味でもありました。共通のセットリストの流れについて少しだけ書くと、序盤は最新アルバムのクソカワPARTYに収録されている新曲(初日の高松公演と2日目の岡山公演のみ“REALITY MAGIC”→“GIRL’S GIRL”、3日目の広島公演からは“GIRL’S GIRL”)から始まり、観客に“進化する豚”の歌詞を歌わせる所謂ピントカバージョンの“Over The Party”、5日目の横浜公演から追加された“TOKYO BLACK HOLE”、大森さんの「クソカワのステージに上がってこい!」の煽りで始まる“ドグマ・マグマ”、大森さんの可愛らしい振付が加わってキュートさが増した“イミテーション・ガール”、大森さんが観客の方へ乗り出してきて一気に会場の一体感が高まる“非国民的ヒーロー”と、大森さんの中でもアッパーな曲を中心にしつつ、おっと思わせる新旧織り交ぜた選曲で冒頭から引き込まれる展開でした。そこから“7:77”、“ラストダンス”、“アメーバの恋”とクソカワPARTYからの新曲が続けて披露され、“7:77”は今回のツアーでお目見えしたゆるナナちゃんもステージに登場して一緒に踊るという視覚的に楽しい演出もありましたが、僕は個人的に特別な思い入れが強過ぎて何回見ても現実味が湧かず、ずっと夢を見ているようでした。“ラストダンス”は今回のツアーで聴いて一気に好きになった曲で、特に終盤で大森さんとギターのあーちゃんがお互い目を合わせずに、それでも呼応しながら交互に訴えかけるように歌う場面は、ヒリヒリとした鋭利な感情が演奏と共に段々と昂ぶっていくのが気持ち良く、今回のツアーの中でもお気に入りのシーンの一つでした。“アメーバの恋”はサビの最後を大森さんが全身を使って歌い上げる様が演歌のようでもあり、今回のツアーで聴き続けてすっかりクセになってしまいました。そうして全く中だるみを感じさせないままライブは後半に入り、“わたしみ”、“パーティードレス”、“マジックミラー”と続きますが、個人的にはここが最もドラマチックで、見る度に大森さんに対する様々な思いが胸に去来しました。それまでの激しいバンド演奏から一転して“わたしみ”はsugarbeansさんのピアノ伴奏のみ、“パーティードレス”は大森さんのギター弾語りだったことも、大森さんの孤独と陰をより一層際立たせて効果的だったと思いますが、特に“パーティードレス”では僕がまだ大森さんを知らなかった頃の、僕が知らないはずの大森さんの影すら感じさせました。大森さんはきっと僕の想像が及ばない経験や思いを繰り返しながら、自分の音楽を武器にここまで闘ってきたのだろうと思うと、大森さんのことをとても愛おしく感じました。そして大森さんがそんな私だからこそ歌うのだと言わんばかりにギターをかき鳴らして歌い始める“マジックミラー”は、再びバンドの演奏が加わってやがて圧巻の総力戦へと雪崩れ込み、大森さんとバンドが一体となって放つ音楽がまるで鏡に乱反射して世界を光で包み込んでしまうように感じるほど壮大なエネルギーに満ちていました。大森さんが自分の音楽を信じて戦って来た結果として今ではこんなにも頼もしい仲間を得ていることや、大森さんが“マジックミラー”に込めた思いが今でも全くブレておらず、ステージの上で前を見て歌う大森さんの眼差しには一点の曇りもないことにも感動して、何度見ても胸が熱くなるのを抑えられませんでした。