ブログ移行のお知らせ

ご無沙汰しております。この度ブログをnoteに移行することにしました。

2023年春にスペイン巡礼を計画しており、noteではその巡礼記を書いていく予定です。

https://note.com/bryter_layter

もしご興味があればnoteの方でも引き続きよろしくお願いします。

 

なお、このブログは一時的に非公開にしていましたが、私と私の大事な二人の友人が生きた証の一部として、公開し直して残しておくことにしました。

今まで私の拙い記事を読んでくださった全ての方に感謝を申し上げます。

本当にありがとうございました。

2020年の僕を構成する10曲

今年は3月以降にライブやフェスの延期・中止が相次ぎ、ブログのタイトルのとおり現場を生きがいとしている僕にとっては非常にタフな一年だったが、それでもこうして生き延びることができたのはやはり音楽のお陰だと思う。そんな2020年の僕を構成する10曲を挙げてみることにする。なお、順番はランキングではなく、概ね楽曲がリリースされた順となっている。

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1. GEZAN - 東京

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1月にリリースされたGEZANのアルバム『狂(KLUE)』の収録曲。『狂』は昨年のフジロックで頭のネジが吹き飛ぶような熱狂的で素晴らしいライブを見せてくれた彼らの最新作ということで期待はしていたが、その期待を遥かに上回る間違いなく2020年を代表する作品といえるほどの傑作だった。『狂』のリリースパーティーとしてDOMMUNEで配信されたライブも彼らの進化を見せつけるもので度胆を抜かれたが、それだけに4月のリキッドルームでのワンマンライブが延期(このブログの執筆時点では来年2月に開催予定)になったのは残念だった。ただし、その後に何度かオンラインでのライブを観ることができ、10月には静岡で開催されたFESTIVAL de FRUEで生のライブを観ることができたのは幸いだった。

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2. 踊ってばかりの国 - クロール

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2月にリリースされた踊ってばかりの国のアルバム『私は月には行かないだろう』の収録曲。今年ふとしたきっかけで昨年リリースのアルバム『光の中に』を聴いてから一気にのめり込み、特に今年の前半は『光の中に』と『私は月には行かないだろう』の2枚をヘビロテで聴いていた。GEZANと同様に4月のリキッドルームでのワンマンライブが延期になったが、7月に改めて抽選100人限定で開催されたライブに当選して現地に観に行くことができた。僕にとっては約半年振りの生のライブで、バンドもそんな僕を含めた観客の気持ちに応えるかのような気合いの入ったパフォーマンスを見せてくれて、生で触れる音楽の素晴らしさを再認識できた思い出深い現場だ。

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3. 折坂悠太 - 心

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3月に行われた配信ライブ『折坂悠太 単独配信 2020(((どうぞ)))』で初披露された楽曲(このブログの執筆時点では音源未リリース)。この配信ライブは当初TSUTAYA O-EASTで開催予定だったワンマンライブが中止となったことに伴い行われたもので、僕も行く予定だったので現場で観られないのは残念だったが、その配信ライブの最後に披露されたこの新曲“心”は曲名の通り僕の心に一筋の光を差し込んでくれるものだった。10月のFESTIVAL de FRUEで久々に生のライブも観ることができたが、15曲中7曲が“心”を含めた新曲で構成されたセットリストだったのには驚きと共に嬉しさを感じた。

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12月に彼もメンバーであるのろしレコードが代官山の晴れたら空に豆まいてで行ったワンマンライブを観に行った際に、彼がMCで「来年は色々作ろうと思っています」と発言していたので、来年の彼の活動に期待したい。

 

4. Qiezi Mabo - Secret Bass

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4月に配信でリリースされた、ZONEの“secret base 〜君がくれたもの〜”をQiezi Mabo(チェズマボ)流にカバーした楽曲。彼のことは踊ってばかりの国と同様に今年ふとしたきっかけで知ったのだが、文字通り覆面を被った謎多きアーティストである。

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彼はとにかく楽曲のセンスと中毒性が抜群で、僕は一時期ストリーミングで配信されている曲を聴くのに飽き足らず、YouTubeに上がっている非公式のライブ映像なども隈なく漁って観るほどハマった。5月に1stアルバム『Big Bonus』をオークション形式で販売するという面白い試みを行っていたのだが、その時はまだ彼を知ってから日が浅かったのでスルーしてしまったのが今となっては悔やまれる。彼の活動はマイペースで次のリリース予定も明らかではないが、今後また新しい動きがあるのを気長に待ちたい。

 

5. The 1975 - If You're Too Shy (Let Me Know)

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4月にシングルとして配信され、5月に発売された最新アルバム『Notes On A Conditional Form』にも収録されている楽曲。今年は9月のSUPERSONICで彼らのライブを観られる予定だったので開催が延期されてしまったのは残念だが、またいつか来日してくれるのを楽しみに待ちたいと思う。

 

6. 藤井風 - 帰ろう

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5月に発売されたアルバム『HELP EVER HURT NEVER』の収録曲。関ジャムでヒャダインが彼のことを「数十年に一人の天才」と紹介していたのをきっかけにアルバムを聴き込むようになり、その中でも“帰ろう”は僕の死生観に影響を与えたと言っても過言ではない一曲だ。『HELP EVER HURT NEVER』は彼自身の作曲や歌、ピアノの才能が存分に発揮されているのはもちろんだが、Yaffleという若き名プロデューサーが手掛けたことでGEZANの『狂』に並ぶ2020年を代表する一枚になったと思う。ただ1stアルバムがここまで隙の見当たらない最高傑作ともいえる作品だと、彼が今後これを超える音楽を生み出すことができるのか不安を覚えるほどであるが、まだ弱冠23歳の彼の今後の活動に期待したい。彼は10月に早くも日本武道館でのワンマンライブ『Fujii Kaze “NAN-NAN SHOW 2020” HELP EVER HURT NEVER』を行なったが、僕は運良く来場チケットが当選して生で観ることができた。彼の才能に直に触れることができたのは貴重な体験であり、そのライブの最後に天井から白い羽根が舞い落ちるドラマティックな演出と共に披露された“帰ろう”は実に感動的だった。

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7. 米津玄師 - カナリヤ 

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8月にリリースされたアルバム『STRAY SHEEP』の収録曲。『STRAY SHEEP』は“Lemon”をはじめとして“Flamingo”、“馬と鹿”、“パプリカ”、“感電”といったYouTubeでのMV再生回数が1億回を超えるような楽曲ばかりが収められたモンスターアルバムだが、そんなアルバムの中でも個人的には菅田将暉に提供した“まちがいさがし”のセルフカバーと“カナリア”の2曲が特に胸を打った。彼の凄さを一言で表すのは難しいが、彼がこの時代において圧倒的なポピュラリティを獲得していることは一つの希望だと思っている。

 

8. 蓮沼執太フルフィル - windandwindows

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8月にリリースされたアルバム『フルフォニー』のリード曲。今年は残念ながらオンラインでしかライブを観る機会がなかったが、家にいる時には蓮沼執太フィルの過去作も含めてよく聴いた。蓮沼執太は作る楽曲もそうだが彼自身もあまり感情を表に出すタイプではないものの、内に秘めた熱い信念を感じるというか、音楽の持つ力を信じているのを感じられるので好きなミュージシャンだ。

 

9. James Blake - Godspeed

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9月にシングルとしてリリースされ、10月にリリースされたカバー曲集『Covers』にも収録されている楽曲。James BlakeといえばJoni Mitchellの“A Case of You”のカバーが秀逸だが、このFrank Oceanの2016年リリースの『Blonde』に収録されている“Godspeed”のカバーもそれに比肩する出色の出来ではないかと思う。今年は精力的にシングル・EPをリリースしたり、自粛期間中には何度かインスタライブも行なったりしていて、閉塞感の強まる状況下で発信を続けてくれていたのは励みになった。

 

10. 大森靖子 - stolen worID

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11月に無観客配信で上演された舞台『月刊「根本宗子」第18号『もっとも大いなる愛へ』』の主題歌として書き下ろされ、12月に配信リリースもされた楽曲。この曲は構成を大まかに分けるとメロ→サビ→セリフ→サビ→メロ→セリフ→サビ→セリフという変則的な展開となっており、また歌詞も「ねぇ ねぇ」や「fantastic 愛」など一部を除いて同じ言葉が使用されておらず一つのストーリーのようになっており、それらが相まって予測のつかないドラマを観ているような緊張感を生んでいる。さらにそれが重ね録りされたボーカルやアコギ、ストリングス、ピアノの演奏と絶妙なバランスで調和して見事に一つの美しい作品として成立しており、彼女のアーティストとしての深化を感じさせる。12月にリリースされた最新アルバム『Kintsugi』はまだきちんと通して聴けていないのだが、来年の楽しみに取っておこうと思う。また、今年は彼女のライブを観る機会が例年と比べると少なかったが、個人的に印象深いライブは9月の長野県阿智村で行われたStarry Night Festival 2020の1日目と、11月のぴあアリーナMMで行われたBAYCAMPだった。来年も引き続き彼女の活動を見守っていきたいと思う。

