2020年の僕を構成する10曲

今年は3月以降にライブやフェスの延期・中止が相次ぎ、ブログのタイトルのとおり現場を生きがいとしている僕にとっては非常にタフな一年だったが、それでもこうして生き延びることができたのはやはり音楽のお陰だと思う。そんな2020年の僕を構成する10曲を挙げてみることにする。なお、順番はランキングではなく、概ね楽曲がリリースされた順となっている。

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1. GEZAN - 東京

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1月にリリースされたGEZANのアルバム『狂(KLUE)』の収録曲。『狂』は昨年のフジロックで頭のネジが吹き飛ぶような熱狂的で素晴らしいライブを見せてくれた彼らの最新作ということで期待はしていたが、その期待を遥かに上回る間違いなく2020年を代表する作品といえるほどの傑作だった。『狂』のリリースパーティーとしてDOMMUNEで配信されたライブも彼らの進化を見せつけるもので度胆を抜かれたが、それだけに4月のリキッドルームでのワンマンライブが延期(このブログの執筆時点では来年2月に開催予定)になったのは残念だった。ただし、その後に何度かオンラインでのライブを観ることができ、10月には静岡で開催されたFESTIVAL de FRUEで生のライブを観ることができたのは幸いだった。

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2. 踊ってばかりの国 - クロール

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2月にリリースされた踊ってばかりの国のアルバム『私は月には行かないだろう』の収録曲。今年ふとしたきっかけで昨年リリースのアルバム『光の中に』を聴いてから一気にのめり込み、特に今年の前半は『光の中に』と『私は月には行かないだろう』の2枚をヘビロテで聴いていた。GEZANと同様に4月のリキッドルームでのワンマンライブが延期になったが、7月に改めて抽選100人限定で開催されたライブに当選して現地に観に行くことができた。僕にとっては約半年振りの生のライブで、バンドもそんな僕を含めた観客の気持ちに応えるかのような気合いの入ったパフォーマンスを見せてくれて、生で触れる音楽の素晴らしさを再認識できた思い出深い現場だ。

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3. 折坂悠太 - 心

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3月に行われた配信ライブ『折坂悠太 単独配信 2020(((どうぞ)))』で初披露された楽曲(このブログの執筆時点では音源未リリース)。この配信ライブは当初TSUTAYA O-EASTで開催予定だったワンマンライブが中止となったことに伴い行われたもので、僕も行く予定だったので現場で観られないのは残念だったが、その配信ライブの最後に披露されたこの新曲“心”は曲名の通り僕の心に一筋の光を差し込んでくれるものだった。10月のFESTIVAL de FRUEで久々に生のライブも観ることができたが、15曲中7曲が“心”を含めた新曲で構成されたセットリストだったのには驚きと共に嬉しさを感じた。

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12月に彼もメンバーであるのろしレコードが代官山の晴れたら空に豆まいてで行ったワンマンライブを観に行った際に、彼がMCで「来年は色々作ろうと思っています」と発言していたので、来年の彼の活動に期待したい。

 

4. Qiezi Mabo - Secret Bass

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4月に配信でリリースされた、ZONEの“secret base 〜君がくれたもの〜”をQiezi Mabo(チェズマボ)流にカバーした楽曲。彼のことは踊ってばかりの国と同様に今年ふとしたきっかけで知ったのだが、文字通り覆面を被った謎多きアーティストである。

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彼はとにかく楽曲のセンスと中毒性が抜群で、僕は一時期ストリーミングで配信されている曲を聴くのに飽き足らず、YouTubeに上がっている非公式のライブ映像なども隈なく漁って観るほどハマった。5月に1stアルバム『Big Bonus』をオークション形式で販売するという面白い試みを行っていたのだが、その時はまだ彼を知ってから日が浅かったのでスルーしてしまったのが今となっては悔やまれる。彼の活動はマイペースで次のリリース予定も明らかではないが、今後また新しい動きがあるのを気長に待ちたい。

 

5. The 1975 - If You're Too Shy (Let Me Know)

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4月にシングルとして配信され、5月に発売された最新アルバム『Notes On A Conditional Form』にも収録されている楽曲。今年は9月のSUPERSONICで彼らのライブを観られる予定だったので開催が延期されてしまったのは残念だが、またいつか来日してくれるのを楽しみに待ちたいと思う。

 