それから間を置かずに再び大森さんがギターでイントロを弾いて始まる“VOID”は、今回のツアーで初めて披露されたバンドアレンジが実に素晴らしく、こちらも何度聴いても“マジックミラー”とはまた違った胸の高鳴りを止めることができませんでした。大森さんが峯田さんを意識して作っただけあってライブ本編では一番ストレートに会場のボルテージが上がり、横浜公演ではあまりの盛り上がりに大森さんがアドリブでもう一度演奏し始めて、それにピエール中野さんも乗っかってアドリブで高速テンポにしたのが見事にハマり、それがツアーの後半では通常のセットリストに組み込まれたのが、ツアーならではの出来事で面白いと思いました。そして大森さんが毎回MCで大森さんの深い部分から取り出した言葉を投げかけてから歌っていた“流星ヘブン”は、今年初めに亡くなった彼のことを想いながら聴いていました。この曲を聴くと、僕が初めて彼から病気のことを聞いたMUTEKIツアーの仙台公演の帰り道で、僕が「流星ヘブンの“君が他界したあとも 私の命は続く”の歌詞って私信じゃないですか?」とブラックジョークも込めて聞いたら、彼が少し考えてから「大森さんへ伝えたタイミングからするとあり得るけど、どうですかねぇ」といつもの飄々とした感じで答えていたことを思い出すからです。大森さんが彼と撮ったチェキと一緒に今回のツアーを回っていると知った時は素直に嬉しかったし、MUTEKIツアーで果たせなかった彼との全通を今回のツアーで叶えてくれたことに感謝しています。ライブ本編の最後はクソカワPARTYの最重要曲といえる“きもいかわ”と“死神”で、大森さんはこの曲を通して僕を僕自身と向き合わせてくれて、自分が何者なのかを分からせてくれました。“死神”の怒涛のクライマックスで本編は終了し、アンコールの“絶対彼女”では打って変わって観客も巻き込んでコールアンドレスポンスしたりジャンプしたりライザップしたりと、これまでの緊張が一気に解れる和気藹々とした雰囲気で、ラストの“ミッドナイト清純異性交遊”は大森さんも観客もパーティーが終わる寂しさを愛に変えてぶつけ合うように、どの公演でもグチャグチャになって盛り上がっていました。大森さんがその日その場にいる観客を一人残らず肯定してやろうと全員と目を合わせる勢いで全方位を凝視する気迫は、これまでに見たことがないものでした。それはまた大森さんの新たな進化の可能性を感じさせるものでもありました。さらにダブルアンコールで大森さんだけ再びステージに登場して歌う“REALITY MAGIC”は、初日の高松公演と2日目の岡山公演では一曲目だったのを、3日目の広島公演から一気に最後に持って来たことに驚きましたが、ファイナルの東京公演では私。さんとZOCのメンバーでもある藍染カレンさんがダンサーとして登場するサプライズもあり、大森さんの最後まで徹底的にやり尽くして楽しませ尽くそうとする姿勢に改めて感服しました。まだまだ公演毎に印象的だったシーンやMCについても書きたいところですが、今回は他に書きたいことがあるのでこの辺りにしておきます。これから書くこととは関係なく、クソカワPARTYツアーを通じて大森さんの音楽は多くの人を救う力を持っていると改めて思ったし、もっと大森さんの音楽が大森さんの音楽によって救われるべき人達へ届いてほしいと思います。それが今までもこれからも変わらない僕の希望です。