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今年は今まで当たり前のように存在していた現場と図らずも距離を置かざるを得ない一年となったが、そうやって立ち止まったことによって音楽や現場が自分にとっていかにかけがえのないものだったかを再認識することができ、そうした重要な気付きを得られたことは長い目で見ると決して無駄ではなかったと考えている。今回挙げた楽曲やミュージシャン以外も含めて出会った全ての誠意ある音楽に感謝し、また心置きなく現場に行ける状況になった暁には足繁く通ったりグッズを買ったりするなど、僕にはそれぐらいしかできることはないが、自分なりに少しずつでも音楽に恩返ししていけたらと思う。

大好きなあなたへ

2020年12月4日の金曜日、その日はコロナ禍ですっかり慣れた在宅勤務で、朝から立て続けにリモート会議があり慌ただしかった。昼頃にようやく一息つくことができたので休憩がてらTwitterを開くと、まずZOCのメンバー脱退の情報が目に飛び込んできた。そして、その後すぐに大森靖子さんの「青柳カヲルについてのお知らせ」というLINEブログのリンクが貼られたツイートが流れてきた。

すぐに嫌な予感はしたが意を決してリンクを開くと「青柳カヲルが亡くなりました」という文章が目に入った。スクロールしてブログの続きを見たが、その後の内容はほとんど頭に入ってこなかった。あまりに唐突過ぎて、ショックを受けるのを通り越して冷静な怒りのような感情が湧いてきた。真っ先に思ったのは「バカだな」ということだった。それと同時に、彼女とはもう2年近くまともに顔を合わせていなかったので、まるでゲームの中で起こったイベントの話でもされているようで、とにかく現実味がなかった。

彼女と初めて言葉を交わしたのは確か2017年9月のBAYCAMPの時(その前にも一度、大森さんの実験室というファンクラブイベントで見かけたことがあった気がする)で、その時は彼女に大森さんの物販の場所か何かを尋ねられて教えてあげたという程度の会話だった。その後にTwitterを見ていると青柳カヲルさんがBAYCAMPに行っていたと思われるツイートをしていて、物販の場所を尋ねてきた彼女は一人で来ている様子だったこともあり、直感的にあの人が青柳カヲルさんだろうか、と思った。その翌月に渋谷のWOMBで開催されたTOKO-NATSUというイベントに行った時に、そのイベントのトリだった大森さんのライブが終わって帰ろうとした時、フロアの後方で談笑している彼女を見つけた。彼女はごっちんさんと二人で話していて、僕はそこに加わって彼女に自己紹介をすると「知ってますよ」と笑いながら言われてビックリしたのを覚えている。その流れで僕が「もしかして青柳さんですか?」と単刀直入に聞くと、彼女はその場では答えてくれなかったが、解散した後に「当たり」とDMで教えてくれた。彼女は関係者以外に対しては別の名前を名乗っていて、その時に彼女のことを青柳カヲルだと知っている人は僕ともう一人だけだと言っていた。それから大森さんの現場で一緒になった時などに二人でご飯を食べたりするようになり、次第に仲良くなっていった。この1,2年はどうだったか知らないが、僕とよくご飯を食べに行っていた時の彼女は大森さんへのガチ恋を拗らせていて、おっさんヲタは愛されていて羨ましいとやきもちを妬いていた。僕から見ると彼女は誰よりも大森さんから信頼されているのに、彼女自身は全然自信がなくて、僕はいつもそんな彼女の話を面倒くさくて面白いなぁと思いながら聞いていた。他にも彼女は表には出さない色々な悩みを抱えていて、僕はそんな彼女の器用に生きられないところをひっくるめて好きだったし、彼女の絵の才能は別として、彼女の人間としての根元にあるものが僕と似ていると感じていたので、一緒にいて居心地が良かった。僕が自暴自棄になって塞ぎ込んでいた時にも、彼女には一番心を許していたし、彼女も頻繁に会って話をしてくれた。彼女はいつでも優しくて、それは彼女の生来の性格であったと思うが、誰かを傷つけてしまうことや誰かに傷つけられることへの恐れや怯えの裏返しでもあったのではないかと思う。それなのに僕は自分自身の卑屈さと未熟さのせいで彼女を傷つける行動を取ってしまい、それからお互いに連絡を取ることはなくなった。

その後も彼女は大森さんのために絵を描き続けていて、一方の僕はしばらくの間、彼女の絵を見かける度に心がチクリと痛むように感じて正視することができなくなっていた。Twitterの青柳カヲルのアカウントもミュートして、彼女のツイートを一切目に触れないようにしていたほどだった。それでも僕は密かに、いつか彼女にきちんと謝って、また友達として関係を築き直したいという想いを抱いていた。そのためには、まず僕は僕の仕事を頑張って、もっと自分で自分のことを認められるようになって、胸を張って彼女に会えるように成長しないといけないと思っていた。そんな折、今年のコロナ禍は自分にとって本当に大事なものが何かを見つめ直す機会になり、幸か不幸かライブに行く機会が減った分、仕事に専念できるようになったことで最近は大きな仕事も任せてもらえるようになって、ようやく人間未満から人間並み位にはなれてきたのではないかと思えていたところだった。たまに彼女の絵が目に触れることがあっても以前ほど心が騒ぐことはなくなってきたし、タイミングが合えば彼女と話したいとまで思えるようになっていた。だから彼女が亡くなったことを知って、急に目標を失ってしまったように感じてしまい、その日の午後に仕事をしながら「何のために頑張ってるんだっけ」と不意に虚しくなる瞬間があった。

「いつか」「タイミングが合えば」のまま何も果たせなかった僕は、2年近くも会っていない彼女の死を絶対に今さら自分のせいだとか、自分なら何とかできたかもしれないとか思いたくないし、だから涙も流したくないし、悼むことすらしたくないと思った。でも最後に彼女から「いつか」じゃ遅いということを教わって、自己評価が低いくせにいつも天邪鬼で、なかなか素直に行動できない自分をなるべく変えていきたいと思った。あと、あれだけ一緒にいたはずなのに彼女と撮った写真が一枚もないことに気付いて、ごっちんさんの時も辛うじて他の人が撮った写真が数枚残っていただけだったので、写真嫌いなところもいい加減に直したいと思った。その日は気を紛らわせるように夜遅くまで仕事をして、それからABEMAのZOC特番を見た。そこで大森さんにとっても大森さんのファンにとっても長年の念願で待ちに待ったであろう日本武道館でのライブが発表されたのだが、それも夢の続きで起こっている出来事のように感じて実感が湧かなかった。

一夜明けて、時々じっと体が固まって動かなくなってしまうのを奮い立たせて活動しながら、ふと昨日あまり内容を飲み込むことができなかった大森さんのブログを読み返した。すると丁寧に綴られた文章へ込められた大森さんの想いの質量を感じて、初めてボロボロと涙が溢れ出た。「あーあ、結局泣いちゃったよ」と思った。その後も彼女との思い出が断片的に頭に思い浮かぶ度に涙が出てきて、ある時に僕が普段はそんなことを言わないのに思い切って「〇〇さんと会えてよかったです」とLINEで送ったら、彼女が「私もナガイさんに会えてよかったです」と返してくれたことを思い出した時には、号泣して涙と鼻水が止まらなくなってしまった。まだ心のどこかで彼女の死を受け入れられていないのに、次から次へと涙が出てくるのが不思議だった。

それで僕は僕の知っている彼女のことや彼女への想いを書き留めておきたいと思い立って、今このブログを書いている。ごっちんさんの時にこうした追悼ブログを書くのはもうこりごりだと思ったけど、僕は大事な人と共有したかげがえのない時間や気持ちがなかったことになってしまいそうなのが恐くて、書かずにはいられなくなってしまう。つくづく女々しくて湿っぽい人間だと思う。きっとまた好きな人が死んだら、僕はこうやって好き放題にあることないこと書いてしまいそうなので、もう誰も死なないでほしい。僕はあなたを助けてあげることはできないから、せめて自分の命は自分で、全力で守ってほしい。

いつの日か僕がそっちに行く時は、必ず最初にごめんなさいを言いに行きます。もしそれで許してもらえたら、またお互いの拗らせ話をしながら笑い合いたいです。でも僕はこっちの世界でようやく夢や希望を抱けるようになってきたばかりだし、これから大森さんが美しい世界を作るのを見届けないといけないし、まだまだ生き尽くし足りないと思っているので、あと何十年か後まで待っていてください。それまでしばらくの間、さようなら。ゆっくり休んでください。

P.S. いつか再びあなたと向き合えるようになったら飾ろうと思って仕舞っていた絵を、「いつか」じゃ遅いから、今日から飾ることにしました。僕の誕生日にオークションに出品されていた絵です。

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誕生日といえば、つっち〜であなたを含めた何人かで僕の誕生日を祝ってくれたこともありました。あの時は花束をもらった時の藍染カレンさんみたいなリアクションしか出来なかった気がするけど、とても嬉しかったです。

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他にもたくさん特別な時間を共有してくれて本当にありがとう。今日の朝は空気が冷たくて、正月の初詣に付き合ってくれた日のことを思い出しました。

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いつも優しかったあなたのこと、勝手かもしれないけれど、ずっと大好きです。

2020/06/21 大森靖子@LIVE HUMAN 2020

新型コロナウイルス感染症の影響による緊急事態宣言も解除され、徐々に平常を取り戻しつつある、というよりは多少無理にでも平常を取り戻していかなければならないようなムードが漂う一方、僕が今年の2月頃まで十数年以上欠かさず、多い時には週に何回も通っていたライブに再び行けるようになるのは、もう少し先の話になりそうだ。この4年間で最も数多く通うようになった大森靖子さんのライブも、今年の1月24日、25日の47都道府県ツアーの鹿児島、宮崎公演に行ったのが最後だ。そんな大森さんの久しぶりのライブを、配信ではあるが6月21日の「LIVE HUMAN 2020」で観た。

