2017/09/30 大森靖子@30人限定弾語りライブ

シンガーソングライターで自称“超歌手”の大森靖子さんの30人限定という超貴重なライブに行ってきた。このライブは9月27日に発売されたアルバム「MUTEKI」の収録曲“流星ヘブン”のMVを使った企画で、GYAO!YouTubeに同曲のバージョンが異なるMVが公開され、間違い探しをして正解した人の中から抽選で30名をライブに招待するというものだ。


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僕は善は急げとばかりに企画が発表されたその日に間違い探しを終えて抽選への申込みを完了した。それからしばらく経った9月19日に当選のメールが届いた。普段のライブみたく当然のように当たってしまった気がしたのだが、その後に知り合いのファンの人達に聞いてみると顔見知りで当選したのは片手で数えても余る位の人数で、徐々に超レアなライブに当たったのだという実感が湧いた。ライブ当日は更に現実味を帯びて朝からずっと緊張しっ放しだった。

会場は紀尾井町にあるYahoo! JAPAN本社で、受付が開始する19時前には建物の2階にある受付へ到着した。受付を済ませてビジターカードを受け取り、19時半にエレベーターで17階にあるLODGEスタジオへ案内された。席は予め決められていたので、自分の番号の席を見つけて座り開演を待った。スタジオの中では「MUTEKI」がかかっており、縷縷夢兎の東佳苗さんが装飾を手掛けたステージが照明で幻想的にライトアップされていた。客席の方は薄暗く、普段のライブハウスとは違った雰囲気やスタッフが多かったこともあり、妙な緊張感に包まれているように感じた。

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この日のライブはGYAO!で生配信されており、そのアーカイブは後日見ることができるようになる予定とのこと。

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今回のブログではせっかくなので配信されていない時にスタジオで起こった出来事を中心に書きたいと思う。配信開始5分ほど前にギターを持った大森さんが登場し、ギターのチューニングをしながらリクエストを募った。しばらくの間誰も言い出さなかったので、僕は口火を切って「音楽を捨てよ!」と“音楽を捨てよ、そして音楽へ”をリクエストした。9月9日に川崎で開催されたBAYCAMPというフェスでのとある出来事をきっかけにしばらくネットを賑わせていた曲である。

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その騒動を経たことによって、災いが転じて福となったという表現は適切でないかもしれないが、その後に僕が見た9月16日の山形にある若宮寺で開催された寺フェスや9月18日の大森靖子生誕祭などのライブにおいて、大森さんは“音楽を捨てよ、そして音楽へ”のパフォーマンスをより力強く、沸騰する感情のマグマを爆発させて圧倒的なエネルギーを放つものに昇華させていたのである。

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従って、“音楽を捨てよ、そして音楽へ”は僕が今ライブで一番聴きたい曲であり、リクエストするチャンスがあったらこの曲にしようと決めていた。ここ最近のライブでは毎回歌っているので恐らくリクエストしなくても歌ってくれたとは思うが、「僕はこの曲を聴きたい」という気持ちを伝えたかったのである。リクエストを聞いた大森さんは「それは、やりましょう」と大げさに情感を込めた感じで言ったので観客からは笑いが起こった。「今やるしかないからね。大したヒットもしてないのに有名になって得だよね。ラッキー笑」と早速いつもの大森さん節を発揮していた。その後に最前列の男性が“秘めごと”をリクエストした。そして大森さんは最前列に座っていた別の男性のリュックから頭だけが出ているシュタイフを見つけて、「首だけ出てるのこわいね。皆ここに並べますか?」と言って観客が持っているクマのぬいぐるみを集めてナナちゃん(いつも大森さんのライブにいるマスコットキャラクター的な存在のクマ)が座っているテーブルに一緒に並べることになった。大森さんがお客さんから「メーカー違くてもいいですか?」と聞かれて「メーカーとかないから!」と返して笑いが起こったり、クマのぬいぐるみが並んでいるのを見て「めっちゃかわいい!」と喜んだりしていて、そのお陰でスタジオの緊張感が幾分和らいだように感じた。クマのぬいぐるみは美マネ(大森さんの女性マネージャーで美人なことからそう呼ばれている)が並べたのだが、大森さんが「佳苗ちゃんとは違う美的センスを感じる」と評していた。

配信が始まる直前に大森さんが「配信って始めから見る人より途中から見る人の方が多いのかな?最初から見るか。じゃあ最初に“音楽を捨てよ”やりますね」と言って、さらに本番1分前になってふと思いついたように「“音楽は魔法ではない”の合唱から始まってもらっていいですか?」と言い、配信開始10秒前くらいから観客に“音楽は魔法ではない”の合唱をさせ、ライブがスタートした。この日のライブのセットリストは以下のとおり。

 

音楽を捨てよ、そして音楽へ

TOKYO BLACK HOLE

みっくしゅじゅーちゅ

非国民的ヒーロー

ミッドナイト清純異性交遊

呪いは水色

オリオン座

君に届くな

あまい

東京秘めごと

少女漫画少年漫画

ハンドメイドホーム

アナログシンコペーション

マジックミラー

 