話は少し変わって、ツアーも折り返しに差し掛かろうという6公演目の仙台公演で、大森さんがMCで最近あったとある出来事について話し始め、その内容が解禁前の情報に関するものだったためマネージャーが制止したにも関わらず、大森さんが話すのを止めずに少し騒ついた雰囲気になるということがありました。これまでも大森さんがライブ中に愚痴や不満をこぼしたり少し荒れたりするのは珍しいことではなかったし、僕も十分慣れていたはずでしたが、今回のツアーではそれまで(少なくともステージ上では)大森さんがそういったモードに入ることもなく、むしろ今までで一番安定しているように感じていたので安心していた分、僕は不意を突かれて少しショックを受けてしまいました。以前のブログにも書きましたが、僕が思うファンのあり方は、その人が頑張ろうと思える原動力になれるように応援することで、今回のツアーでもそうありたいと思って僕なりの方法で応援し、少しは力になれているかもしれないという実感もありました。でも仙台公演での大森さんを見て、きっと大森さんのこういうところは一生変わらないし、僕がいくら応援しても大森さんを守ることはできないし助けることもできないから、僕には大森さんを救うことはできないのだという無力感を覚えました。その翌日の盛岡公演で大森さんは何事もなかったかのようにライブをしていましたが、僕は前日の出来事が頭から離れずに大森さんのことを勝手に心配してしまい、その日のライブを心から楽しむことができませんでした。ただ皮肉にもその次の金沢公演は、大森さんにとっては不本意なライブだったかもしれませんが、僕にとっては言葉で表すのが惜しいくらい楽しいライブでした。大森さんは声が万全の状態ではなく、それが大森さんの人としての弱さを感じさせた分、それを懸命に乗り越えようとする姿にとても感動したし、大森さんがMCで目を潤ませながら話していたことも、アンコールのミッドナイトで僕の手を握ってくれた時の大森さんの手の体温も忘れられません。個人的には今回のツアーの中でも特に印象深いライブになり、少しは大森さんを救ってあげることができたのかもしれないとも思いましたが、きっと神様が情けで最後にくれた思い出だったのだろうと思います。今年1月のMUTEKIツアーの名古屋公演の終盤、大森さんは“PINK”の途中で演奏を止めて10分近く心情を吐露していて、その中で大森さんは友達が一人もいないと言っていました。僕も友達と呼べる存在が一人もおらず、その時に大森さんは僕と一緒なのだなと思うとともに、もしかしたら似た者同士の僕は大森さんの友達か、友達でなくてもそれに限りなく近い存在になってあげられるかもしれないと本気で思いました。普通ファンがアーティストを救うとか、アーティストの友達になってあげたいなどと思うのはおこがましいことこの上ないですが、そう思えたのは大森さんだからこそでした。あの時期に僕が色々と頑張ったのは第一には彼のためではあったけど、大森さんのためでもあったし、延いては自分のためでもありました。ただ今思えばそれはやはり僕の傲慢だったし、思い上がりだったと思います。それから大森さんのために尽くそうとしてきて、これまでも一喜一憂を繰り返してきましたが、今回のツアーが進むにつれて日本でこれだけのライブをできるのは大森さんしかいないという確信を深めていく一方で、僕の中の大事にしていた何かが空気を吐き出す風船のように萎んでいくのを感じました。9月のツアー開始前のタイミングで大森さんが新たにアイドルグループZOCを始動し、大森さんの生誕祭でお披露目されました。ところが間もなくしてメンバーのFちゃんが脱退することになり、大森さんはそのことについてブログに書いたり実験室で話したりしていました。世の中には根本的な問題を抱えた関わってはいけない人間が一定数いて、それは遠目から見て明らかな場合と近づいて初めて分かる場合があり、今回はその後者のケースに遭遇してしまったということだと思います。それは様々な力を持った大森さんをもってしてもどうすることもできないし、大森さん以外の誰にもどうすることもできなかっただろうし、残酷かもしれないけどしょうがなかったのだろうと思います。最初は他人事のようにそんなことを考えていましたが、しばらくしてふと気付いたのは、僕もそっち側の人間だということでした。然るべきタイミングに然るべき人から然るべき愛を受けられなかった人間は、その後において、最悪の場合は死ぬまで、真に誰かを愛したり誰かから愛されることができない人生を送ることになります。それは病気や障害のように名前が付いたものではなく、傍目には分からない呪いのようなものです。僕はある時から自分がそういった呪いにかかった人間なのではないかと薄々感じていましたが、これまでそのことを見て見ぬふりをしてきちんと向き合ってきませんでした。それを初めて向き合わせてくれたのが大森さんの音楽でした。大森さんは昨年の半ば頃から、“draw (A) drow”、“わたしみ”、“流星ヘブン”、“死神”、“きもいかわ”といった自分自身と向き合った曲を作るようになりました。それに伴い大森さんはライブでの表現においても今まで以上に自分自身の感情をさらけ出すようになったと感じます。クソカワPARTYツアーでもセットリストの後半にこれらの曲が多く組み込まれており、今の大森さんにとってこれらの曲が重要な位置付けにあることが分かります。