  「LIVE HUMAN 2020」は6月20日、21日の2日間に渡って総勢24組のアーティストが出演するオンラインフェスで、ABEMAで配信が行われた。そのうち2日目である21日に、大森さんを始めとするSIRUP、NOT WONK、tricot、SKY-HI、東京スカパラダイスオーケストラといった12組のアーティストが出演した。視聴料金は各日3,000円で、最初は少し高いかな?と思ったが、見終わってみると決して高くないどころか、配信ならではの一定期間アーカイブを見られる点まで含めれば相当割安なのではないかと思った。

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当日は昨年リリースされたアルバム『FEEL GOOD』で気になっていたトップバッターのSIRUPから観たのだが、SIRUPが「大きい声を出すのが久しぶり」と嬉しそうに言っていたのが印象的で、ミュージシャンも自分達と同じ人間なのだなと当たり前のことを思ったりした。また、配信全体を通してサッシャさんとあっこゴリラさんがMCを務めていたのだが、二人の各アーティストについてのコメントが的確で面白く、こんな風に自分の思考を言語化できたらいいなと羨ましい気持ちにもなった。

そして、最後に観たのは何年前かのボロフェスタだっただろうかと思いつつtricotを観て、いよいよお目当ての大森さんの出番になった。3月以降では大森靖子としては初めての録画ではなく編集もないリアルタイムでのライブ(ZOCとしては3月27日に無観客の配信ライブを行なっている。)ということもあり、大森さんが何を考え、どのようなパフォーマンスをするのか楽しみだった。ところで、このフェスでは事前にライブのセットリストを公開するという企画が行われていた。ただし、曲名にはモザイクがかけられていて、うっすらとタイトルの長さや曲数が分かる程度になっており、それを基にセットリストを予想して楽しむという趣旨だと思われるが、個人的には少し興醒めする企画だと思いながら見ていた。ところが、MCから大森さんについては事前にセットリストが提出されなかったとの発表があり、それを聞いた僕は大森さんがそうしてくれたことへの安堵感と嬉しさを感じたのと同時に、俄然この後のライブへの期待が高まった。そして18時半になり、大森さんのライブが始まった。

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この日はキーボードのsugarbeansさんとの2人体制で、ステージの中央に大森さん、上手にsugarbeansさんという配置で、奥にハミングバードが置かれているのも目に入った。大森さんの衣装はレースの付いた柄物の赤いワンピースで、髪にも赤いブローチを着けており、靴はグッチの黒いブーツだった。いつも大森さんのライブを見守っているクマのぬいぐるみのナナちゃんは不在で、代わりにナナちゃんの画像を映したiPadらしきものがステージ奥の台の上に置かれていた。

冒頭に大森さんは小さな声で囁くように「私とあなたが一人と一人同士の魂で繋がれることがどんなに尊いことでしょう。私と秘密の濃厚接触してください。君に届くな。」と言って、sugarbeansさんが一曲目の“君に届くな”のイントロを弾き始めた。実はリアルタイムで観た時には不意を突かれてしまい、「・・・秘密の濃厚接触してください。」の部分しか聞き取れなかったのだが、それもあってグッとライブを観る集中力が高まった。最初に顔を隠すように両手を重ねたポーズを取っていたり、無音の中での語りから始めたりと、常にどうやって観客を引き付けるかを考えながらパフォーマンスをする大森さんのライブ感覚は健在なのだと思った。“君に届くな”ではワンピースの裾を持って大きくはためかせたり、ピンクのマイクケーブルを束ねて持ちながら歌ったりと“映える”シーンが多かったのも、大森さんが配信ライブであることを多少なりとも意識したものだったように感じた。僕自身、歌とsugarbeansさんの演奏の素晴らしさも相まって、一曲目から画面に釘付けにさせられてしまった。

続けてsugarbeansさんの伴奏で“死神”と音源未発表の新曲“KEKKON”が披露された。この流れが実に見事で、特に“KEKKON”では最初に大森さんがギター弾語りで歌い、1番の最後からsugarbeansさんの演奏が加わるというアレンジがドラマティックで鳥肌が立ち、大森さんの泣くのを堪えるようなエモーショナルな歌声にも心を揺さぶられた。“死神”と“KEKKON”を続けて聴くと、二つの曲で一つの物語を形成しているように感じられ、“KEKKON”は“死神”に登場する「僕」と「君」の、その先のストーリーなのかもしれないと思った。セットリストの序盤にいきなりクライマックスを迎えるようなsugarbeansさんとの3曲を持ってきたのも大森さんの意図だったと思うが、この日のsugarbeansさんの演奏もまた格別だったので、僕はこの3曲を観た時点で半ば放心状態になっていた。

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ここで大森さんは静かに語りかけるように「僕たちは壊れれば壊れるほど美しい。壊して、バラバラになった欠片を拾い集めて、金継ぎして、僕たちだけの侘び寂びで、僕たちだけの美しさを見つけて光っていくのだから。何も怖いものはないのさ。」と言ってからギターをかき鳴らし、4曲目の“マジックミラー”を歌い始めた。この曲では大森さんもステージも真っ赤な照明で覆われていて、先ほどまでとはまた違った緊張感を感じた。曲の終盤では「あたしの有名は 君の孤独のためだけに光るよ 君がつくった美しい君に 会いたいの」という歌詞をアカペラで歌いながら右手の小指を前に突き出すシーンがあり、普段は目の前にいる観客に向けて歌っているこの歌詞を、画面の向こうにいる「君」に精一杯届けようとする意思が伝わってきた。この日のライブ後のインタビューでは「お前いつもいるなっていう人達がなんでいないんだろうっていう。バカじゃないのって気持ち。寂しいなって思いました。」と笑いながら言っていたが、やはり大森さんも無観客の状況にもどかしさを感じながらライブをしていたのだろう。それでもこの日は大森さんが画面の向こう側で見ているであろう人達を想像しながら、今出来る限りの表現をしようという誠意が伝わってくるライブだったし、その想いとそれをパフォーマンスに昇華させる能力という点では今回のフェスの出演者の中でも別格だったと思う。

ここまでのライブを観ながら、ふと大森さんに会いたいという気持ちが湧き上がって寂しくなってしまったのだが、その後の“絶対彼女”(歌詞はFeat. 道重さゆみバージョン)を普段より早いテンポで歌っているのを聴きながら「あれ、もしかして巻いてる?笑」と思ったら、何だかいつも通りのライブを観ているような気分になって不思議と肩の力が抜けた。実際に、その後の“ミッドナイト清純異性交遊”、“VOID”、“あまい”の3曲はメドレーのように演奏しており、この日のライブではMCが一切なかったことからも、しばらくの間ライブが出来ていなかった分、大森さんは一曲でも多く歌を届けたいと思っていたのかもしれない。“あまい”の最後に大森さんは「ワンルームにしか生まれなかったファンタジーの中で、生まれた私と君の愛のことを、決して忘れないでいてね。」と言って右手を高く掲げ、ライブが終わったことを告げる合図のように持っていたピックを地面にポトリと落とした。そして後ろを振り返ってギターを置いて退場し、この日のライブは終了した。

 

セットリスト

君に届くな w/sugarbeans

死神 w/sugarbeans

KEKKON w/sugarbeans

マジックミラー

絶対彼女

ミッドナイト清純異性交遊

VOID

あまい

僕はこの自粛期間中に数多くのアーティストの配信ライブを観て、リアルな現場でなくてもここまで音楽の素晴らしさを感じられるのかと救われるような気持ちになったことが何度もあった。ただし、今回の大森さんのライブを観て次元が違うと感じたのは、他のアーティストの場合はあくまで一方通行のコミュニケーションで、アーティスト側から一方的に音楽を与えられている感覚が強いのだが、大森さんはあたかもこちら側の想いも受け取って歌っているようで、まるで双方向で対話しながらライブを観ているようだった。もちろん実際には大森さんから観客の姿は見えていないが、それにも関わらず観客を目の前にしているかのようなライブに感じたのは、大森さんが普段からファンをはじめとする聴き手と、ある意味で家族や友人以上の関係を築いてきたり、深い所でのコミュニケーションを誰よりも大切にしたりしてきた人であり、その上で大森さんが人並み外れた想像力や表現力を持っていることの賜物だったのではないかと思う。

ちなみに、ライブ後にMCのあっこゴリラさんが大森さんのことを「圧倒的に本物だし、圧倒的にギャル」と評していたり、“マジックミラー”の「マジックミラー まだみじめかな?」の歌詞のライミングのセンスを褒めたりしていたのが、独自の視点で興味深かったし、このフェスを通じて個人的にあっこゴリラさんの好感度が急上昇した。

ライブ後のインタビューで大森さんが目指しているものを聞かれた時に「何があっても生きていればOK」と言っていたり、ファンや観ている人に伝えたいこととして「会えるまで生きてろ」「お互いに生きて会いましょう」と言ったりしていたのも、ファンに対する信頼やファンと会えない寂しさなどを全て引っくるめた上での言葉だと思うし、これらは大森さんが既に各所で言っていたことではあるが、改めて大事にしたい言葉だと思った。