6. 藤井風 - 帰ろう

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5月に発売されたアルバム『HELP EVER HURT NEVER』の収録曲。関ジャムでヒャダインが彼のことを「数十年に一人の天才」と紹介していたのをきっかけにアルバムを聴き込むようになり、その中でも“帰ろう”は僕の死生観に影響を与えたと言っても過言ではない一曲だ。『HELP EVER HURT NEVER』は彼自身の作曲や歌、ピアノの才能が存分に発揮されているのはもちろんだが、Yaffleという若き名プロデューサーが手掛けたことでGEZANの『狂』に並ぶ2020年を代表する一枚になったと思う。ただ1stアルバムがここまで隙の見当たらない最高傑作ともいえる作品だと、彼が今後これを超える音楽を生み出すことができるのか不安を覚えるほどであるが、まだ弱冠23歳の彼の今後の活動に期待したい。彼は10月に早くも日本武道館でのワンマンライブ『Fujii Kaze “NAN-NAN SHOW 2020” HELP EVER HURT NEVER』を行なったが、僕は運良く来場チケットが当選して生で観ることができた。彼の才能に直に触れることができたのは貴重な体験であり、そのライブの最後に天井から白い羽根が舞い落ちるドラマティックな演出と共に披露された“帰ろう”は実に感動的だった。

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7. 米津玄師 - カナリヤ 

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8月にリリースされたアルバム『STRAY SHEEP』の収録曲。『STRAY SHEEP』は“Lemon”をはじめとして“Flamingo”、“馬と鹿”、“パプリカ”、“感電”といったYouTubeでのMV再生回数が1億回を超えるような楽曲ばかりが収められたモンスターアルバムだが、そんなアルバムの中でも個人的には菅田将暉に提供した“まちがいさがし”のセルフカバーと“カナリア”の2曲が特に胸を打った。彼の凄さを一言で表すのは難しいが、彼がこの時代において圧倒的なポピュラリティを獲得していることは一つの希望だと思っている。

 

8. 蓮沼執太フルフィル - windandwindows

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8月にリリースされたアルバム『フルフォニー』のリード曲。今年は残念ながらオンラインでしかライブを観る機会がなかったが、家にいる時には蓮沼執太フィルの過去作も含めてよく聴いた。蓮沼執太は作る楽曲もそうだが彼自身もあまり感情を表に出すタイプではないものの、内に秘めた熱い信念を感じるというか、音楽の持つ力を信じているのを感じられるので好きなミュージシャンだ。

 

9. James Blake - Godspeed

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9月にシングルとしてリリースされ、10月にリリースされたカバー曲集『Covers』にも収録されている楽曲。James BlakeといえばJoni Mitchellの“A Case of You”のカバーが秀逸だが、このFrank Oceanの2016年リリースの『Blonde』に収録されている“Godspeed”のカバーもそれに比肩する出色の出来ではないかと思う。今年は精力的にシングル・EPをリリースしたり、自粛期間中には何度かインスタライブも行なったりしていて、閉塞感の強まる状況下で発信を続けてくれていたのは励みになった。

 

10. 大森靖子 - stolen worID

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11月に無観客配信で上演された舞台『月刊「根本宗子」第18号『もっとも大いなる愛へ』』の主題歌として書き下ろされ、12月に配信リリースもされた楽曲。この曲は構成を大まかに分けるとメロ→サビ→セリフ→サビ→メロ→セリフ→サビ→セリフという変則的な展開となっており、また歌詞も「ねぇ ねぇ」や「fantastic 愛」など一部を除いて同じ言葉が使用されておらず一つのストーリーのようになっており、それらが相まって予測のつかないドラマを観ているような緊張感を生んでいる。さらにそれが重ね録りされたボーカルやアコギ、ストリングス、ピアノの演奏と絶妙なバランスで調和して見事に一つの美しい作品として成立しており、彼女のアーティストとしての深化を感じさせる。12月にリリースされた最新アルバム『Kintsugi』はまだきちんと通して聴けていないのだが、来年の楽しみに取っておこうと思う。また、今年は彼女のライブを観る機会が例年と比べると少なかったが、個人的に印象深いライブは9月の長野県阿智村で行われたStarry Night Festival 2020の1日目と、11月のぴあアリーナMMで行われたBAYCAMPだった。来年も引き続き彼女の活動を見守っていきたいと思う。

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今年は今まで当たり前のように存在していた現場と図らずも距離を置かざるを得ない一年となったが、そうやって立ち止まったことによって音楽や現場が自分にとっていかにかけがえのないものだったかを再認識することができ、そうした重要な気付きを得られたことは長い目で見ると決して無駄ではなかったと考えている。今回挙げた楽曲やミュージシャン以外も含めて出会った全ての誠意ある音楽に感謝し、また心置きなく現場に行ける状況になった暁には足繁く通ったりグッズを買ったりするなど、僕にはそれぐらいしかできることはないが、自分なりに少しずつでも音楽に恩返ししていけたらと思う。