ツアーの序盤はライブ全体のあまりのスケールの大きさに圧倒されて気が付いていませんでしたが、ツアーが進むに従って次第に一曲一曲に意識を向けられるようになった時に、大森さんがそういった曲で自分をさらけ出せばさらけ出すほど、僕はそんな大森さんに応えられない自分に気が付きました。今回のツアーで“わたしみ”は、ライブ後半に向けて観客にドレスコードである“自分”を開かせる装置の役割を果たしていたと思っていますが、僕はこれまでも“わたしみ”で自分をさらけ出して歌う大森さんに対してうまく自分さらけ出すことができず、ずっと戸惑いを感じていました。今回のツアーでも相変わらず大森さんへ差し出す“自分”を見つけることができず、歯がゆい思いをしていました。その答えに初めて辿り着かせてくれたのが“きもいかわ”と“死神”でした。その答えとは、僕は自分をうまくさらけ出せないのではなく、さらけ出す自分を見つけられないのでもなく、そもそも僕の中には“自分”が存在しなかったということでした。お互いをさらけ出すということは愛し愛されることと似ていると思います。僕はある一定の時期までに愛し愛される経験をできなかったが故に愛し愛される方法を知らず、大森さんのとてつもなく大きな愛を目の前にすると、どうしていいか分からなくなってしまいます。大森さんが「愛し合おうぜ」と手を差し伸べてくれても、その手を握り返すことができません。それでも何度か手を伸ばそうと試みましたが、どうやっても腕を動かすことができませんでした。神経が麻痺しているというより、神経が既に死んでいるか、そもそも初めから神経なんて通っていなかったのだと思います。そのことに僕は絶望して、かといって満たされているふりはしたくないし、もしそんなことをしてもきっと大森さんには見抜かれてしまうので、ツアーの終盤は大森さんと向き合おうとすることやペンライトを灯すことが怖くなってしまいました。先ほど大森さんと僕は友達がいないという点で一緒だと書きましたが、「家族」や「友達」や「恋人」がいるかどうかということよりも「愛し愛されている」かどうかが大事で、大森さんにはそんな「愛し愛されている」関係がたくさんあるのを今までも今回のツアーでも見てきました。以前大森さんのラジオへの投稿で、大森さんの好きなところは自分と似ているところや共感できるところがたくさんあるところだという内容を送ったことがありますが、今になって大森さんと僕は愛し愛されることができる人間か否かという点で決定的に違うのだと思いました。自分が愛し愛されることができない人間だと分かった今、基本的に他人に興味を抱けないことも、すぐに相手に物足りなさを感じて飽きてしまうことも、自覚があるなしに関わらず人を平気で傷つけてしまうことも、人間関係をうまく築いたり続けたりできないことも、全て合点がいきます。大森さんがFちゃんについて書いたブログを改めて読むと、正に自分のことを言われているように感じます。Fちゃんが大森さんからのホールケーキを受け止めるための器を持っていなかったために、ケーキを抱えきれずに地面にベシャっと落としてしまうのだとしたら、僕はケーキを受け止めることはできるし、これまでクリームやスポンジは美味しく食べていたけれど、最後に食べたイチゴの味だけ感じることができなかったということです。その味覚障害は痛みや目立った不自由がある訳でもなく、今まではちょっとした違和感としてやり過ごしていましたが、今回のツアーを通じて大森さんの音楽に導いてもらったお陰でようやく、ここまで自分に欠けていたものをクリアに捉えることができました。だからこそ僕は大森さんを救うことはできないし、また大森さんも僕を救うことはできないのだという諦めも、これで終わりにしようという覚悟も潔くできます。大森さんのことを無自覚に苦しめたり傷付けたりする前に自分の危うさに気付くことができてよかったと思います。そういう意味では、音楽で僕を自分自身と向き合わせてくれて、自分が何者かを分からせてくれた大森さんは僕を救ってくれたといえます。でもやっぱり“きもいかわ”の“きみはきみというだけで愛されるべきからだなのだから”という歌詞をもっと素直に受け入れられる自分でありたかったし、大森さんが“ぼくはぼくを守るもの”という歌詞を変えて歌っていた“ぼくはきみを守るから”という言葉にもっと自分を委ねられる自分でありたかったです。実は今回のツアーが始まる前から、僕の中には漠然と僕は大森さんと距離を置いた方がいいのではないかという意識が芽生えていました。僕なりに色々と試行錯誤して、しばらく大森さんのライブを離れたところから見るようにした時期もありましたが、今回のツアーでは勇気を振り絞ってなるべく大森さんからも自分がよく見える前の方でライブを見るようにしていました。それは今回のツアーで大森さんのライブパフォーマンスの進化を目の当たりにして、それでもなお大森さんからは人間の感情を究極まで拡張して表現するためには自分自身がもっと人間であることを超越しなければならないとでも言いたげな焦りやもどかしさのようなものを感じて、ツアーの途中で自分の不完全さの正体に気付き始めてからも、今の大森さんなら投げつける右腕で僕の僕を探し出してくれるかもしれないという可能性を見出したからです。もう一つの理由は、もし今日が最後のライブになっても後悔しないようにしたいと思っていたからでもあります。これまで僕が現場に行き続けていたのも同じ理由からでしたが、今回のツアーで不思議とその思いが強かったのは、なんとなく終わりを意識していたからかもしれません。