日々の中で辛いことや苦しいことがあると、つい衝動的に自分の魂をドブに投げ捨ててしまいたくなることもあるが、この日の大森さんの歌や言葉を胸に刻んで、また会えるその日まで、どんなにボロボロになっても自分なりの美しい魂だけは必死に守り抜いて生きていきたいと思った、そんな深く心に残るライブだった。

変わらない価値観が世界を変える

少し前に、あるミュージシャンが書いたブログを読んだ。我々若者が持つ新しい価値観で世の中を変えていこう、という趣旨の内容で、例として上司より効率的に仕事をして早く帰ることなどが挙げられたりしていた。書いてあることは間違っていないと思ったし、正に僕自身が日々の具体的な行動として実践していることだったりもしたのが、読み終わった後に何となくスッキリしなかった。何というか“納得”はしたものの、“感動”はしなかったのだ。その理由を考えた時に、きっと「価値観」という言葉に対する認識のズレなのだろうと思った。僕にとっての「価値観」は、もっと狭い意味での、日々の生活の中ですぐに役に立つ訳ではないけれど、確実に自分の人生の方向性を決定付ける大きな何か。僕が「価値観」をテーマにした時に対話したいのは、そういうことなのだろうと思った。

僕の住んでいる場所からは日本一高い某タワーが見える。そのタワーはここ最近、特別なライティングとして青く点灯されている。そのライトアップはとても綺麗なのだが、ライトアップとともにタワー上層部にある展望台の部分に流れている次のメッセージを見つけた時、色々と考えさせられてしまった。

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僕はこのメッセージを見て、“ALL”と一括りにすることの気持ち悪さ、“WIN”という言葉に対する違和感を覚えた。勝ち負けの話なのだろうか?などと考え込んでしまった。こうした感覚や思考は時に生き辛さをもたらすが、それでもこのマインドの根底にあるものが自分にとっては重要であり、大事にしなければならないものだと感じる。これこそが自分にとっての「価値観」であり、それは「信念」や「美学」と言い換えられるかもしれない。そして、その価値観に間違いなく影響を与えているのが、僕が尊敬しているミュージシャンである大森靖子さんだ。

僕はこの自粛期間中にTwitterで「#30DaySongChallenge」というハッシュタグを付けたツイートを30日間続けた。誰が考案した企画なのかは知らないのだが、内容としては以下の画像のとおりDay 1からDay 30まで30日分の“お題”が書かれており、その“お題”に合った曲を考えて毎日ツイートするというものだ。

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僕はTwitterでこのハッシュタグを見つけた時に、大森さんの曲縛りでこれをやってみようと思い立った。さらにいくつか自分の中でのルールを設けたのだが、そのうちの一つが原則としてYouTubeに公式で動画がアップされている曲に限定するというものだった。これはハッシュタグを辿って見てくれた人をYouTubeに誘導しようというオタ活として考えたことでもあるが、とにかくそれから約1ヶ月の間、ツイートする曲を選びがてらYouTubeに上がっている大森さんの動画をほぼ全て見た。日本全国が外出自粛の状況でYouTubeを見る機会が増えた人も多かったと思うが、それでもこの期間に自分が一番数多くの大森さんの動画を見たと自信を持って言えるほど、何かに取り憑かれたように過去の動画から最新の動画まで漁って見る日々を過ごした。ここまで短期間に、かつ大量の動画を見ることは、この外出自粛が無かったら交通事故にあって入院生活でもしない限り、あり得なかったのではないだろうかと思う。

そうして大森さんの動画を見続けるうちに、「大森さんには昔も今も変わらず通底する何かがある」と感じるようになった。それは7年前の映像であろうが数ヶ月前の映像であろうが、MVであろうがライブ映像であろうが、弾語りであろうがバンド編成であろうが関係なく、歌う大森さんの眼差しの奥に感じる、体の中心を真っ直ぐに貫く一本の太い芯のようなものだ。

今回動画を見た中で特に印象的だったのは、2017年9月の夏の魔物のライブ映像だった。

www.youtube.com

このライブは僕も現地で見ていたのだが、前日に同じ場所で開催されたBAYCAMPでの騒動があったばかりだったのと、この夏の魔物で大森さんはヘッドライナーでの出演だったこともあり、ライブが始まる前からステージであるプロレスリングを囲む観客の期待や好奇心、心配、不安などが綯い交ぜになったような、異様な熱気に包まれていたのを覚えている。このライブ映像にはその現場の張り詰めた空気や、大森さんがいつも以上に感情を爆発させたライブを展開する様子が生々しく収められている。弾語りの“PINK”の途中では、大森さん自身の現状に対する苛立ちをぶちまけた上で、「それでも私はこのフェスに来てしまうようなあなたたちの生活を、呪いを、私の生活と呪いを、大切に、大切に、一つも余すことなく歌いたい」「歌うことが止められない」「売れなくてもいいから私は私の音楽をやりたい」といった赤裸々な感情を、時に涙で声を詰まらせながら吐露している。僕は部屋で一人そのシーンを見ながら泣いてしまった。この映像はライブの翌日すぐにYouTubeにアップされたのだが、当時の僕は大森さんのこの痛々しいほど剥き出しの姿を世に出して果たして良かったのだろうかと少し複雑な気持ちだった記憶がある。それが3年経って改めて見ると、これは大森さんの紛れもない本質を捉えた映像だったのだと、ようやく大森さん達がこれを公開した意図や想いを理解できたような気がした。

そうした様々な気付きを得ながら毎日続けていた「#30DaySongChallenge」も終わりに近づいた頃、大森さんがコラムを連載している月刊エンタメが届いた。

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最新号のコラムでは今現在の大森さんが考えていることが率直に綴られていて、大森さんが今Twitterで毎日アップしている“おやすみ弾語り”は“淡々と日常をつくること”を表現したいと考えてやっていることなど、その真剣さをひしひしと感じて身の引き締まる思いがする文章だった。特に“ハンドメイドホーム”をこの状況では絶対に歌わないと決めているという部分を読んだ時には、僕自身が知らず知らずのうちに世の中の生温さに慣れてきてしまっていたことにはっと気付かされるとともに、大森さんの軸にある価値観はYouTubeで見た7年前の小さなライブハウスで歌っている時から、3年前の夏の魔物でヘッドライナーとしてリングに立った時から、今この時に至るまで、変わらず美しいままなのだと思った。

コロナ後の世界を展望する時に、僕が普段から見ていて醒めた目を持っていると思う人ほど、本質的なことは何も変わらないと考えているようだ。それでも僕は、大森さんの今も昔も変わらない価値観が、これからの世界を変える可能性を秘めているのではないかと期待している。その理由の一つはZOCの存在だ。

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ZOCのメンバーは一見バラバラな個性が集まっているように見えて、各メンバーなりにしっかりと大森靖子イズムを受け継いでいると感じる。つまり、これまで大森さん一人では手が届かなかった所まで、各メンバーがそれぞれの形で大森さんの価値観を伝播していく伝道師の役目を果たしてくれるのではないかと思っている。そして大森さん自身も、未だに時たま危なっかしいところはあるが、以前よりはうまく立ち回れるようになっているので、そういった意味でも機は熟しつつあるのではないだろうか。

かくいう僕が4年前にラジオで“TOKYO BLACK HOLE”を聴いて衝撃を受け、「この人は本気で何かを成そうとしている」と感じたあの日以来ずっと大森さんを追いかけ続けているのは、その本質、価値観が何なのかを知りたいからなのだと思う。それは僕自身の価値観を、自分が美しいと思う人の価値観によってアップデートしていきたいと思っているからでもある。そしてこのコロナ禍においても、また大森さんは淡々と日常をつくることがいかに尊いかを教えてくれた。

さらに今、慌てて新しい価値観を模索し始めて不安定に揺れ動いている世界も、大森さんの変わらない価値観によって良い方向に導いていけるのではないかと思っている。3年前も今も、そしてきっと僕が大森さんのことを知るずっと前からも、変わらずに涙を流しながら歌う強さと優しさを、これからの世界は必要としているはずだから。

 大森さんは“劇的JOY! ビフォーアフター”でこう言っている。「私は変わらず世界を変える」と。

2019年の僕を構成する10人

様々な音楽サイトや個人が2019年のベスト〇〇を続々と発表している中、僕にとって今年がどんな年だったかを振り返ると、“人”に惹かれて音楽を聴き、その“人”に会うために現場へ足を運んできた一年だったように思う。サブスクが音楽の聴取方法として主流になりつつあり、誰でも新旧問わず膨大な数の楽曲へ手軽にアクセスできるようになった今だからこそ、僕自身はより“人”としての体温や生き様を感じる音楽を求めるようになっていると感じる。そこで僕なりの2019年の振り返りとして、10枚のアルバムや10個の楽曲ではなく10人の“人”を取り上げてみたいと思う。

 

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1. KID FRESINO

昨年11月にリリースされたアルバム「ai qing」が各所の2018年のベストアルバムに選出されていたのがきっかけで知ったラッパー・トラックメイカー・DJ。このアルバムは僕も今年繰り返し聴いたお気に入りの一枚だ。

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初ライブを観たのは今年のフジロック1日目の深夜のレッドマーキーで、飄々とステージを右往左往しながら高速でラップを繰り出す立ち居振る舞いと時々見せる屈託のない笑顔が印象的だった。この時のライブはバンドセットかつ半分近くの曲でゲストラッパーが登場するという気合いの入ったセットリストで、アーティストにとってもやはりフジロックは特別な舞台なのだと思った。