<配信終了後>

剃刀ガール

 

アンコール

Over The Party

さっちゃんのセクシーカレー

ゆずれない願い田村直美

謡曲

 

“音楽を捨てよ、そして音楽へ”から“マジックミラー”までのライブやMCの様子はアーカイブを見てもらえればと思うが、途中の“ミッドナイト清純異性交遊”と“呪いは水色”の間に“流星ヘブン”のMVを流す時間があり、その間にも大森さんはスタジオで色々な話をしてくれていた。“ミッドナイト清純異性交遊”の後にVTR振りをしてMVが始まった瞬間に大森さんは「いぇーいオフライン!」と言って観客を笑わせてから、「今日嫌なことがあった人いますか?誰もいなかったらマネージャーに振るけど、あの人エピソード強すぎるから控えたいんですけど」とか「でも今日は宣伝のライブだからこんな大森靖子効果があった、人生が良くなったっていうのにしようかな」など、この日この場所にいる30人の観客とリアルタイムでライブを作り上げようとしていて、その空間を自分がその30人の中の1人として共有していることに得も言われぬ高揚感を感じた。と思いきや急に話が逸れて、某雑誌でとあるバンドが「客と共依存する関係マジ無理」「それで曲を作るのは情けない」と言っていたのを見てうるせー!それでも好きなことはやれるんじゃー!と思ったという話(そのバンドの音楽は良いけどね、と後でフォローを入れていた)や、宇多田ヒカルさんのインタビューに自分のブログみたいな普通の人間っぽいところが書いてあって好感を持ったという話をしたりして、なんとも“ライブ”感のある時間だった。スタッフの人がもうすぐMVが終わることを告げると、大森さんは「ここから始めようかな」と言って客席の中央に設置されたマイクの所へ来た。その間にも「後ろの方の人、見えなかったら椅子ずらしてもらっていいですからね」と気配りをしたり、良いことがあったエピソードを話してくれたお客さんにピックをプレゼントしたりと配信再開ぎりぎりまで様々なやりとりがあった。

配信が再開した後はノンストップでライブが続き、“マジックミラー”で配信が終了すると「はい、配信終了です。ありがとうございました!」と言ってすぐに配信中に最前列の女性からリクエストがあった“剃刀ガール”を歌い始めた。僕もこの曲が好きで、それもライブでは滅多に聴けない曲なので、それをこの少人数で聴けるというシチュエーションを目の当たりにして今日一日でどれだけの運を使い果たしてしまったのだろうと思った。歌い終えると大森さんは自ら手拍子をして「アンコール、アンコール」と言い始め、それにつられて観客が数回アンコールを言ったところで「アンコールありがとうございます!」と言ってすぐさまアンコールが始まった。ひとしきりお客さんや美マネとのやりとりがあり“歌謡曲”と“Over The Party”をやることになった。最初に“Over The Party”をピントカ仕様(大森さんが以前組んでいたバンドである大森靖子 & THEピンクトカレフの“進化する豚”の歌詞をお客さんに歌わせるバージョン)で歌った。歌い終えると大森さんが突然「この中に向井秀徳さんはいらっしゃいませんか?向井秀徳さんっぽくセクシーカレーを歌える人いますか?」と言い出した。向井秀徳さんは音楽ファンにはもはや説明不要だが、2002年に解散したNUMBER GIRLという伝説的なバンドの中心人物で、今はZAZEN BOYSというバンドやKIMONOSというデュオ、そしてソロで活動を続けている、僕も大ファンのミュージシャンだ。

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この日のライブの数日前にその向井秀徳さんがライブで大森さんの“さっちゃんのセクシーカレー”をカバーしたという情報がネットに流れていた。

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大森さんは「ちょっと考えてみたんですけど、私の思う向井秀徳さんが歌っているさっちゃんのセクシーカレーやりますね。サビだけ。AメロBメロは普通に歌って、サビが向井秀徳さんになります」と言って演奏を始めた。とても文字では表現し切れないのだが、サビに入るとギターをガッと弾きながら力強く「セッ!セッ!」と何度か繰り返してから「セックゥシーカーレィー!ハッ!」といった感じで、多少誇張した感じの向井秀徳さんのモノマネをしながら歌っていた。似ているかどうかはともかく勢いがあって超絶面白く、僕はこの日一番笑ったと思う。

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そして最後の曲を歌おうとした時になかなかメロディーが出て来ず、「やーわーらーかー…いー未来をー目指してー♪」と田村直美さんの“ゆずれない願い”になってしまったりしながら、きちんと軌道修正して“歌謡曲”を歌い、配信終了後の30人のためだけのライブは10分ほどで終了した。

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最後にステージで集合写真を撮ってからスタジオを後にし、再びエレベーターで下まで案内された。名残惜しいのもあって知り合いのファンの人達と建物の下でしばらくダラダラと話をしてから家路に着いた。ここには書かなかったが色々と思いがけない出来事もあり、ただただ夢のような時間だった。

最近これからの自分の人生と大森靖子という人の存在との関係性を考えることがある。今回の30人限定ライブは、そのことに少なからず影響を及ぼす特別な時間となったのは間違いない。