大森さん現場には恩や借りがある人ばかりで、僕は僕のために何かしてくれた人へはしてくれた以上のものを返すという信念があり、出来るだけお返ししようと間際まで周りも巻き込んでバタバタと騒がしくしてしまいましたが、大森さんをはじめとして返し切れないままになってしまいました。だからせめてその恩や借りをいつまでも忘れないでいようと思います。僕が大森さん現場に行き始めて、まだ実験室に行ったこともなく、大森さんがまだ僕の顔も名前も認知していなかった頃から、僕は大森さんの音楽が好きだったのはもちろん、大森さんの一つ一つの物事に真摯に向き合う姿勢を見て自分も頑張ろうと勇気をもらっていました。僕は2015年の正月に大森さんへ送った年賀状に「僕は僕の仕事を頑張ります」と書きました。それは前年に大森さんがNHKMUSIC JAPANで卒業を間近に控えた道重さんと共演した時に、大森さんが道重さんに対して「私は私の仕事を頑張ります」と言っていたのにちなんだものでした。それから半年近く経って年賀状を出したこともすっかり忘れていた頃、ある日ポストを開けるとポツンと大森さんからの年賀状の返事が届いていました。このために作ったであろう大森さんの写真入りの葉書には、サインと共に「いつもありがとうございます。お互いまだまだがんばりましょー!」というメッセージが添えられていました。まだその頃には大森さんと数えるほどしか話したことがなかった僕にとっては返事がもらえただけでも十分嬉しかったのですが、その言葉が「私も頑張ります!」でも「頑張ってください!」でもなく「お互いまだまだがんばりましょー!」だったことに、私も頑張るからあなたにも頑張ってほしいし、あなたが頑張るために私も頑張りたいという意味が込められているように感じ、ファンを一人の対等な人間として捉えてくれるだけでなく、双方向の関係として考えてくれる懐の深さに感動して、僕はこれまで何度もこの言葉に励まされてきました。この年賀状の返事は今でも僕の部屋の“神棚”に大事に飾ってあります。ふとこのことを思い出したのは、あの頃から大森さんに抱いていた憧れと敬意は僕にとって本物であり尊いものだったので、それは大森さんとの距離に関係なく持ち続けられるものだと思ったからです。音楽なんてどうせ趣味なんだからもっと気楽に考えればいいのにと自分でも思いますが、どうしても僕は100か0でないと許せないみたいです。何かと卒なくこなせる方なのに、こういうところも器用に立ち回れたらもっと人生楽勝だったのだろうと思います。でもこの人生でなかったら大森さんに出会ってすらいなかったと思うので、そう考えると自分の人生はこれでよかったのだと前向きになれます。僕が大森さんの歌手としての才能と人としての優しさと誠実さを尊敬していることに変わりはないし、これまでその気持ちを天邪鬼な僕なりに色々な形で表現してきましたが、最後はきちんと自分の言葉で伝えるのがせめてもの誠意だと思ってこの文章を書きました。伝わっても伝わらなくても、何を思われても何も思われなくても構いません。これがクソカワPARTYツアーで僕が見つけた“自分”です。これは遺書でも辞世の句でもないし、これからも当たり前ではないけれど当たり前のように僕の人生は続いていきます。僕は僕の呪いとうまく折り合いをつけながら、僕のやるべきことをやって僕なりの幸せを見つけていきたいと思います。そして僕はこれからも大森さんの音楽が好きで聴き続けるし、大森さんがMUTEKIツアーの福岡公演の時に言っていたように音楽はゼロ距離なので、この先も音楽で励ましたり支えてくれたりしたら嬉しいです。僕も大森さんの活動を陰ながら応援し続けていきます。今まで僕には勿体ない程の十分過ぎる愛を与えて下さりありがとうございました。