その後も10月のボロフェスタ、11月のLIQUIDROOMワンマン、12月のSWEET LOVE SHOWERと、今年終盤に立て続けにライブを観る機会があり、特にワンマンはKID FRESINOの本領を遺憾なく発揮していたライブだった。中でもドラムの石若駿やトランペットの佐瀬悠輔が演奏に加わって披露された“RUN feat. KID FRESINO”は、音源の疾走感や緊張感が生み出す濃縮された高揚感をそのまま再現してみせた素晴らしいパフォーマンスだった。

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そのワンマンライブのアンコールではカネコアヤノが登場してコラボ曲を初披露したり、最近では三菱地所のCMに起用されたりとコラボや活動の幅を広げており、今後も楽しみだ。

 

2.荘子it(Dos Monos)

今年最も聴いたアルバムの一つが3人組ヒップホップユニットDos Monosが3月にリリースしたデビューアルバム「Dos City」だ。その「Dos City」のほとんどの楽曲を手掛けているのがトラックメイカー・MCの荘子it で、彫りの深い端正な顔立ちに長身という目を引くビジュアルや一度聴いたら忘れられない魅力的な声にはスター性を感じる。Dos Monosを“東京のヒップホップシーンに突如出現したバグ”と形容しているのを見たことがあるが、今まで音楽を聴いていて感じたことのない未知の生物と対峙しているようなスリル感と不気味さは正に“バグ”と言う他ない。

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Dos Monosのライブを初めて観たのは10月のボロフェスタの夜の部で、メンバー全員がステージを縦横無尽に動き回って汗を撒き散らしながらライムを刻むパフォーマンスは、予想していたよりずっとパワフルで熱量の高いものだった。今年は一回しかライブを観られなかったので、来年はもっと観る機会を増やせたらと思う。

今月リリースされたSHIBUYAMELTDOWN(渋谷の街中で泥酔した人などの写真や動画を投稿しているTwitterアカウント)のコンピレーションアルバムにDos Monosが提供した新曲“Dos City Meltdown”は「Dos City」以降の彼らの進化を伺わせるものであり、これから彼らが日本の音楽シーンにどのような“バグ”を引き起こしてくれるのか期待したい。

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3. 七尾旅人

昨年12月にリリースした最新アルバム「Stray Dogs」が出色の出来だったが、今年は4月の恵比寿ザ・ガーデンホールでのレコ発ツアーワンマン、7月のフジロック、10月の吉祥寺Star Pine's Cafeでの向井秀徳との2マンと、何度かライブを観る機会があった。七尾旅人は今回挙げた10人の中では恐らく一番古くからライブを観ているが、僕が観てきた中では今最も充実した良いライブをしていると感じる。

向井秀徳との2マンの時に七尾旅人のライブを観ながら、今バンドと弾語りの両方で心底感動できるパフォーマンスをする七尾旅人大森靖子の対バンが観たいと思ったのを覚えている。特に七尾旅人の“きみはうつくしい”が大森靖子の音楽とどう共鳴するのか、一度見てみたい。

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4. 小袋成彬

今回挙げた10人の中で唯一、今年現場に足を運ぶ機会が無かったアーティスト。というのも彼は現在イギリス・ロンドンへ移住しており、今年日本におけるライブ出演はしていない。そんな彼を挙げた理由は、今月リリースされた「Piercing」が個人的にアーティストと音楽との関係性や2020年代の新しい音楽の可能性についてまで考えさせられた、奥の深いアルバムだったからである。最初に聴いた時は掴みどころがなく、あまりピンと来なかったのだが、聴き終わるとなぜかまた無性に聴きたくなり、そうして繰り返し聴く度に新しい発見があり、次第にハマっていってしまった不思議な魅力のある作品だ。トータルで32分15秒という短さもついリピートしてしまう要因の一つだと思うが、先ほど挙げたDos Monosの「Dos City」もアルバム全体の長さは34分50秒であり、このことはサブスク時代におけるアルバムというフォーマットの在り方が変化しつつあることを示しているのではないかと思う。

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彼は今年前半にTwitterで以下のような投稿をしており、今作を聴いているとその姿勢を貫いて作り上げたアルバムだと感じるし、2020年以降における音楽の方向性についても少なからず示唆を与えていると思う。

昨年のフジロック出演時のインタビュー動画を見返すと、この時に彼は人前に出ることに対して居心地の悪さを感じていることや、今後も何をしたいのか自分でも分かっていないといったことを吐露しており、モラトリアムの只中にいたことが分かる。 

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それから「Piercing」をリリースした直後に以下のようなツイートが出来るようになるまで、この1年半の間に彼はとことん自分自身と向き合って自分のやるべきこと・やりたいことを考え抜いてきたのだろう。

そんな彼の姿勢を目の当たりにして、僕も自分を変えるためにはもっと徹底的に考えなければならないことを気付かせてくれたし、そういった意味でも彼は2019年の最後に僕に対して大きな影響を与えてくれた人だ。

 

5. イ・ラン

評判は少し前から耳にしていたが、3月に渋谷WWWとWWW Xで行われたAlternative Tokyoというイベントで初めて彼女のライブを観た。イ・ランの曲は一部を除いて歌詞が韓国語のため、ライブでは歌詞の日本語訳の字幕がスクリーンに投影される。そのため、まるで映画を観ているような感覚になると同時に、その文学的で美しい歌詞の朗読を聴いているような気分にもなり、不思議な没入感を覚える。この時のライブで最後に披露された“나는 왜 알아요(私はなんで知っているのですか?)”“웃어, 유머에(笑え、ユーモアに)”のメドレーは、イ・ランの歌声とチェロ奏者のイ・ヘジの演奏が放つ神々しさに鳥肌が立つのが止まらなかった。その一方で、曲間にはたどたどしい日本語のMCで会場を沸かせるという緊張と緩和の巧みさで、僕はこのライブで完全に彼女のファンになってしまった。

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それから今年は7月の草月ホールでの柴田聡子との2マン、10月の仙台と11月の東京での折坂悠太のツアーでの共演でパフォーマンスを観る機会があった。折坂悠太とのライブで披露された韓国の歌手ハン・ヨンエの“조율(調律)”のカバーは、祈りを込めた歌詞と2人の歌声が紡ぎ出す情感が胸を打つ、今年最も印象に残った曲の一つだ。

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日本と韓国の歌手がこうやって国籍を超えて美しい音楽を奏でていることはとても意義のあることだと思うが、世の中にはほとんど知られていないであろうことは少し残念だ。

 

6. 前野健太

今年は5月に渋谷WWWでの前野健太と世界は一人バンドのワンマン、7月にLOFT HEAVENでのソロ弾語りワンマン、8月にLIQUIDROOMでの5lackとの2マン、11月に鶯谷ダンスホール新世紀でのワンマン、今月も調布Crossでの塩塚モエカと佐藤千亜妃との3マン、銀座音楽ビアプラザライオンでのソロ弾語りワンマンを観に行ったが、前野健太不惑を迎えてからますます歌手として脂が乗ってきていると感じる。ダンスホール新世紀でのワンマンは僕が観てきた中でのベストライブだった。

40代になってもアップデートを続ける前野健太の姿は、僕が好きな今の20代・30代の歌手の人達も同じようにやれる可能性があることを示してくれているようで希望を感じるし、僕自身にとっても年を取ることを前向きに捉える気持ちにさせてくれる。来年はこれまでライブで披露されていた新曲の音源化も期待したいが、彼の活動はいたってマイペースなので気長に待ち続けたいと思う。

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7. 折坂悠太

彼を知ったのは昨年10月にリリースされて今年のCDショップ大賞も受賞したアルバム「平成」がきっかけだ。

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今年1月の渋谷クラブクアトロでのShohei Takagi Parallela Botanica(ceroの高木晶平による新バンド)とVIDEOTAPEMUSICとの3マンで初めてライブを観てから、3月のAlternative Tokyo、5月のキネマ倶楽部でのワンマン、9月の京都音楽博覧会、10月の仙台・塩竈市杉村惇美術館でのイ・ランとの2マン、11月の東京ヒューリックホールでのツアーファイナル、今月の新木場スタジオコーストでのSWEET LOVE SHOWER新宿LOFTでのHave a Nice Day!とeastern youthとの3マンと、数多くライブを観る機会があった。その中でのベストパフォーマンスはSWEET LOVE SHOWERの重奏形態での“朝顔”だった。“朝顔”は月9ドラマの主題歌にもなり、間違いなく彼の2019年を代表する一曲だろう。

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そして個人的に彼の2020年の鍵を握る曲になると思っているのが、まだライブでしか披露されていない新曲の“炎(ほのお)”だ。この曲が最初に演奏されたのは恐らく10月の仙台でのイ・ランとの2マンにおいて「さっきまで詞を書いていた」と言って披露した時で、11月の東京でのツアーファイナルで歌った際に曲名が“炎(ほのお)”であることを明かしていた。彼は音楽の作風からすると意外だが、インタビューやライブのMCで野心的な一面を覗かせることもあり、2020年は戦略的に立ち回って大躍進を果たす可能性も秘めていると思っているので、来年の彼の活動にも注目していきたい。

 

8. 向井秀徳

今年の日本の音楽史に残る重大事件の一つといえば、何と言っても2月に発表されたナンバーガール再結成だろう。

僕のナンバーガールに対する想いは過去のブログでも度々零してきたが、僕がブログのタイトルにもしている“現場主義”を標榜するようになったのもナンバーガールをリアルタイムで観られなかった経験が大きく影響しており、それだけ僕にとってナンバーガールは偉大な存在だ。再結成一発目のライブとなるはずだったライジングサンは台風の影響で残念ながら中止になってしまったが、その後の9月の京都音楽博覧会で念願の初ライブを観ることができた。そして今月には豊洲PITでのワンマンライブを観ることができたのだが、僕が十数年間に渡って拗らせ続けた想いに現役感バリバリの演奏で応えてくれた、本当に素晴らしいライブだった。

今年は向井秀徳としては他にもソロのアコースティック&エレクトリックのライブを3月の渋谷La.mamaでのカネコアヤノとの2マンと10月の吉祥寺Star Pine's Cafeでの七尾旅人との2マンで、ZAZEN BOYZのライブを4月のアラバキロックフェス、5月の新木場スタジオコーストワンマン、7月のLOFT HEAVENでの山下洋輔ニューカルテットとの2マン、10月の赤坂ブリッツでのLEO今井との2マン、そして京都のボロフェスタで観た。ソロやZAZEN BOYSのライブを観ていると、ナンバーガールを再始動したことでこれらのライブが疎かになるどころか、相乗効果でますます良くなっていると感じる。それは向井秀徳が純粋に音楽を楽しんでいることの証だと思うし、ファンとしてはそうやって良いライブを観られることは何より嬉しい。ナンバーガールのライブはチケットの入手が困難でなかなか観に行くことができないが、今のところ丁度このブログを書いている年末の幕張メッセでのカウントダウンジャパンと来年3月のZepp Tokyoでのワンマンライブを観られる予定なので、しっかりと目に焼き付けたいと思う。

 

9. 峯田和伸

僕の人生におけるベストライブを更新したのが今年7月のフジロックで観た銀杏BOYZだった。僕はライブを観て泣くことがほとんどないのだが、フジロックのグリーンステージを目の前にした時に湧き上がる何とも言えない高揚感や、肌に感じる空気、降りしきる雨、自分自身の体調に至るまで、あらゆる要素がピタリとハマって感情の毛穴が全開になったところに、峯田和伸の体液に塗れた醜くて美しい魂をぐいと捻じ込まれて今まで触れられたことのない心の奥深くにあるスイッチを入れられ、途中からライブを観ながら涙が流れるのが止まらなくなってしまった。今思い出しても熱いものが込み上げてくるし、あの感情をこれからの人生で再び味わえるなら頑張って生きてみようとすら思わせてくれた、奇跡のような体験だった。

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今年は他にも1月の日本武道館でのワンマンや8月のライジングサン、9~11月の大森靖子の47都道府県ツアー(富山、山形、東京公演に峯田和伸がゲスト出演)と、何度かパフォーマンスを観る機会があった。6月に大森靖子がリリースしたシングルでは表題曲「Re:Re:Love」を共作しており、今聴き返すと改めて良い曲だと思うし、いつか2人の作曲と作詞の役割を入れ替えるなどして再びコラボ曲を作ってくれたら嬉しい。

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この大晦日には峯田和伸Spiritualizedの2マンライブを観る予定があり、夢にも思っていなかった意外な組み合わせなので楽しみだ。

 

10. 大森靖子

今年一番現場へ行った人であり、一番傷付けた人であり、一番尊敬している人であり、一番怒らせた人であり、一番近くにいる人であり、一番遠くにいる人であり、一番好きな人。今年現場に行った回数はファンクラブイベントや彼女が昨年発足させたアイドルグループのZOCのライブも含めると40回で、ここでは全てを列挙することは控えるが、その中から個人的なベストライブを選ぶとすれば、まずは5月のビバラロックだ。大森靖子の魅力が一番分かるのはワンマンライブだと思っているが、一方でフェスなどにおいて今まで彼女のライブを観たことがない観客を“刺し”にいくようなライブも好きで、ビバラロックは恐らく大森靖子としては最も多い数の観客を相手にしたステージだったのではないかと思う。そんな大舞台で披露されたライブは僕の中での大森靖子史上のベストライブで、彼女が歌手としての極致に達してしまったのではないかと思ったほどだった。象徴的だったのは最後の“死神”が終わった後、拍手も歓声も起きずに数秒間の沈黙が出来たことで、さいたまスーパーアリーナに軽く1万人以上はいた観客を完全に制圧していた。

そして今年6月から11月にかけて行われた全国47都道府県ツアーでの個人的なベストライブは、ファイナル直前の46箇所目の札幌公演だった。この時のライブやその前後の出来事については別のブログに書いているので、興味がある方は読んでみてほしい。

その47都道府県ツアーの札幌公演やファイナルの東京公演、そして今月に大阪と横浜で行われた大森靖子としては初のストリングスコンサートにおいて、3つの趣を異にした新曲“シンガーソングライター”“KEKKON”“真っ赤に染まったクリスマス”が披露されている。いずれも大森靖子ネクストステージを予感させる楽曲であり、来年これらを含めた新作のリリースが待ち遠しい。そして既に来年の全国ツアー開催も発表されており、ライブ活動のスピードも緩める気はなさそうだ。最後に、2019年を振り返った時に彼女に伝えたいことは色々とあるが、ここでは一言だけ、こんな僕に愛されることを諦めないでくれてありがとう、と言いたい。

 

2019年は個人的にあまり新しい音楽を開拓することができなかったものの、最高を更新するライブをいくつも観ることができた、非常に充実した一年となった。2020年は今回挙げた人達も引き続き追いつつ、洋楽を含めた新しい音楽との出会いを増やしていきたいと思っている。来年は自分の仕事が忙しくなりそうなこともあり、広く浅くならないようにするためにも音楽の聴き方や現場への行き方を見直す必要がありそうだが、それでも音楽は僕にとって生きがいと言っていい大事な人生の一部なので、来年も良い音楽、そして人に出会えるよう、丁寧に、真摯に音楽と向き合っていきたいと思う。

2019/10/31 超歌手大森靖子2019 47都道府県TOUR"ハンドメイドシンガイア"@札幌ペニーレーン24

“超歌手”大森靖子さんが今年6月から行っている全国47都道府県ツアーの46公演目である北海道・札幌公演を観に行ってきた。僕はこれで大森さんの47都道府県ツアーに行くのは16公演目であり、ちょうど3分の1を超える数だ。そんな中で今回の札幌公演は個人的に47都道府県ツアーにおけるベストライブだったので、ライブの前後の出来事も含めて感じたことや考えたことを記録に残しておきたいと思い、このブログを書いている。半分は極私的な日記のつもりで書いているので、適宜読み飛ばしてもらえればと思う。

札幌公演は平日真っ只中の日程だったため、僕は公演当日と翌日の2日間の有休を取った。僕はこの秋から勤め先で管理職に昇進し、昨今の働き方改革のしわ寄せが管理職に来ていると話に聞いていたとおり、日に日に仕事が増えて忙しくなっていくのを感じている。僕は一時期、現場に行くペースを落として仕事に専念することも考えたが、やはり現場と仕事を両立させたいと思うようになり、現場に行く時間を確保するために結果として今まで以上に仕事に集中力と気力を注ぐようになった。そうして現場と仕事の両立を図ろうとしていたことが思いのほか体に負担をかけていたのか、札幌遠征の直前になって急性扁桃炎にかかってしまった。振り返ってみれば10月だけでも東京の現場に加えて仙台、岩手、秋田、山形、京都へ遠征に行っており、体力に自信はある方だがさすがに疲れが溜まっていたようだった。ただ、これから仕事が忙しくなれば今までより平日に休みを取ることは難しくなるだろうし、47都道府県ツアーのセミファイナル公演ということもあり、やはり観られるうちに観ておきたいと思い遠征することにした。 

札幌公演当日、朝5時台の電車で空港へ向かった。空港へ着くと同じ大森さんファンのふるぱちさんに会った。ふるぱちさんとは今回のツアーで何度か遭遇することがあり、そのため度々話す機会もあったので、人見知りの僕が今回のツアーを通じて以前より無理なく接することができるようになった一人だ。

新千歳空港には9時過ぎに到着した。以前に新千歳空港で買って大森さんのライブに差し入れで持って行った“びえいのコーンぱん”が、後日美マネ(大森さんの美人マネージャー山本さんの通称)から好評だったという話を聞いたので、今回も買って行こうかと思いお店に行ったところ、タイミングが悪く焼き上がりの時間までかなり待たなければいけないようだったので諦めることにした。

続いて大森さんのマスコットキャラクターのナナちゃんでお馴染みのシュタイフショップへ行った。新千歳空港へ来た際には毎回立ち寄っており、特に何も買うつもりはなかったが、何気なく店の奥にある限定品などが陳列されたガラス張りのショーケースを見ていたところ、ふと2体の白いクマのキーリングが目に止まった。クマは2体とも鼻が赤く、それぞれ赤い封筒と白い封筒をぶら下げていて、キーリングの金具部分のパーツもハートの形をしていて可愛かった。それを見た瞬間に、大森さんと前回のクソカワPARTYツアーから登場したナナちゃんのゆるキャラ、ゆるナナちゃんにプレゼントしようと思い、購入を即決した。赤い封筒のクマはツアーファイナルとツアー終了後に声を治すのがうまくいくようにというお守りとして大森さんに、白い封筒のクマは少し早いが47都道府県ツアー完走のお祝いとしてゆるナナちゃんに渡すことにした。