youtu.be

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超歌手 大森靖子「クソカワPARTY」 TOUR 全セットリスト

2018/10/04 香川・高松DIME

2018/10/06 岡山・IMAGE(同セットリスト)

REALITY MAGIC

GIRL'S GIRL

Over The Party

ドグマ・マグマ

イミテーションガール

非国民的ヒーロー

7:77

ラストダンス

アメーバの恋

わたしみ

パーティードレス(ギター弾語り)

マジックミラー

VOID

流星ヘブン

きもいかわ 

死神

 

アンコール

絶対彼女 

ミッドナイト清純異性交遊

 

2018/10/07 広島・セカンドクラッチ

2018/10/14 福岡・BEAT STATION(同セットリスト)

GIRL'S GIRL

Over The Party

ドグマ・マグマ

イミテーションガール

非国民的ヒーロー

7:77

ラストダンス

アメーバの恋

わたしみ

パーティードレス(ギター弾語り)

マジックミラー

VOID

流星ヘブン

きもいかわ 

死神

 

アンコール

絶対彼女

ミッドナイト清純異性交遊

 

ダブルアンコール

REALITY MAGIC

 

2018/10/20 神奈川・F.A.D YOKOHAMA

GIRL'S GIRL

Over The Party

TOKYO BLACK HOLE

ドグマ・マグマ

イミテーションガール

非国民的ヒーロー

7:77

ラストダンス

アメーバの恋

わたしみ

パーティードレス(ギター弾語り)

マジックミラー

VOID

VOID (fast)

流星ヘブン

きもいかわ 

死神

 

アンコール

絶対彼女

ミッドナイト清純異性交遊

 

ダブルアンコール

REALITY MAGIC

 

2018/10/26 宮城・仙台darwin

GIRL'S GIRL

Over The Party

TOKYO BLACK HOLE

ドグマ・マグマ

イミテーションガール

非国民的ヒーロー

7:77

絶対彼女

ラストダンス

アメーバの恋

わたしみ

パーティードレス(ギター弾語り)

マジックミラー

VOID

流星ヘブン

きもいかわ 

死神

 