相変わらず体調は優れなかったが、そんな時でもお腹は空くようなので新千歳空港からJRで札幌へ行き、さらに地下鉄に乗り換えて行った北24条駅の近くにあるタイガーカレーというお店でスープカレーを食べた。土鍋で提供されるので気を付けないと火傷をする熱さだったが、スープも具のチキンと野菜もとても美味しかったので、機会があればまた訪れたい。

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それから再び地下鉄を乗り継いで宮の沢にある石屋製菓白い恋人パークへ行き、そこで元々ゆるナナちゃんへプレゼントすることを考えていた白い恋人のオリジナル缶を作った。

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予定していた用事を済ませたのでホテルへチェックインし、後は少しでも良い体調でライブを観るために部屋でゆっくり過ごしてから、会場であるペニーレーン24へ向かった。

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18時過ぎに会場へ着くと既に入場を開始していたが、僕の番号はまだ呼ばれていなかったので会場横の駐車場で待とうとウロウロしていたところ、栃木の千裕さんとばったり会った。会うのが久しぶりだったのと、まさか札幌で会うとは思っていなかったので驚いたが、近況を聞けたのと元気そうな姿を見られたので良かった。会場へ入ると既にフロアの前半分はぎゅうぎゅうに詰まっている様子で、北海道の大森さんファンの熱心さが伺えた。僕はフロア後方横の壁際でもたれかかって観ることにした。ペンライトをホテルの部屋に忘れてきたことに気付いたが、今日はペンライトを振らない分のエネルギーをライブの観察に充てようと思った。

ライブは開演時間の19時から少し遅れて開始した。時計を見ると19:07、ナナ時ナナ分だった。今回のツアーですっかり定着した道重さゆみさんの“ラララのピピピ”のSEで、まずはバンドメンバーが登場した。この日のバンドは新🌏z(シンガイアズ)編成で、G.畠山健嗣、G.あーちゃん、Key.sugarbeans、Hyper.サクライケンタ、B.えらめぐみ、Dr.ピエール中野(敬称略)というメンバー構成だ。そして最後にステージに入ってきた大森さんは、青いシースルー素材のトップスの上にきゅるきゅるの縷縷夢兎ワンピースという衣装だった。 

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この日のセットリストは以下のとおり。

Re:Re:Love

VOID

非国民的ヒーロー

ZOC実験室

JUSTadICE

Over The Party

7:77

ノスタルジックJ-pop(sugarbeansピアノ伴奏)

family name(sugarbeansピアノ伴奏)

M(sugarbeansピアノ伴奏)

シンガーソングライター(ギター弾語り)

あまい(ギター弾語り)

きもいかわ

死神

流星ヘブン

君に届くな

マジックミラー

TOKYO BLACK HOLE

LOW hAPPYENDROLL--少女のままで死ぬ--

オリオン座(合唱アンコール)

ミッドナイト清純異性交遊

絶対彼女

 

この日は1曲目から大森さんがハミングバードを持って“Re:Re:Love”でライブがスタートし、続く“VOID”で一気に会場のボルテージが上がるのを感じた。ここ最近のライブでは“Re:Re:Love”と“VOID”が続けて演奏されることが多く、この二曲は銀杏BOYZ峯田和伸さんという共通項もあり今となっては兄弟のような関係性を感じる。3曲目は“非国民的ヒーロー”で、ギターを置いた大森さんはステージを縦横無尽に動き回り、観客との距離をぐっと縮めてくる。間奏ではまだ3曲目なのに体力を温存する気はさらさらないと言わんばかりに全力で踊っていて、その姿に目が釘付けになった。

“非国民的ヒーロー”が終わると最初のMCがあり、今日は46公演目のセミファイナルで、このツアーでは地元のどうでもいい友達、忘れてしまった恋人、あまり好きじゃない家族、何とも思っていない妻や夫とか色々いると思うけど、北海道はそういうことを私が歌いに来るまでもなく伝えてくれる人が多いので、今日は熱い熱いものを受け取って熱い熱い歌を歌う準備が万端で、46公演目に相応しいライブができると思って札幌に来た、といった話をしていて、観客から大きな歓声が上がっていた。その歓声を聞いた時に、きっと地元の人達にとっては、好きなアーティストが自分の地元にライブをしに来てくれて、自分の地元の話をしてくれるのは何より特別なことなのだろうと思った。大森さんも地元の愛媛に銀杏BOYZが来た時の話をしていたことがあったが、そういうことなのだろう。そして、その特別を日本中に余すことなく届けることが47都道府県ツアーをやる一つの意味なのだろうし、大森さんがこの半年間で届けてきたもの、受け取ってきたものは僕には想像が及ばないほどの膨大さなのだろうと思った。

MCを終えて今ではすっかりZOCのテーマソングともいえる“ZOC実験室”でライブは再開した。この日も大森さんのダンスは冴え渡っていて、観客との掛け合いが会場全体の一体感を高めていた。以前から大森さんのライブにはアイドルライブの要素があったが、ZOCが始動してからはよりアイドルライブのノリが加わって、良い相乗効果を生んでいるように感じる。そして、この後の“JUSTadICE”と“Over The Party”が、いずれも僕が今回のツアーで見た中でベスト級のパフォーマンスで、この日のライブの一つ目のハイライトだった。大森さんはこの辺りから完全に軌道に乗ったように感じた。ここで、この札幌公演が凱旋ライブとなるナナちゃんのMCが入り、登別のクマ牧場の話や“いってみたい”北海道のバンドマンの話など、ご当地ネタで観客を沸かせていた。それからゆるナナちゃんをステージに呼び込み、ナナ曲目となる“7:77”を披露した。

ここまでストレートに盛り上げてきた序盤のセットリストを終えると、大森さんとsugarbeansさん以外のバンドメンバーが一旦退場し、sugarbeansさんによるピアノ伴奏のパートに入った。このパートでは“ノスタルジックJ-pop”、“family name”、“M”の3曲が披露されたが、これがこの日のライブの二つ目のハイライトだった。“ノスタルジックJ-pop”は胸が締め付けられるような、大森さんの慈しむような歌い方が感動的で、“family name”は大森さんの優しさ、悲しみ、怒り、祈りがないまぜになったような感情の込もった歌声を、sugarbeansさんのピアノが引き立たせていて美しかった。大森さんは度々sugarbeansさんに対する絶対の信頼を口にしているが、このパートにおけるsugarbeansさんの演奏はそれを頷かせる素晴らしいものだった。その後のMCで大森さんは、この5年間どういう想いで音楽活動をしてきたかについて赤裸々な想いを吐露していた。大人になるということ、その中での私とあなたとの関係、音楽に懸けてきた5年間について語り、最後に「全ての人は可愛くて、格好良くて、美しくて、神聖である。それを大前提として、私たちは神様で、大きなものを作って、それを美しいと思う心を5年間積み重ねてきたということを、この友達にもらった手紙で作った曲を歌う度に思うのです。」と言って“M”を歌った。歌う前のMC自体がもはや一つの作品のようだったが、そのMCでの想いを載せた大森さんの歌声はこの世の全ての孤独や哀しみを背負っているかのようで、僕が今まで観た中で最も壮絶なパフォーマンスだった。

それから大森さんのギター弾語りパートとなり、“超歌手”と名乗り始めてからナタリーとかNHKとかで“超歌手”と向こうの方から書いてくれるようになって嬉しい、自分の名乗りたいものを名乗ることが一番いいと思っている、というMCをしていた。そのMCの最中に大森さんがスマホを持って何やら操作しており、僕は「何かレア曲でもやるために歌詞を探しているのかな?」と思った。すると大森さんが誤ってメモを消してしまい一瞬騒然となったが、“最近削除した項目”に残っていて事なきを得るという一幕があった。気を取り直した大森さんが「シンガーソングライターという新曲」と言って、新曲“シンガーソングライター”を披露した。一聴した曲の印象を強いて例えれば“VOID”と“family name”と“朝+”を足して3で割ったようなイメージで、歌詞は風景を描写している部分とメッセージ性の強い部分があり、恐らく大森さん自身が息苦しさを感じてきたのであろう「シンガーソングライター」という思考停止したカテゴライズに対するアンチテーゼが込められているように感じた。サビの「生きさせて、生きさせて」「狂わせて、狂わせて」といった言葉の繰り返しが特徴的だが、その他の部分もかなり面白い言葉選びをしているように聞こえたので、早く歌詞カードを見ながら聴いてみたいと思った。そして間を空けずに“あまい”を歌い、ギター弾語りパートは終了した。

ライブ後半はsugarbeansさんのピアノ演奏から始まる“きもいかわ”でスタートし、ここからがこの日のライブの3つ目のハイライトだった。“きもいかわ”は大森さんの感情表現力が遺憾無く発揮される曲だが、この日は特に歌声や体の動きの一つ一つに対する集中力が素晴らしく、いつもよりたっぷり間を取って一節一節の歌詞を噛みしめるように歌っていた。その次の“死神”も引き続き驚異的な集中力で歌っていて、その気迫は今まで観てきた中で一番だったかもしれない。そして、あなたの死にたいという感情の先に現れる扉を開けた時に私が手を広げて待っていられたらと思う、と願いを込めて歌った“流星ヘブン”では、全身にピンクのマイクケーブルを巻きつけていて、それが大森さんの血管のようにも大森さんを縛り付ける拘束具のようにも見えた。続く“君に届くな”では大森さんは完全にゾーンに入っていて、大森さんと歌が同化しているような、大森さんが歌そのものになっているようだった。語り部分の感情表現は何かが取り憑いたようで常人離れしていて思わず息を呑んだ。

ここから大森さんが再びハミングバードを手にして“マジックミラー”を歌い、終盤ではハミングバードを裏返して頭上に掲げ、ハミングバードの裏面を鏡に見立てて観客の方へ向けていた。そこには僕の位置からも観客が掲げるピンクのペンライトの光が映り込んでいるのが見えた。“マジックミラー”がクライマックスを迎えると大森さんが所々言葉にならない言葉を叫び、そのまま“TOKYO BLACK HOLE”へなだれ込んだ。その演奏は雲のかかった空を晴らしていくような清々しさがあり、僕は聴きながらすーっと魂が浄化されていくような感覚を味わった。“TOKYO BLACK HOLE”が終わると大森さんは「どんなに現実と心がはぐれそうになっても、私の手作りの希望がどんなに絶望じみていて、誰の幸せと一致しなくても、何度でも作り直すべきだ、これがかけがえのない私だけの人生だから、何度でも」と言って本編最後の“LOW hAPPYENDROLL --少女のままで死ぬ—”を歌い、ライブ本編は終了した。

観客が入場時に配られる歌詞のプリントを見ながら合唱する“オリオン座”の後、アンコールは“ミッドナイト清純異性交遊”で始まった。個人的にこの曲を聴くのは9月の仙台公演以来だったので久しぶりに聴けて嬉しかった。そしてラストの“絶対彼女”では、もう一つのバンド編成である新⚫️z(シンブラックホールズ)のメンバーであるカメダタクさんが札幌出身ということで、急きょ飛び入り参加してsugarbeansさんと並んで演奏したり、大森さんがノリの良い北海道の観客と楽しそうにコールアンドレスポンスをしたりして、大いに盛り上がった。大森さんは曲の終盤で「あなたの嫌いなあなたは私の音楽が愛しています!あなたの好きなあなたのことを思い切り愛してあげてください!」と叫んでいた。最後にメンバー紹介をして、拍手喝采の中この日のライブは終了した。

この日の大森さんは僕からは見えない苦労もあったのかもしれないが、かなり思い通りに声を出すことができていたのではないかという印象だった。大森さんのパフォーマンスはライブ全体を通じてエモーショナルだったが、それは声の調子が良かったことで感情表現に意識を集中させることができたからかもしれない。セットリストとしては新曲の“シンガーソングライター”がサプライズだったが、それ以外は今回のツアーで比較的多く演奏されてきた楽曲と曲順による盤石の構成だったのも、完成度の高いライブになった要因ではないだろうか。東京のファイナル公演もこのセットリストでいいのではないかと思ったほどだが、セミファイナルにしてあれだけ集大成感のあるライブだったことから察するに、札幌公演は仮想ファイナル公演だった可能性も考えられる。もし東京公演がこの日のライブと同様のセットリストでも楽しみだし、全く別のセットリストになるのも面白い。いずれにしても東京ファイナルがこの札幌公演の勢いを受けてどのようなライブになるのか、俄然楽しみになった。

終演後、物販に並んでグッズを買ってから、ゆるナナちゃんにシュタイフのキーリングと白い恋人の缶、そしてツアーが終わるとしばらく会えなくなるかもしれないこともあり書いてきた手紙を渡した。プレゼントを一つ一つ説明する度に全身で喜びを表現してくれてかわいかった。

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その後の大森さんとのチェキ会では、大森さんとカメラマンの二宮ユーキさんが前述した差し入れの“びえいのコーンぱん”の話をし始めて、僕の話す時間が無くなってしまうのではないかと思って焦った。そこまで気に入ってくれていたのであれば今日も頑張って買ってくればよかったと思ったが、きっとまた大森さんは札幌にライブをしに来るし、僕もまたそのライブを観に来るだろうと思うので、その時こそ差し入れに買っていこうと思った。きちんと僕が話す時間も確保してくれて、大森さんにシュタイフのキーリングを渡すと、その場で箱を開けて「かわいい…!」と喜んでくれたので嬉しかった。去り際にふと思いついてまだ頭の中でまとまっていなかったライブの感想を伝えた。内容はともかく良いライブだと思った気持ちを直接伝えられたので満足だった。

会場の外では、しっぽさん、みなさん、ふじむさん、けんけんぱさんといった北海道の大森さんファンと会った。短い時間で他愛もないことを話すだけだが、一年に一度でもこうやってお互い生き延ばして再会できるのはとても嬉しく、人との距離感を掴むのが苦手な僕にとっては、もしかするとこうした地方の大森さんファンの人達の方が長く良い関係を続けていけるのかもしれないと思った。唯一ぼあだむさんにだけ会えなかったので、次の機会にはぜひ会いたい。

tataaaanさんが車で送ると言ってくれたので、お言葉に甘えて送ってもらうことにした。車にはふるぱちさん、てまりさん、tataaaanさんの知り合いのさおさんが乗っていて、車中で全員お腹が空いたという意見で満場一致したので、皆でtataaaanさんが知っているお店に行くことになった。遅れて千裕さんも合流し、夜中の1時過ぎまで焼き鳥やおでんを食べながら色々な話をした。お会計でtataaaanさんが(かなり)多めに出してくれたので、もうtataaaanさんには足を向けて寝られないと思った。

 

ライブの翌日は早起きして行動展示で有名な旭山動物園へ足を伸ばそうと思っていたのだが、体調が万全でないのに加えて夜遅くまで飲んでしまったこともあり、結局ホテルを出たのはチェックアウト時間ギリギリだった。一度行ってみたかった“さえら”のサンドイッチとコーヒーで朝食兼昼食を済ませた。

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帰りの飛行機の時間までに小樽へ行ってみようかとも思ったが、一年前にも訪れたモエレ沼公園にもう一度行ってみることにした。昨年11月の大森さんのクソカワPARTYツアーの札幌公演の翌日、初めて訪れたモエレ沼公園はちょうど日が沈もうとしている時間帯で、しばらくすると電灯があるところを除いて辺りは完全に真っ暗になった。公園は闇と雪に覆い尽くされていて、雪道を進んでも自分以外には誰もおらず、雪を踏みしめる自分の足音以外には何も聞こえなかった。ただ、それを怖いと思うよりは、目の前に広がる光景が当時の自分の心象風景そのものだったので、安堵感や納得感すらあった。冬の夜のモエレ沼公園で「今倒れたら死ぬな」と思うと、自分一人で生きていかなければいけないと思ったが、それも死ぬのが怖いというよりは、その時は自分の人生に二度と朝が来ることはないと思っていたし、死にながら生きることの決心のようなものだった。僕は良くも悪くも一度こうと決めたらとことん突き進むところがあり、今振り返れば一年前もただひたすら闇へ闇へと向かっていたのだと思う。

そんなモエレ沼公園を今一度きちんと見直しておきたいと思い、僕は一年前と同じように地下鉄とバスを乗り継いで行った。最寄りのバス停に着いて公園の入り口を通ってしばらく歩くと、目の前にふと円錐状のモエレ山が現れた。一年前に見た時は雪に覆われていて闇に浮かぶ無機質な建造物のようだった記憶があるが、この日はその青々とした佇まいと手前の紅葉した木々との対比の美しさに感動した。

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一年前は積雪のためにほとんど公園内を巡ることはできなかったが、改めて歩いてみると実に広大な敷地の中に山や木々、オブジェが整然と配置されており、一年前に僕が見たのは公園全体の本当にごく一部だったことが分かった。そして公園には、犬を散歩させている人、カップルでデートに来ている人、ランニングをしている人、外国人観光客の団体、親子連れ、女友達の二人組などがいて、当たり前だが世の中にはたくさん人がいるのだと思った。一年前はこうして季節や時間が変われば見えるものも変わることを想像する余裕も無く、大分追い詰められていたのだろうと思う。それと比べて今は想像力を持つ大事さを知ったつもりだし、それを持てる余裕も少しは出来たと思う。そして今こうして、世の中には気付かないだけで実は美しいものがあることや、世の中は自分が思っているより広いことや、世の中には自分が思っているよりたくさんの人がいることを想像できるようになった。2時間ほどかけて公園内を歩き尽くして、そろそろ空港へ向かおうと思い出口へ向かっている途中で、橋の上から遠くの方にきれいな虹がかかっているのが見えた。その虹に「生きてりゃなんとかなるよ」と言われているような気がした。

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新千歳空港に早めに着いたので、前日に買えなかった“びえいのコーンぱん”を自分用に並んで買った。帰りの飛行機はまたふるぱちさんと同じ便だった。一年前の札幌は少し苦い思い出だったが、今回はそれを良い思い出に更新できた楽しい遠征だった。

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今回の47都道府県ツアー中に色々と考えることはあったが、ここ最近思うのはやっぱり好きな人のことは素直に愛したいということだ。

僕とあなたが全てを分かり合えなくても、だからといって僕とあなたが一緒にいられないということではなくて、その先にある一緒に歌える歌を探していきたい。

とはいえ改めて日本一だと思えるライブを魅せてくれて、こんなに素敵な笑顔を見せてくれる人を好きにならない訳がない。

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大森靖子こそ僕の人生の希望だ。