アンコール

アナログシンコペーション(ギター弾語り)

ミッドナイト清純異性交遊

 

ダブルアンコール

REALITY MAGIC

 

2018/10/27 岩手・the five morioka

GIRL'S GIRL

Over The Party

TOKYO BLACK HOLE

ドグマ・マグマ

イミテーションガール

非国民的ヒーロー

7:77

ラストダンス

アメーバの恋

わたしみ

パーティードレス(ギター弾語り)

マジックミラー

VOID

VOID (fast)

きゅるきゅる

流星ヘブン

きもいかわ 

死神

 

アンコール

絶対彼女

ミッドナイト清純異性交遊

 

ダブルアンコール

REALITY MAGIC

 

2018/11/07 石川・金沢AZ

2018/11/09 愛知・名古屋CLUB QUATTRO(同セットリスト)

GIRL'S GIRL

Over The Party

TOKYO BLACK HOLE

ドグマ・マグマ

イミテーションガール

非国民的ヒーロー

7:77

ラストダンス

アメーバの恋

わたしみ

パーティードレス(ギター弾語り)

マジックミラー

VOID

VOID (fast)

流星ヘブン

きもいかわ 

死神

 

アンコール

絶対彼女

ミッドナイト清純異性交遊

 

ダブルアンコール

REALITY MAGIC

 

2018/11/11 長野・松本 Sound Hall a.C

GIRL'S GIRL

Over The Party

TOKYO BLACK HOLE

ドグマ・マグマ

イミテーションガール

非国民的ヒーロー

7:77

ラストダンス

アメーバの恋

わたしみ

パーティードレス(ギター弾語り)

マジックミラー

VOID

VOID (fast)

Body Feels EXIT安室奈美恵

July 1st(浜崎あゆみ

絶対彼女

流星ヘブン

きもいかわ 

死神

 

アンコール

ポッキーラジオCMソング(ギター弾語り)

ミッドナイト清純異性交遊

ミッドナイト清純異性交遊

 

ダブルアンコール

REALITY MAGIC

 

2018/11/22 北海道・札幌PENNY LANE24

GIRL'S GIRL

Over The Party

TOKYO BLACK HOLE

ドグマ・マグマ

イミテーションガール

非国民的ヒーロー

7:77

ラストダンス

アメーバの恋

わたしみ

パーティードレス(ギター弾語り)

マジックミラー

VOID

VOID (fast)

流星ヘブン

きもいかわ 

死神

 

アンコール

絶対彼女

ミッドナイト清純異性交遊

 

ダブルアンコール

REALITY MAGIC

 

2018/12/07 大阪・心斎橋 BIGCAT

GIRL'S GIRL

Over The Party

TOKYO BLACK HOLE

ドグマ・マグマ

イミテーションガール

非国民的ヒーロー

7:77

ラストダンス

アメーバの恋

わたしみ

パーティードレス(ギター弾語り)

マジックミラー

VOID

VOID (fast)

呪いは水色(ギター弾語り、撮影可)

流星ヘブン

きもいかわ 

死神

 

アンコール

絶対彼女

ミッドナイト清純異性交遊

 

ダブルアンコール

REALITY MAGIC

 

2018/12/09 東京・昭和女子大学人見記念講堂

バンド①

GIRL'S GIRL

Over The Party

TOKYO BLACK HOLE

ドグマ・マグマ

イミテーションガール

非国民的ヒーロー

7:77

ラストダンス

アメーバの恋

わたしみ

パーティードレス(ギター弾語り)

マジックミラー

VOID

VOID (fast)

 

ギター弾語り(撮影可)

東京と今日

5000年後

SHINPIN

最終公演

 

バンド②

流星ヘブン

きもいかわ 

死神

 

アンコール

絶対彼女

ミッドナイト清純異性交遊

 

ダブルアンコール

REALITY MAGIC w/ 私。、藍染カレン